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II 第48回航行安全小委員会(NAV48)の審議概要
1 審議概要(全般)
1−1 日程
(1)対処方針会議 7月7日(日)(在連合王国日本国大使館会議室)
(2)NAV48 7月8日(月)0930〜7月12日(金)1730
 
2−2 開催場所
 国際海事機関 本部
 
2−3 日本側参加者:15名
 ◎:本委員会所属者の出席者 ○:英国からの出席者
在連合王国日本国大使館一等書記官 石原 彰(運輸担当)
海上保安庁警備救難部航行安全課課長補佐 福谷 幸資
国土交通省海事局安全基準課専門官 山田 浩之
  水産庁増殖推進部研究指導課技術係長 山内 達行
  独立行政法人海上技術安全研究所
海上安全研究領域総合安全評価研究グループ長
沼野 正義
(社)日本船主協会欧州地区事務局長 赤塚 宏一
東京商船大学教授 今津 隼馬
(社)日本造船研究協会 篠村 義夫
  (社)日本造船研究協会 岡村 敏
  (社)日本造船研究協会 松井 裕
  (財)日本舶用品検定協会技術部技術課長 上村 宰
(社)日本船主協会海務部副部長 中川 欣三
  (社)大日本水産会 岡崎 勇二
(社)日本海難防止協会ロンドン連絡事務所長 山地 哲也
(社)日本海難防止協会企画国際部国際室長 若林 邦芳
 
2−4 議題
(1)議題の採択
(2)他のIMO機関の決定
(3)航路、船舶通報及び関連事項
(4)IBSの運用
(5)避難水域
(6)漁船安全コード及び非強制ガイドラインの見直し
(7)錨、係留及び曳航装置
(8)現存貨物船へのVDR搭載のフィージビリティスタディ
(9)レーダーリフレクターに関する性能基準の改正
(10)レーダー設備に関する性能基準の見直し
(11)ITU関連
(12)巨大旅客船の効果的な航海計画
(13)救命艇の事故防止手段
(14)ばら積み貨物船の安全性に関する問題
(15)海難事故解析
(16)作業計画及びNAV49の仮議題
(17)2003年の議長及び副議長の選出
(18)その他の議題
(19)海上安全委員会への報告
 
2−5 審議内容
(1)議題の採択(議題1関連)
 事務局作成の原案(NAV48/1)どおり承認された。
 また、MSC75において本件会合に対し審議が付託された事項については、「議題18その他」において審議することが合意された(議題18A〜議題18L)。
 なお、各議題の詳細審議のためのワーキンググループ(WG1/WG2/WG3)及び文書作成のためのドラフティンググループ(DG1/DG2)の設置が承認された。
(2)他のIMO機関の決定(議題2関連)
 事務局より、提案文書(NAV48/2,NAV48/2/1,NAV48/2/2)の説明がなされ、特段の意見なく、これをノートすることが合意された。なお、MSC75において、今次会合に審議が付託された事項については、「議題18その他」において、審議されることとなった。
(3)航路、通報及び関連事項(議題3関連)
(1)プレナリーにおける全般審議
イ プレナリー冒頭、米国より事務局が用意した「航路・船位通報の提案に関するガイダンス(NAV48/1/1,annex2)の作業を評価するとともに、MSCサーキュラーとして回章するよう提案され、WGにおいて検討されることとなった。
ロ 船舶通航及び船舶通報システム
 WGは小委員会からの指示に基づき、船舶通航及び船舶通報システムに関するガイダンス及びMSCサーキュラー提案の検討を行い、本件に関するMSCサーキュラー案を作成、11日のプレナリーで本案は承認され、事務局に対し、各委員会前に議題に対する注釈として本サーキュラーを配布するよう指示した。
(2)各提案に基づく審議
イ 地中海、エジプト沿岸の推薦航路(NAV48/3)
 8日プレナリーにおける審議では、特段の意見なく、WGにおける審議では、提案された通航方式は”Two Way Route”であるべきとする意見が出され、それに従い表現を訂正、11日プレナリーにおいても特段の意見なく承認された。
ロ バルチック海(フィンランンド湾)の分離通航方式の改正(NAV48/3/1)
A プレナリーにおける審議
 英国から船位通報制度全体にわたる問題として、今後、AISを通じて船位通報を行なう場合の陸上受信局から船舶あての通報受信の認証をどう取り扱うかをWGで考慮すべきとの指摘があった。これに対し独等がその重要性を支持し、WG議長(蘭)の申し出もあり、WGにおいて可能な限り当該手続フォーマットを検討することとなった((3)参照)。
B WGにおける審議
 WGではフィンランド等の提案通り合意したが、VHFチャンネルのいくつかが記載されていないことが指摘され、次回会合にて具体的なチャンネル周波数)を提供することとなった。また、提案された新規の強制的通報システム採択のためのMSCサーキュラー案を検討した。実施期日は2004年7月1日の予定。
