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3 IMO・MSC75での会議の進行
3−1 プレナリー(全体会議)
(1)会議スケジュール
 次のとおり。通訳の勤務時間の関係から変更されるのは稀である。
0930−1100 会議
1100−1130 コーヒー・ブレイク
1130−1230 会議
1230−1430 (昼食)
1430−1600 会議
1600−1630 コーヒー・ブレイク
1630−1730 会議
(2)議題の採択
 15日今回の全体会議においては、議題の採択の後、議長の判断によりタイムテーブルの予定を変更し議題17(海上テロ)についてまず検討を行なった。右はWGに対し検討のため十分な時間を与える必要があるとの配慮による。
(3)議題17についての検討
事務局が用意したペーパーをもとに、本年二月の中間作業部会の報告でMSCが求められている案件10項目につき、(1)大勢意見の確認(2)WGで検討させる事項の抽出(3)MSCとしての作業方針の確認を行なった。
案件の検討は、(1)総計40本以上の提出ペーパーにつきそれぞれ提出国の説明を求めた(ただし、インフォメーション・ペーパーは発言の機会なし)、(2)各国から多数の意見が出された(3)議長も日程に執着せずに各国に自由な意見の場を提供した、ことから、予定を大幅に延長し翌日午後2時まで続いた。
基本的に議長は、各国の発言にコメントをはさむことはせず、意見の違いが有る場合には、その場で議論を行なわずWGにおける検討事項とした。
(4)その他の議題の検討
 その後、WGの設置が予定されている議題4、5,15を優先して検討、以後議長は検討の進捗状況を勘案しながら議題の検討順序を決め、各議題についてのペーパー提出国による説明の後、各国からのコメントを受け検討を行なった。
(5)各WGからの報告
 23日より、各WGからWG報告書に基づく報告が行なわれた。報告後、若干のコメントがあった他は特段の議論は行なわれなかった。最後にWGがMSCに要請する項目についてレヴューした。
(6)MSC75の報告(案)の承認
24日会議最終日にはMSC75の報告(案)の承認を行なった。
数十ページにわたる報告書を項目毎に確認していく作業は正に根気のいる作業である。
今回の会議の検討結果として最終的に書面としてアウトプットされるもの故、各国からは、留保を付けたり、委員会の決定事項とせず括弧書きとするよう要請したり、或いは細かい表現振りにも注文を付けたりと修正意見が出され、その都度確認を行ないながら最終的な合意を見た。
(7)所見
各国の提出ペーパーの説明は、その殆どがトーキング・ペーパーの読み上げの形式で行なわれた。提出案件についてコメントする場合も、事前に用意したトーキングペーパーを読み上げる国が多かった。
トーキング・ペーパーの読み上げ方にも各国で特徴があった。一番印象に残ったのは米国の発言で、スピーカーは大きな声でゆっくり、抑揚を付けて噛み砕くようにして読み上げ、右は出席者全員に米国の考えを理解してもらおうという誠意を感じさせた。
他方、意見のはっきりしないものについては、議長が、賛成の立場か、異なる意見なのかを確認する場面もあり、発言に際しては、自分のポジション(意見に賛成か、反対か、確認したいのか)を最初に明らかにする必要性を痛感した。
 
3−2 ワーキング・グループ(WG):議題17(海上テロについて)
(1)会議スケジュール
 16日1430から全体会議と平行して別会議室でWGが始まった。冒頭WG議長から、WGは毎日朝8時半から夕方6時半まで行ない、議事の進捗状況次第では土曜日にも実施する旨アナウンスがあった。結局、議事の進行の遅れから土曜日にも作業が行なわれた。
(2)WGでの検討の概要
事務局は、各国提出意見を反映させ取り纏めたSOLAS改正(案)を作成、WGにおいてはこれを検討の土台とした。
WGとしては、(1)SOLAS改正(案)と、(2)WGから委員会への報告(WGREP)を検討することとなった。(WGREP(案)はIMO事務局が作成する。)
WG議長は、自ら作成したSOLAS改正に係る要検討項目を箇条書きしたペーパーを提示し、その順番で検討を開始した。
第一回目の検討は、検討項目毎にペーパー提案者に趣旨説明をさせ、それに対する各国のコメントを求め問題の洗い出しを行なった。
その際、(1)内容的に合意が取れる案件については、改正案の書き振りをDG(ドラフティング・グループ)議長に口頭で指示した。(2)また、提案文書のコメントに対し新たな改正案を提案した国に対しては、提案国と協議し調整した案を提出するよう要請、更に(3)関係国の間で検討を必要とする案件については、別途Sprint Groupを組織することを決定、議長を指名し、関係者と検討し改正(案)をWGに提案するよう指示した。
SG: 特定の案件について、興味の有るものが集まって短時間にドラフトを作成するグループ
最終的にWGにおいては、WG議長の指示により作成されたSOLAS改正案を逐条検討し、委員会にWGの検討結果としてSOLAS改正(案)を取り纏めた。また、WGにおける一連の検討を事務局が取り纏めたWGREP案を項目毎に検討し、上記1(6)と同様の修正の後取り纏められた。
(3)SGにおける検討
今回のSGでは、「船舶保安警報の性能要件勧告(案)」と「長距離追尾レポートに関する機能要件(案)」を作成した。
今回のSGにおいてはUSCG出席者が会議をリードし、SG議長が作成した案に対する米改正案を参加者に口頭で紹介、若干の質疑応答の後、詳細はSG議長と詰めるとして会議を終了、SG参加者としては文書による確認ができないまま米修正案がSG案としてWGに報告された。
(4)DGにおける検討
DGはWG議長の指示により開催され、WGの作業と同時並行で別会議室で開催される場合もあり、またWGの作業後に行なわれる場合もあった。WG最終日前日には2300まで作業を行なった。
DGへの参加は自由で、自国の意見を反映させようとする国々が積極的に参加し、適宜妥協案を探しながら検討が続けられる。
DGで決着がっかない案件については、両案を併記した形でWGに報告しWGの決定に委ねるものもあった。
(5)所見
SGを作る、DGに指示をする等、WGにおける作業の進め方は全てWG議長が決めるため、WG議長の指示を注意深く聞いて全体の作業の流れを把握しておく必要がある。
WGREP(案)は委員会への報告の前日に配布され10分程度の時間を与えられた後検討が始まった。全てについて詳細に検討する時間はなく、関連の個所を集中して読み対応を検討し、当該項目にきたら間髪を入れずコメントする必要がある。
コメントとしては、「この件はまだこうなっていたはずだ。その旨書いてくれ」とか、「意見の統一がみられていない、括弧書きとすべき」といった具合に、どうして欲しいのかはっきり主張する必要がある。
会議全体の流れに流されず、案件毎の検討結果をしっかり把握しながらフォローする必要がある。結局どうなったのかをその場で確認しないと、レポートの段階でもめることになる。わからない場合にはその場で確認するのが原則。
SGでは英語ができる者がどんどんコメントを言って口頭での了解を求め、ペーパーをさっさと作り議長に提出し、WGの場でSG議長にSGの意見として発表させてしまう。当方に主張すべきことがある場合には、SGにおいてしっかり主張し、議長を取り込んで、SG報告のたたき台に指し込み、SG議長からの発表にしっかり入れてもらうことが肝要と感じた。







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