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3.9 船舶の河川航行に係わる活用策の検討
3.9.1 地震発災時における河川の活用策と課題
(1)河川を活用し、物資、人員の輸送が現実的に可能である。
 リバーステーションを活用することにより、物資、人員の輸送に河川を活用することは現実的に可能である。ただし、リバーステーションまで接続する道路がさらに整備されることにより、スムーズな移動も可能となり、活用の幅が期待できる。
 
(2)船着場の整備
 大規模な船着場であるリバーステーションは、整備が進んでおり、機能することと考えられる。ただし、河川をさらに有効活用するためには、対岸への輸送を目的とした船着場や既存の小規模な船着場を整備し、小さなネットワークを数多く構築することが望ましい。
 
(3)河川を用いた緊急輸送ルートの特定がなされていない。
 自治体の計画によると、道路を用いた緊急輸送ネットワークは非常に具体的に記載されており、緊急時のルート等をイメージできる状況にある。
 しかし、河川を緊急時に輸送ネットワークとして利用するには、船舶の河川航行につき、より詳細な検討を加える必要がある。
 現時点では、一般的に河川を輸送ルートとして利用することが定着していないため、今後、住民や企業等に緊急時の河川利用の可能性を周知し、緊急時に河川を活用することも可能であることを理解向上を図る必要がある。
 
(4)さらなる活用には荒川、隅田川以外の河川が重要となる。
 今回の検討においては、荒川と隅田川を主体として整理したが、荒川や隅田川のように大きな河川であれば、船舶の活用もある程度は可能であるが、海上から内陸への縦方向の動きしかとれない。しかし、東京、神奈川、千葉、埼玉という首都圏にはいくつもの川がある。それらも活用することができれば、緊急時の河川の活用や舟運の発達に大きく寄与できる。
 そのためにも、荒川、隅田川以外の河川において航行の可能性及び水陸の連結性等を検討し緊急時に備えるとともに、通常時における船舶の新たな輸送ルートを検討することが望ましい。
 
3.9.2 モーダルシフトに係わる河川利用への対応
(1)コスト、時間の課題
 船舶を利用することによって、輸送にかかる時間が大幅に増加する。そのため、消費者や利用者のニーズと合致しない部分が現れてくる。
 また、船舶を用いても配送のダイヤが整っている等、時間に融通の利くモーダルシフトのシステムを取り入れなければ、船舶や鉄道による輸送を拡大することが困難と考えられていることより、時間の短縮・融通性等について河川舟運における可能性の検討が必要である。
(2)船舶からトラックへの積み換え手法
 陸送であれば、ドア・ツー・ドアで荷物を配送することができる。しかし、配送ルートに船舶等を入れることにより、荷物の積み替えが発生する。時間のロスにも大きく関係してくるため、今後の課題として、検討していく必要がある。
 リバーステーションや港湾等の施設面の整備と配送に用いるコンテナを新規に開発する等のアプリケーションの開発が進むことにより、積み換えによるタイムロスも少なくでき、舟運の発達につながるものと考えられる。
(3)舟運のネットワークの構築
 船舶により通航可能な河川を広げ、縦方向(海上から内陸)と横方向(内陸から内陸)の移動を可能にすることが今後の課題と考えられる。
 道路と同じような水上ネットワークを組めるようにすることで、モーダルシフトの可能性がさらに広がる。
(4)船着場の整備
 ネットワークの整備に伴い、水上交通が陸上交通と接する地点を多くすることで、船舶の利用も増していくものと考えられる。
 幹線交通との接点が特定の地点しかないようでは、非常に使い勝手も悪く、荷捌きをするために「待ち」が出てしまいボトルネックともなってしまう。そのため、船着場を多数整備することと用途に応じ特性を各地域の船着場に特性を持たせることで、使い勝手もよくなることと思われる。
 船着場の整備にあたっては、その地域の物流業者や地元住民等へのアンケート等を行うことが望ましい。
(5)企業、利用者の意識改革
 どんなに水上ネットワークや船着場を整備しても、利用者の意識が変わらなければ、モーダルシフトは実現できない。そのため、陸送における排気ガス規制の強化内容、貨物輸送時の排気ガス量の船舶と陸送の対比等を企業等の利用者に周知することを目的とし、パンフレットの配布やポスター等の掲示で少しでも理解してもらえることがモーダルシフトの実現の第一歩になる。
 広報等により誰もが「モーダルシフト」という言葉を知っていることから、とりかかることも重要な要素と思われる。
(6)航行ルールの早期策定
 舟運が発達すれば、道路と同様に船舶が河川に乱入してしまい、事故の発生確率が高くなり、事故が多くなれば舟運のイメージも悪くなり、モーダルシフトの実現も出遅れてしまう。河川内航行のための水域環境の一層の充実・整備とともに航行ルールの早期策定が重要となる。
 現在、荒川は航行ルールがあるので、そのルールを様々な河川に展開していくことが今後の課題となる。航行ルールについても「ルールの存在」を周知することが必要と思われる。
 







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