ハ アドリア海の強制船位通報制度の制定(NAV48/3/2)
A プレナリーにおける審議
 ギリシャから前回の案ではギリシャのSAR海域が通報制度の海域と重複していたことを指摘、今回の案では通報海域が当該SAR海域を避け北側に移動されたことを評価、本案を支持する旨発言。わが国他ポーランド、ブラジル、パナマ等多数が支持を表明した。
B WGにおける審議
 アドリア海南部におけるVHFのカバーエリアに関し質問が出されたが、イタリアからVHF、MF及びHFが使用可能である旨説明がなされた。その他、基本的に提案された強制通報システムが同意された。
C プレナリーにおける審議(WG審議後)
 事務局から、船舶が強制通報システムで定められた通報を怠った場合の対応に関し、当該船舶の情報をPSC官に提供する件につき、STW上もPSCの実施上当該情報を必要としないことから削除すべき旨の意見があり、了承された。
ニ バルト海入航方法の改正(NAV48/3/3)
 8日プレナリーにおいては特段の意見はなかったが、WGにおいて、MSC決議案の検討に関し、既存の総会決議A.579(14)及びA.620(15)を廃止することが可能となる第23回総会前に実施することの認識の基、実施期日を2003年5月1日から2003年12月1日に変更することで同意された。また、英より水先制度利用船舶を提案より拡大すべきとの提案がなされ、デンマークより修正案が提出され、了承された。11日のプレナリーにおいても特段の意見はなく了承された。
ホ 南紅海の分離通航方式の拡張、修正及び推薦航路(NAV48/3/4)
A プレナリーにおける審議
 英国から、北側2本の航路がそれぞれ南北の航行を規定しているため、2本の航路が接合される中央部は航路が複雑に交差し、航行安全上危険がある旨の指摘があった。これに対し、イエメンは本件についてはNAV46において、北側の海域における従来からの船舶航行の流れは変えないことを前提とする旨合意され、今回の作業を行った旨の説明があった。
B WGにおける審議
 WGではイエメン等が提案した方式のまま合意され、11日のプレナリーにおいても特段の意見なく了承された。
ヘ フェンデイ湾(カナダ)及び入口付近の分離通航方式の改正(NAV48/3/5)
 8日プレナリーにおける審議では、米国、パナマ、INTERTANKO、バハマ、クロアチアが支持を表明し、WGでも特段の意見なく提案通り合意、11日プレナリーにおいても特段の意見なく了承された。
ト La Nao岬(スペイン)沖の分離通航方式の制定(NAV48/3/6)
 8日プレナリーでは特段の意見なく、WGではスペインの提案どおり合意され、11日プレナリーにおいても特段の意見なく了承された。
チ Palas岬(スペイン)沖の分離通航方式の制定(NAV48/3/7)
 8日プレナリーでは特段の意見なく、WGではスペインの提案どおり合意され、11日プレナリーにおいても特段の意見なく了承された。
(3)AIS通報
 WGは小委員会からの指示に碁づき、AISを通じた通報の確認方策について検討を行った。原則的に強制通報はAISによる通報が可能となることがノートされ、強制通報のフォーマットに適合させる必要性が認識された。MSC.43(64)、船長の通報に関する義務をノートし、WGは沿岸機関(shore anthority)が船舶通報の受領を認める義務があることを認識した。
(4)衝突防止に関する検討
 WGは小委員会からの指示に基づき、衝突防止に関するSTW33の検討結果について検討を行った。WGは、COLREGS第8規則(a)の改正に帰着し、本件について海事関係者に周知することが重要であることを認め、SNサーキュラー案を検討した。
(4)IBSの運用(議題4関連)
(1)IBSガイドライン(NAV48/4,NAV48/4/2関連)
イ プレナリーでの審議
 英国提案(NAV48/4)と日本提案(NAV48/4/2)の概要説明の後、ノルウェー、英国から、MSCではOperational Aspectsを中心に再考するよう求められたはずであるが、NAV48/4/2は、Technical Matter、Training等広範囲なものとなりすぎているとともに、関連する既存の基準と重複する内容が含まれており、内容を絞ったものとすべきであるとの意見があり、この意見をふまえて、WG2で審議することとなった。
ロ WG2での審議
 WGでは、フィンランド、日本、に加え、CIRM、ノルウェー、英国、ドイツ、ポーランド及びデンマークが参加してドラフティングのためのサブWGを構成して、検討を行った。
