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3.10 まとめ
 これまで河川の活用策につき、地震発災時及びモーダルシフトの面からの課題の抽出を行ったが今後、関連動向も踏まえつつ以下の主要事項への更なる調査研究が必要と考えられる。
 
(1) 地震発災時の河川の活用に係る課題
(1)地震発災時における物資・人員輸送のために調達される船舶について
 国、東京都、埼玉県では現在荒川及び隅田川を航行している船舶と調達船契約が結ばれている。これらの調達船の運航者は必ずしも両河川に精通している訳でなく何れかの河川の航行に経験を有する運航者が多い。従って、追加支援のため調達される可能性が高い船舶(これらの船舶の運航者は河川航行の経験に乏しいものと思考される)も含め、安全な河川航行が実行出来るよう平素から教育・訓練を行っておく必要がある。そのために、これまでの河川の航行環境のまとめを活用されるとともに、定期的な航行訓練の実施方法等につき調達船の任務が計画に近い成果が得られるよう検討を深める必要がある。
 また、追加調達される可能性のある船舶については係留地から可動体制に移行できる時間的な整理も行っておく必要がある。
 
(2)リバーステーションについて
 リバーステーション設置の重要性から、順次設置されてきた。しかしながらリバーステーション別の用途は単一でないことから、その用途に必要な条件の整理・検討がなされなければならない。
 地震発災時の物資・人員輸送を例にとれば、基地での物資積所要時間、同基地からの各リバーステーションへの航行時間、各リバーステーションにおける物資揚のための所要時間、物資の効率的揚作業のための人員配置・人員の調達方法、重量物の揚作業が存在する場合の機器類の整備、物資揚後のリバーステーションから陸上内部への 
 移送方法(リバーステーションは必ずしも陸路と同一の高さではなく、堤防等を越えた移送となる個所が存在すること、道路との連結性は効率的に行えるか等)物資揚
 作業が安全にして効率的に行われるには照明設備が必要等々、実地に即した課題が残っている。
 
(3)夜間航行の可能性について
物資・人員輸送は船舶の夜間航行に係る事項以外について体制が構築されれば調達船の安全な夜間航行の検討が昼夜の活動の基盤となる。中心都市部においては両岸等の明かりで水面、岸の把握がある程度可能と思われるものの岸の濡れ方等を参考に航行路を選択している場合等では極めて夜間航行は危険である。
この場合、昼間のみの航行とするか、主要地点に灯標等を設置し24時間の航行体制への水域環境の整備を行うか、今後更に検討すべき課題と思考される。
 
(4)物資の積揚作業の従事者について
 地震発災時には、指揮・連絡体制のみならず如何に作業従事者を集合させ得るかが重要な課題である。
 関係行政機関の担当部署要員以外に、実際に作業に従事する人員の確保策等の緻密な検討が必要である。
 
(5)帰宅者困難者への検討課題
 物資輸送については積極的な取り組みのもと、計画として整理されているが帰宅者に係る課題については今後鋭意取り組む課題として残されている感がある。
 最近になり一般企業間においても地震発災時の帰宅困難者への協力体制につき検討・整理が行われ始めてきた。
 本調査研究においても今後、多角的な面での帰宅者に係る検討を重ねる必要がある。
 
(2)モーダルシフトに係る課題
(1)コスト削減策の検討
 関係者からは河川舟運における時間増、時間の融通性に欠ける、コストが高い等の意見が寄せられている。
 これらの問題の解消の可能性の整理のためには以下の課題の検討が必要と思考する。
ィ)時間増の解消
航行時間の短縮に連なる水域環境の整備に係る検討
積替え時間の短縮の可能性の検討
ロ)時間の融通性の解消
昼夜航行の可能性、必要条件の検討
定係地と積地の関連、乗組員の呼集時間等の実態及び解消策の可能性の検討
ハ)コスト削減について
舟運の魅力はトラックに較べ大量輸送可能、イコール コスト安にある。
関係者からコスト高との意見があるのは時間増とともに一航海の輸送量が大量輸送の状況に至らない実態にあるものとも推察される。
 また、積み替えによるコスト増も指摘されているところである。
 しかしながら、昨今、トラック輸送における排気ガス規制の問題がクローズアップされるとともに、可載量についても検討される趨勢とされている。
 排気ガスの排出量を減少させるためのトラックへの設備コスト、可載量減量による一往復の輸送コストの増加等につき今後の状況を注視し、モーダルシフトに係る課題の検討を加える必要がある。







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