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(2)その他の文献による整理
 その他の文献では、18のルート(表−3.8.2参照)を設定し、陸上輸送と水上輸送において、輸送にかかる時間をシミュレーションし、コストの比較等がなされている。
 陸上交通を水上交通に転換した場合の所要時間と距離は表−3.8.2に示すとおりであり、どのルートも船舶によって輸送時間が短縮されるケースはなく、平均で11.5時間水上輸送の方が多く時間がかかる結果であった。
 船舶輸送に転換しても船着場からトラックへの荷物の積み替え作業によって、荷役待ち時間が加算されたことによって時間短縮がみられなかったものとされている。
 
表-3.8.2 陸上輸送と水上輸送の所要時間の比較
想定ルート 距離[km] 所要時間[h]
No 出発地 目的地 陸上輸送 水上輸送
1 川口市 品川区 26 1.2 3.4 2.2
2 草加市 中央区 28 1.3 2.8 1.5
3 朝霞市 港区 25 1.0 3.3 2.3
4 江東区 板橋区 37 1.8 3.1 1.3
5 羽生市 江戸川区 67 2.5 5.9 3.4
6 足立区 千葉市 84 1.9 39.3 37.4
7 木更津市 足立区 89 2.0
8 大宮市 横浜市 66 2.1 6.8 4.7
9 戸田市 横浜市 51 1.6 4.9 3.3
10 木更津市 大宮市 115 2.9 19.9 17.0
11 和光市 横浜市 34 1.2 4.0 28
12 深谷市 千葉市 117 3.7 7.6 3.9
13 富士市 戸田市 148 2.5 13.3 10.8
14 川口市 神戸市 567 7.7 31.5 23.8
15 太田市 北九州市 1180 14.4 44.1 29.7
16 北海道 東京各市場 890 11.3 53.3 42.0
17 名古屋市 墨田区 340 20.0 20.3 0.3
18 和光市 大井 32 1.8 8.0 6.2
平均 4.5 16.0 11.5 
 
 所要時間については、同報告書において実際に船舶とトラックを用いた実験の報告がされている。実験結果によると、有明ふ頭〜北赤羽間ではトラックが船舶の半分程度の時間で輸送可能であり、船舶はトラックの6割程度の平均速度であった。
 陸上輸送を水上輸送に転換した場合のコストは表−3.8.3に示すとおりであり、コストは3割程度削減される結果とされている。しかし、想定ルートのなかにはコストが上昇してしまうルートも18ルート中5ルート存在した。舟運の利用距離が長いほど削減率は高くなる傾向がみられた(図−3.8.3参照)
 
表-3.8.3 陸上輸送と水上輸送のコストの比較
想定ルート 距離[km] コストの比較[円]
No 出発地 目的地 陸上輸送 水上輸送 削減率
1 川口市 品川区 26 5,724 3,841 -1,883 33%
2 草加市 中央区 28 10,967 17,177 6,210 -57%
3 朝霞市 港区 25 6,798 5,043 -1,755 26%
4 江東区 板橋区 37 10,485 6,977 -3,508 33%
5 羽生市 江戸川区 67 43,878 58,178 14,300 -33%
6 足立区 千葉市 84 1,046,961 700,089 -346,872 33%
7 木更津市 足立区 89 57,627,116 40,661,558 -16,965,558 29%
8 大宮市 横浜市 66 38,894 21,368 -17,526 45%
9 戸田市 横浜市 51 15,959 6,791 -9,168 57%
10 木更津市 大宮市 115 712,755 636,686 -76,069 11%
11 和光市 横浜市 34 27,442 52,621 25,179 -9%
12 深谷市 千葉市 117 20,998 53,906 32,908 -157%
13 富士市 戸田市 148 26,768 18,707 -8,061 30%
14 川口市 神戸市 567 207,518 42,742 -164,776 79%
15 太田市 北九州市 1180 127,723 12,699 -115,024 90%
16 北海道 東京各市場 890 1,235,713 361,439 -874,274 71%
17 名古屋市 墨田区 340 56,592 34,854 -21,738 38%
18 和光市 大井 32 52,423 60,826 8,403 -16%
平均 3,404,151 2,375,306 -1,028,845 30%
 