 サブWGでは、運用部分をガイドラインとして作成し(NAV48/WP.1/Add.1,annex3)、テクニカル部分をIBSの運用に係る技術的事項として関連する国際基準の検討に反映させることとした(NAV48/WP.1/Add.1,annex4)。また、訓練に関する事項は運用ガイドラインから切り離し、STW小委員会にIBSの運用に関連する事項として検討を要請することとなった。
ハ プレナリーでの審議(WG2審議後)
 特段の議論もなく、運用ガイドラインがMSC CircularとしてMSC76に提出され、技術的事項が関連国際標準検討機関に検討を要請することが合意された。
(2)AIS情報の表示・利用の要件(NAV48/4/1関連)
イ プレナリーでの審議
 提案文書(NAV48/4/1)の説明がなされ、議長より、WG2に対し、本件の詳細検討が付託された。
ロ WG2での審議
 IECからの提案書について審議し、本件に関してIECに支援を求めることとした。
 IECのTC80−WG13において本件は検討され、新しい基準(IEC62288)が作られていること、また、情報機器の統合、例えばレーダーとAISまたはECDISとAISのような修正航海表示の必要性についてもIECは考えていることが紹介され、この検討結果は次回のNAV49に提出されることとなった。なお今後は、こうした新技術などを考慮して、必要な運用基準や性能用件を作成することとした。
ハ プレナリーでの審議(WG2審議後)
 特段の意見無く、AIS情報の表示・利用の要件については継続審議することが認められた。
(5)避難水域(議題5関連)
(1)プレナリーでの審議
 フランス及びISUより、提案文書(NAV48/5,NAV48/5/1)の説明がなされた。スペイン、米国、英国、オーストラリア、ノルウェー、バハマ等が、フランス提案のガイドライン案(ISUからの同ガイドラインヘのコメント提案を含む。)を原則支持するも、SAR条約との関係、現行の避難水域に係る各国間のagreementベースの活動との整合、Costal Stateが連邦制をとる国での実施の困難性等から、ガイドラインは、これら現行の枠組みを阻害しない柔軟なものとすべきとの意見をなした。一方、フランスが提案するMERCsについては、米国、オランダ、オーストラリア、バハマ、ノルウェー等が、特に、本件とSAR条約との関係から、現在のMRCC組織と二重のコンタクトポイント(連絡窓口)が存在することは、かえって混乱を招くのではないかとの意見をなし、サイプラス、トルコ等が当該組織の財政面の問題を指摘した。また、あわせて、多くの国が、人命、環境等の避難水域に係る関係者等の安全確保を指摘した。審議の結果、WG3に対し、プレナリーの審議結果を踏まえ、本件の詳細審議が付託された。
(2)WG3での審議
 プレナリーからの付託事項を受け、フランス提案のNAV48/5をベースに以下の主要な点が検討され、「援助を必要とする船舶の避難水域に関するガイドライン」及び「海上援助機関(MAS)の設置」に関する総会決議案を取りまとめ、MSCに対し、右決議案の承認とMEPCへの情報提供、及び23回総会での採択に必要な作業を要請した。
イ SAR条約との関係
 SAR条約は人命の救助を規定しているが、援助が必要な船舶への対応については規定していない点が指摘され、本ガイドラインは、人命には異常がないが援助を必要としている船舶を対象としたSAR条約を補完するものとの位置付けがなされた。
 更に、船舶が援助を必要とされている状況は、引き続く乗員の生命への危険に発展する点が指摘され、右のような状況に発展した場合には本ガイドラインに優先してSAR条約を適用することが確認された。
 また、WGはNAVに対し本ガイドラインをCOMSAR7に送付し、既存のSARの手続きと矛盾しないかどうか検討するよう要請している。
 本件に関連し、ガイドライン案「避難水域」の定義において、人命の保護が指摘されている点については、沿岸国の住民の保護を想定していることが確認された。
ロ 連絡窓口の設定について
 援助を必要とする船舶からの要請に迅速・的確に対応するため、沿岸国は連絡窓口を設定することが提案された。
 本件に関し、複数の国々では既にMRCCがその業務を行っており、当該機関に新たな名称を付与することは混乱を生じるとの意見があった。これに対し、当該業務を行なう機関が実態として存在すれば新たな組織を設立する必要がない点が確認され、更にMRCCは捜索救助の調整が本来目的であり、他方、当該連絡窓口は援助の要請に関する通信連絡と監視を目的とする点が指摘され、本件について責任ある機関が各国によって違うことを念頭におき、沿岸国が適切な対応を取ることを担保するため、RCCとは違う新たな名称を付与すべきとの意見が大勢を占めた。
 結局、WGにおいてはMAS(Maritime Assistance Service)との名称を付与し、各国は自国のMASの名称、電話番号等の詳細な情報を事務局に提出、右情報が各国に回章されることとした。
ハ 責任と補償
 援助を必要とする船舶が避難水域において沿岸国の安全や環境を阻害する事態を想定し、避難水域において生じた被害に対する補償と責任を合理的に担保する規定の必要性が指摘された。WGでは、本件は法的検討が必要とされる事項であるとの指摘があり、MSCを通じ、法律委員会に対し沿岸国が被害に対する補償を担保する方策について検討するよう要請することとした。
 更に、避難水域で生じる経費又は責任の担保を沿岸国の入域の条件とする規定を本ガイドラインに新たに盛り込む必要性が議論されたが、右は法律委員会が取り組んでいる責任と補償に関する一連の議論である旨の指摘があり、結局、MSCを通じ本件につき法律委員会からのアドバイスを要請することとなった。
ニ 危険評価
 国際サルベージ連盟は、昨年のカストール号事故における欧州各国の対応に関し、後日ロイズが行った調査結果によれば、当時、該船の沿岸国への入域は環境問題を含め何ら被害を生じる可能性はなかったと評価していることが紹介されるとともに、当時入域を拒否した殆どの国々が、該船を受け入れることで生じる被害発生の可能性に係る評価につき、該船に乗船しての詳細な現状調査や情報収集を行わずして右拒否を決定した点を指摘。よって、本ガイドラインでは、専門家が該船に乗船した上で情報収集し危険評価を行なうべき旨規定するとともに、右評価を行った後でなければ沿岸国は受け入れを拒否できない旨規定すべきとの意見を出した。
 これに対し、各国からは、当時の状況と提案の背景は理解するも、海上が荒天の場合には物理的に乗船が不可能な場合がある点、右は沿岸国に過大な負担と危険を強いることとなる点などが指摘され、評価と受け入れ拒否を関連付ける規定は合意が得られなかった。結局、実行可能でかつ時間が許す範囲で専門家が乗船の上評価を行なうとの規定振りとなった。
(3)プレナリーでの審議(WG3審議後)
 各国から、ガイドライン案及びMAS設立に関する総会決議案につき、WGの労を多とするも、本案は更なる検討が必要との意見が大勢を占めた。
 結局、今次会合においては、各国からのコメントをNAV48の最終報告にノートするに留め、今後の作業として次の点が合意された。
イ WGの報告をノートする。
ロ 右報告を次回MEPC、MSC、LEG、及びCOMSARに送付し検討を要請する。今後の取り扱いについては、MSC76においてWGを設置して検討するか否かについてを含め、MSCの決定に委ねる。
ハ 次回NAV49において最終的な検討を終え、第23回総会での採択を目指す。
 なお、12日プレナリーでの各国の発言要旨次の通り。
A 豪州
沿岸国の権利についての規定、及び新たな機関MAS設立の必要性につき、更なる検討を必要とする。
B バハマ、マーシャル諸島、カナダ
 ガイドラインの規定振りに関し、重複した規定やエディトリアルな修正点が複数あり更なる検討が必要。
C アルゼンチン
 本ガイドラインはそもそもボランタリーなもののはずが、各所に強制的な規定振りがあり修正を要する。
D パナマ
 本件は各国にとって重要な案件であり、作業計画に規定された2003年の成立に向け、次回MSC76において新たなWGを設置設置した上での検討を含め、早期採択に努力すべき。
 また、危険評価に際しては、隣接国に与える影響も考慮した規定振りとすべき。
E フィリピン、シンガポール
 本件に関しては、「責任と補償」及び「財政的担保」が最も重要なポイントであり、その解決が先決。
(6)漁船安全コード及び非強制ガイドラインの見直し(議題6関連)
(1)プレナリーでの審議
 我が国から、航行安全に関しては、漁船安全コード第X章とSOLAS条約第V章の規定を調和させるべき旨提案(具体的には、航海船橋の視界確保については長さ45m以上の船舶に適用、レーダーについてはSOLAS条約における300総トンに相当すると考えられる長さ35m以上の船舶に適用)した。
 これに対し、議長は、ドラフティンググループ(DG2)による検討の提案と、当該グループに対し、漁船安全コードと小型漁船非強制指針を最新のSOLAS条約に調和させること及び船舶のトン数と長さを関係づける手法の可能性について検討することを指示し、検討結果についてプレナリーへの報告するとともに、当該グループの議長にAhmed氏(バングラデシュ)を指名した。参加国は日本、ノルウェー、韓国、ロシア、英国の5カ国となった。
(2)DG2での審議