図−3.8.3 想定ルートごとの距離と削減率の関係
 
(3)ヒアリングによる整理
 鋼材輸送会社へのヒアリング結果によると、運送業者の輸送コストの比較例(表−3.8.2)にあるように、輸送機関をトレーラーから船にシフトすることで、往復のコストが約25%低減されている。
 
表-3.8.4 所管材輸送コストの比較
輸送機関  航走距離[片道]  所要時間[片道]  トン数  コスト/往復 単位:千円      特記事項 
横持ち 船積み 輸送 燃料代 高速代
36海里(約67km) 5.5時間 200 28 18 240 17 0 303 モデル船としたの諸元全長33.7m型幅8.0m重量トン295t
トレーラー 108km 3.5時間(朝出発) 200 0 0 396 396 所要台数=20t積のトレーラー10台
 
 こちらも「(1)文献による整理」と同様にCO2の排出量を試算すると、シフト前を100%とすると、約95%が低減されることがわかった。(試算の条件は、「(1)文献による整理」と同様とした。
 
図−3.8.4 ヒアリングの事例から試算したシフト前後のCO2排出量の割合
 
(3)行政機関の今後の方向性と施策
物流システムの構造改革を行う上で、関係行政機関では以下のような事業がなされている。
(1)海運の活用によるモーダルシフトの推進
・複合一貫輸送対応内貿ターミナルの整備
・モーダルシフト船等の建造を促進するための運輸施設整備事業団に対する財政措置
・運輸施設整備事業団による内航コンテナ船、内航RORO船等の整備(財政投融資)
・内航海運活性化に資する課題解消のための事業推進調査
・モーダルシフト対応型次世代内航船導入のための環境整備に関する調査研究
・魅力ある造船・舶用工業へ向けた産業基盤の整備
(2)貨物鉄道の活用によるモーダルシフトの推進
・貨物鉄道の整備
(3)複合一貫輸送促進のための拠点整備
・複合一貫輸送施設等の物流拠点の整備(開銀等融資)
 
RORO(ローロー)船
 
貨物拠点整備事業
 
 上記に加え、平成13年7月から次世代内航海運懇談会が開かれ、今後のビジョンが検討されている。
※出典:国土交通省ホームページ
 
(4)モーダルシフトに係る問題点の整理
(1)輸送コストの低減
 モーダルシフト移行への意向を持つほとんどの企業(鉄道への転換で88.2%、海運への転換で84.8%)が、「輸送コストが低くなる」ことをあげており、コストを低減できることがモーダルシフトを進めるための第一条件といえる。
(2)発着時刻、頻度の条件設定
 「輸送頻度が高い」「発着時刻が希望に合う」「輸送時間を短縮できる」など、発着時刻・所要時間にかかわる条件も多くあげられている。したがって、モーダルシフトを進めるには、運賃料金を安くすることはもちろんであるが、発着時刻・発着頻度などニーズに適合したダイヤの設定が重要な条件となる。
(3)情報・連絡体制の整備
 「発着地における業者の連携体制が整う」「貨物追跡情報が得られる」ということもあげられている。これは、トラックを利用する場合と同等の発着一貫サービスを提供できる体制を実現しなければならないことを示している。
(4)企業の意識改革
 鉄道・海運への転換は難しいと回答した企業では、鉄道・海運は納期短縮・着時刻指定など時間面でニーズに対応できない、あるいは、トラックより運賃料金が割高である、といった意見がみられる。したがって、トラックから鉄道・海運への転換を図っていくためには、供給側でコスト、ダイヤ、サービス面の施策を進めるのみでなく、積極的なセールスの展開によって、こうした企業の意識を改めていくことも要請される。
 
モーダルシフトの条件に係わるアンケート調査結果(複数回答 回答数 鉄道119.海運92)
 
(5)モーダルシフトに係わる調査・検討等
 上記の(1)〜(3)については今後、河川の水域環境等の整備による条件が向上することによりモーダルシフトへの移行が促進される可能性も考えられるので更なる検討が必要である。







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