 DG2による検討結果としては、プレナリーの議長の指示により、最新のSOLAS条約に調和させることとなっていたが、同条約おける各種設備の設置要件等の対象船舶のトン数による決定方法を、漁船安全コードと小型漁船非強制指針に用いることについては困難であるとの当該グループの見解により、長さのみを用いた対象船舶の決定方法を用いることとした。また、最新のSOLAS条約に規定される性能基準のうち漁船安全コード及び小型漁船非強制指針に関係するものをすべて同コード及び同指針に盛り込むこととしていたが、時間的な制約等から、一部を除き、すでに同コード及び同指針に規定されている性能基準について検討し、SOLAS条約の規定に準じて修正を行った。なお、同コード及び同指針は、あくまで非強制であることから、同コード及び同指針に規定される主管庁の型式承認を受けることを必要とする設備・装置についての規定に、主管庁の判断により緩和できる旨を追加した。
(3)プレナリーでの審議(DG2審議後)
 プレナリーでの報告において、ドラフティンググループによる新提案の同コードに対し、リトアニアから音響測深機を漁船に通常装備している魚群探知機により代用可能とならないかとの指摘があった。また、我が国から、昼間信号灯の搭載要件について、SOLAS条約では総トン数150トン以上の船舶に適用となっているため、長さ24m未満の船舶が適用対象であるガイドラインではかかる規定が不要である旨指摘した。しかしながら、議長は、同コードは基本的に任意の基準であるため主管庁の裁量により判断される事項であり、上記の2つの提案については、現行のままで対応可能であるとした。
(7)錨、係留及び曳航装置(議題7関連)
 本件議題に対する今次会合への各国からの文書提出はなかったが、INTERTANKOより、文書作成が間に合わなかったのとの説明があった。議長より、本件はDE小委員会がメインであるので、当該小委員会での審議結果を踏まえ、次回会合において、検討を行なうことが総括された。なお、本件に関しては、IACSが統一解釈を作成中との説明が、また、シンガポール及びパナマから、本件の適用時期(新造船、現存船等)が論点であるとの見解が示された。
(8)現存貨物船へのVDR搭載のフィージビリティスタディ(議題8関連)
(1)プレナリーでの審議
 提案文書の説明が各国より行われた(英国(NAV48/8)、日本(NAV48/8/1,NAV48/INF.5)、ドイツ及びスウェーデン(NAV48/8/2)、ブラジル(NAV48/8/3,NAV48/8/5)、ICS(NAV48/8/4))。なお、CIRM(NAV48/INF.6)からは、コスト分析が文書の提出期限に間に合わず、議場配布された(NAV48/J/3)。
 (簡易VDRの性能要件にかかる)論点は、VDRに記録すべきデータ(特にレーダデータを含むかどうか)及び保護カプセル(EPIRBタイプの浮遊式又は固定式)であり、これら2点について、英国は、レーダデータを含むべきで、浮遊型ではなく持ち運びのできる簡易型固定式、我が国は、(現存船への適用に合意したわけではないが)レーダデータ又はAISデータによる代替及び浮遊式(回収可能性を向上するためトランスポンダー及び発光器を追加)を、ドイツ及びスウェーデンは、レーダデータ(但し、サンプリングレートを下げる)及び浮遊式を、ブラジルは、レーダデータは含むべきだが、浮遊式(現存船への適用は反対で、これら簡易なVDRの性能要件を新船にも適用すべき)を、ICSは、原則英国を支持しつつ(特に、持ち運び式の保護カプセル)、AISの活用をできるだけ認めるべきことを、それぞれ主張した。
 多くの国は我が国を原則支持したが(特に、浮揚式の保護カプセル)、サイプラス、バハマ等の国々は、我が国を支持しつつ、現存貨物船への適用実績に基づく(コスト面での)分析が必要で、現存線への強制適用は時期尚早との意見であった(なお、我が国は、現存船への適用には合意していないとのスタンス)。
 今次会合では、現存船への適用実績等の情報が足りないため、結論を出すことはできないが、WG2では、プログレスレポートの作成等を検討することとなった。
(2)WG2での審議
 WGでは、プレナリーの指示を受け、VDRを現存船へ搭載する場合の技術的問題、現行の(新船用の)性能要件の現存船への適用可能性、費用対効果分析等について、プログレスレポートの作成が検討されたが、時間的余裕がなく、また、情報も不足しているため、今後コレスポンディンググループ(CG)を設け検討することを小委員会に要請することとした。
(3)プレナリーでの審議(WG2審議後)
 WGからの要請を受け、今後CGを設け、(簡易)VDRの現存貨物船への適用可能性を検討することが合意された(独がコーディネーター)ところ、CGへの参加を検討されたい。
(9)レーダー反射器に関する性能基準の改正(議題9関連)
 プレナリーにおいて、我が国より、英国が作成したレーダー反射器の性能基準の改正案(NAV48/9)について、Passive反射器のものについては概ね支持出来ること、一方、active反射器のものについては検討の基礎とするデータが十分にないことを指摘の上、WG2への当該データの提出を求めた。
 WG2では審議時間がないため、本件の詳細審議はされなかったが、提案国である英国及び我が国を含む関係国の間で調整を行い、我が国意見が反映され、次の点が合意された。
(1)Passiveレーダー反射器
Stated Performance Levelにおけるレーダー反射面積(RCS)を次のとおりとすることとなった。
  3GHz 9GHz 船舶の長さ
Large 3.0m2 30m2 >12m
Medium 1.5m2 15m2 =8-12m
Small 0.5m2 5m2 <8m
垂直指向性の+/−20°は困難であるとの意見が大勢であったが、今回は一応スクエアブラケットを付して、更に検討することとなった。
(2)Activeレーダー反射器
 Active反射器は、探知距離、大きさ、重さ等の点で有用であるが、極近距でのレーダー側のサイドプローブ虚像、一つのActive反射器が近辺の他のActive反射器を起動することによる不要信号の発生等が懸念されることは、致命的な欠点であることが指摘された。
 以上の結果、Passive反射器及びActive反射器とも、更なる実験を含めて、今後の検討事項が多いため、コレスポンディンググループ(CG)を設立し、検討することが合意された。
(10)レーダー設備に関する性能基準の見直し(議題10関連)
 IALAより、提案文書(NAV48/10)の紹介がなされ、ISAF及びICSが提案文書の主旨に賛同の意見をなした。また、スウェーデンより、次回会合に文書を提案するとの説明がなされた。しかしながら、今次会合での審議時間がないため、次回会合で審議することが合意された。
(11)ITU関連(議題11関連)
 事務局より、提案文書(NAV48/11)の説明がなされ、あわせて、議長より、WG2に対し、当該文書の詳細検討が付託された。WGにおいては、特段の意見なく、提案文書をノートすることが合意された。
 なお、本件議題に係るその他の提案文書(NAV48/INF.3,NAV48/INF.8)についても、特段の意見なく、当該文書の内容がノートされた。
(12)巨大旅客船の効果的な航海計画(議題12関連)
 米国は、提案文書(NAV48/12,NAV48/INF.4)を紹介し、特にMSC74にて指示された8つのタスクのうち、第5の「遠隔地における操船のための水路情報の品質及び有効性」についてはさらに検討する必要がある事を指摘した。ノルウェーは巨大旅客船の安全を検討するにあたり、ギャップ分析は必ずしも最良の手法ではないとし、ノルウェーはFSAを行なうべく準備中であると報告した。これらについてIHO、豪、バハマ、キプロス等がコメントしたが、議長はこれらのコメントを踏まえ、かつMSC75/WP.12,Annex3にある本小委員会に対するMSC75の指示事項に基づき、下記の如く総括し、プレナリーにて合意された。
(1) IHOは「遠隔地における操船のための水路情報の品質及び有効性」について次回会合に関連資料/情報を提出する事
(2) 各国政府は
船舶輻輳する海域において現行のBridge team Resourceを増強する必要があるか否かを見直す
VTS技術を十分に活用するため、ガイダンスが必要か否かを検討する。そして問題点があれば次回会合に提案/コメントを提出すること。
(13)救命艇の事故防止手段(議題13関連)
 本件議題に対する今次会合への各国からの提案文書はなかった。議長より、個人的見解として、本件議題は、本小委員会の審議案件ではないのではないかとの疑義が提示された。これに対し、英国から、本件議題を審議したMSC74において、時間的問題から特段の詳細検討なく、機械的に本小委員会の作業計画に加えられたとの説明がなされた。このため、議長より、本件議題を本小委員会の作業計画から削除することが提案され、特段の反対意見なく、合意された(本件議題を審議するDE小委員会に了解の上、MSCに承認を要請)。
(14)バルクキャリアの安全関連事項(議題14関連)
(1)プレナリーでの審議
 本件議題に対する今次会合への各国からの提案文書はなかったが、英国より、本件議題に関連する同国提案(MSC74/5/2)を踏まえ、(イ)すべての船舶に対する位置情報の会社への報告義務の強制要件化(同義務の実施を要請するMSC/Chr.1043を考慮の上)及び(ロ)weather routing arrangementsにおける船長裁量の回避(同じくA.893(21)を考慮の上)を検討することが要請された。これに対し、パナマ及びバハマより、海事保安で議論している船舶のロングレンジトラッキングシステムの関係もあり、(イ)の強制要件化に対する疑義がなされた。審議の結果、議長より、WG1に対し、英国が議場提案した2件の詳細検討が付託された。
(2)WG1での審議
 英国提案(イ)については、既にほとんどの会社において船舶の報告制度は確立されていること、当該要件の実施を確認するのは困難である等の理由から、我が国を含む、パナマ、ドイツ、ノルウェー、デンマーク等の大勢が、強制要件化に反対の意見をなし、結果、強制要件としないことが合意された。また、英国提案(ロ)については、A.893(21)を含むIMO関係文書等に対抗要件は存在しないが、SOLAS条約の規定が船長の裁量を改めていることが確認された。
(3)プレナリーでの審議(WG1審議後)
 WG1の審議結果が、特段の意見なく、合意された。
(15)海難事故解析(議題15関連)
 本件議題に対する今次会合への各国からの提案文書はなく、議長より、関係小委員会(FSI10)からの報告がなされ、特段の意見なく、これをノートすることが合意された。
(16)作業計画及びNAV49の仮議題(議題16関連)
(1)レーダー上でのAIS情報の表示及び使用に関するガイドライン(NAV48/16関連)
※「18. その他(議題18関連)」を参照。
(2)NAV49の仮議題
 事務局作成の原案(NAV48/WP.4)に対し、欧州がGNSS分野の新開発(ガリレオ計画)の早期審議の開始を主張した(MSC決定では当該事案の審議スケジュールは2005年まで)。審議の結果、これをサブ議題として加えることとした上、次回会合の議題案が承認された。
(17)2003年の議長及び副議長の選出(議題17関連)
 現議長のオランダのMr.Polederman氏及び現副議長のロシアのDr.V.I.Pereskin氏が共に再選出された。なお、次回会合の開催は2003年6月30日から7月4日の間に暫定的に予定されていることが報告された。
(18)その他(議題18関連)※「議題18I 海事保安」関連を除く。
(1)AISの搭載に関するガイドライン(議題18A・NAV48/18関連)
イ プレナリーでの審議
 提案文書(NAV48/18)の説明がなされ、議長より、審議結果をMSC76に提出することを目的に、WG2に対し、本件の詳細検討が付託された。
ロ WG2での審議
 スェーデン及び米国からの提案文書を審議し、用語の修正をした上で原案通り「AISの搭載に関するガイドライン(案)」を作成した。また、当該ガイドライン案はボランタリーベースで施行されるように、SNサーキュラーとすることとし、MSC76に提出の上、承認されるように求めることとした。
ハ プレナリーでの審議(WG2審議後)
 ガイドライン案について小修正を行なうとともに、SNサーキュラーを承認し、MSC76に提出することとなった。
(2)干渉からの脆弱性減少のためのGPS性能基準(議題18B・NAV48/18/1関連)
 プレナリー説明の際に、提案者であるIECが不在のため、本件の詳細説明はなされなかったが、議場外において、IEC担当に、干渉の具体的要因は何であるかを確認したところ、電磁的、機器の利用を懸念しているとの回答があった。なお、本件は、今次会合での審議時間がないため、次回会合で審議することが合意された。
(3)AIS−VHFデータリンクの保護に関する勧告〜MSC.74(69)の要件に適合しないAIS設備の性能基準案(議題18C・NAV48/18/2関連)
イ プレナリーでの審議
 提案文書(NAV48/18/2)の説明がなされ、議長より、審議結果をMSC76に提出することを目的に、WG2に対し、本件の詳細検討が付託された。
ロ WG2での審議
 米国からの提案文書を審議し、本件はクラスB−AISの性能要件ではなく、クラスA−AISにより構築されたAIS−VHFデータリンクをクラスB−AISの参入から保護するための勧告とすることとした。勧告の内容は次の3点である。
クラスB−AIS及びチャンネルAIS−1やチャンネルAIS−2で送信する装置にあっては、勧告ITU−RM.1371の要件に従うこと。
クラスB−AISは監督官庁の認定を受けること。
監督官庁は、その海域で使用しているAISチャンネルの完全性を確保するため必要となる措置を採ること。
ハ プレナリーでの審議(WG2審議後)
 特段の意見も無く、AIS−VHFデータリンクの保護に関する勧告をMSC76に提出することが合意された。
(4)SOLAS条約第V章「船橋航海視界」の規定の改正提案(議題18D・NAV48/2/2,MSC75/6/1関連)
 ノルウェーより、提案文書の説明がなされ、2000年のSOLAS条約改正の審議時は、船橋航海視界に係る長さを「全長」として検討していた経緯も踏まえ、オーストラリア及びパナマが賛同の意見をなした。一方、英国及びシンガポールは、提案主旨に賛同するも、本件は条約の改正を必要とする提案であり、また、条約における他の長さの定義との関係、更には、多くの審議案件を抱える今次会合で本件の審議をするのは困難であるとの意見をなした。結果、本件は、次回会合から、具体的審議を行.911なうことが合意された。
(5)IMO法律用語の統一(議題18E・MSC75/22/1,A.911(22)関連)
 事務局からの説明に対する特段の意見はなく、本件をノートすることが合意された。
(6)HSCコード及びDSCコードの見直し(議題18F・NAV48/2/2,MSC75/WP.16関連)
 今次会合での審議時間がないため、次回会合で審議することが合意された。
(7)VHF 16CHの適切な利用(議題18G・NAV48/2/2関連)
 MSC 75の決定に基づき、COMSAR小委員会作成の総会決議案「VHFチャンネルの適切な利用」の検討がなされ、特段の意見なく、本決議案が了解された。
(8)レーダー上でのAIS情報の表示及び使用に関するガイドライン(議題18H・NAV48/16関連)
イ プレナリーでの審議
 提案文書(NAV48/16)の説明がなされ、議長より、WG2に対し、本件の詳細検討が付託された。
ロ WG2での審議
 本件は、AISとその他の船橋にあるレーダー、ARPA等の装置と接続する際のAIS表示について、さらなる検討が必要である旨NAV47において英国から指摘され、MSC75において本件審議がNAV小委員会の作業計画に追加されたものである。しかしながら、今次会合での審議時間がないため、次回会合で審議することが合意された。
ハ プレナリーでの審議(WG2審議後)
 特段の意見も無く、本件が了承された。
(9)海事保安(議題18I・NAV48/2/2関連)
※「19. 海事保安」を参照。
(10)AISバイナリーメッセージ(議題18J・MSC75/6/3,NAV48/INF.7関連)
イ プレナリーでの審議
 ドイツの提案文書(MSC75/613,NAV48/INF.7)の説明がなされ、議長より、WG2に対し、本件の詳細検討が付託された。
ロ WG2での審議
 ドイツの提案文書について審議し、本件に関してITU及びIALAと協力し合うこととした。また国際適用識別(IAIs)の維持や登録はIMOが中心となって行なうこと、また今後の作業はIALAと協調して行なうことが同意された。
ハ プレナリーでの審議(WG2審議後)
 ドイツから、WGの報告はMSC75/6/3に対する検討方針として間違っているとの指摘があり、ドイツの主張(IALAはAISの関連機関であるが、陸上側の機関であり、船上の航海情報である本件の検討は一義的にIMOが行なうべき等)のとおりであることを確認した上で、メッセージの整備と導入に向け継続審議ととすることとした。
(11)RO−RO旅客船の救命いかだの低電力ホーミング装置(議題18K・DE 45/27、para9.1−9.11関連)
 今次会合での審議時間がないため、次回会合で審議することが合意された。
(12)東アジア海域のマリン・エレクトロニック・ハイウェイ地域構想(議題18L・MSC75/INF.4関連)
 事務局からの説明に対する特段の意見はなく、本件をノートすることが合意された。
(19)海事保安(議題18I・NAV48/2/2関連)
(1)船舶のロングレンジ・トラッキング・システム(NAV48/2/2)
 MSC75からの指示により、技術的要件を検討することになった。
 船舶のロングレンジ・トラッキング・システムについては、ほぼMSC75の合意通り、インマルサットCが最も望ましいことが合意された、インマルサットCを搭載していないA1及びA2水域等を航行区域とする船舶が存在するも指摘された。
(2)船舶の保安警報(NAV48/2/2)
 MSC75からの指示により、技術的要件を検討することになった。
 保安警報については、現行GMDSS設備を活用する場合、インマルサットC、EPIRB−E、MF/HF DSC、VHF DSC、新規設備としてはDSAS、EPIRB−E+が候補としてあげられ(テロ対策用に若干の修正は必要)、また、SOLAS条約改正案に対する修正案も作成され、これらは9月のMSC中間会合に情報提供されることになった。
(3)AIS装置の外部干渉に対する安全性(NAV48/2/2, MSC75/17/2/Add.1関連)
イ プレナリーでの審議
 提案文書(MSC75/17/2/Add.1)の説明がなされ、議長より、WG2に対し、本件の詳細検討が付託された。
ロ WG2での審議
 MSCからの提案文書について審議し、AIS装置の電気的、機械的影響で安全性が損なわれる可能性を認めた。このため、この件をCOMSAR7に回し検討することを求める事とした。
ハ プレナリーでの審議(WG2審議後〉
 特段の意見無く、AIS装置の外部干渉に対する安全性の審議結果は認められ、本件はCOMSAR7に回すこととなった。







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