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私はこう考える【北朝鮮について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


読売新聞朝刊 1994年7月16日
金正日体制実質スタート 現状では「北」の変革困難 米韓との緊張緩和が条件
 
 金正日新政権の実質的なスタートによって、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の針路にどのような変化が生じるかに、最大の関心が集まっている。金日成主席を失った北朝鮮は、苦境打破の突破口をどこに求めるのか。同じ一党独裁体制をとってきた旧ソ連・東欧圏や中国との比較を通じ、「金正日時代」に入った北朝鮮の変革の可能性を探った。(外報部・大江志伸)
 一九八〇年代、社会主義圏には、さまざまな「改革・開放」の嵐(あらし)が吹き荒れた。隣国・中国はいち早く経済改革に着手し、独自の社会主義市場経済の確立に邁進(まいしん)している。こうした国々の変革を類別すれば、次の三つになるだろう。
 ソ連型=軍事力・官僚制度の肥大化による経済破たんを背景にした「改革・開放」という名の崩壊現象
 東欧型=旧ソ連による支配からの脱却を図って経済メカニズムを転換しようとした改革・開放
 中国型=社会主義という独裁的政治制度を活用しながら市場経済化による開発を推進する、壮大な実験型改革・開放
 北朝鮮が、範をとろうとしているのは、言うまでもなく「中国型」である。北朝鮮は、金正日書記が政治の前面に出始めた七〇年代初め、日米との関係強化によって経済的地力をつけ始めた韓国に対抗するため、やみくもに外資導入に走って経済に大混乱をきたした。
 その後、北朝鮮は中国の開放政策を意識した「八四年合弁法」を制定し改めて開放を試みるが実績は上がらず、昨年初になって中国の経済特区をモデルにした「自由経済貿易地帯法」と外資導入のための関連法規を整備するなど、試行錯誤が続いている。
 自由貿易地帯構想は、国連開発計画(UNDP)主導で進められているビッグプロジェクト「豆満江開発計画」(中国、ロシア、北朝鮮の三国国境地帯)を起爆剤にした、北朝鮮の開放化政策の決定版と呼べるものだ。しかし、北朝鮮の「対外開放政策」は、単に文書上の開放にとどまっているのに加え、国内経済の改革にまったく手をつけていない点で、本家・中国とは大きな落差がある。
 さらに、自由貿易地帯は、首都・平壌とは最も遠い日本海側の羅津、先鋒の両港を中心に設定されており、「開放化」による外からの風をこの地域に封じ込めようとの狙いがありありだ。仮に、開発計画が軌道に乗っても、金正日政権の「開放化」は、現状では「出島貿易」の域を出ない腰の引けたものとなるだろう。
 こうした限界を打破するうえで、金正日政権が取り組まなければならないのが「東欧型改革・開放」だろう。
 「東欧型」の場合、ソ連の圧迫で内部にうっ積するだけだった「改革・開放」のエネルギーが、ソ連支配の後退によって、一気にあふれ出てきた。
 現在の北朝鮮に転換へのエネルギーがどれだけあるかは疑問だが、朝鮮半島の分断で続いてきた南北軍事対決が、東欧にとってのソ連のくびき以上に、北朝鮮の政治、経済、社会体制に重くのしかかり、すべての分野の硬直化を招いたのは疑いない。北朝鮮が金日成主席の死をきっかけに、自縄自縛から抜け出そうとするなら、休戦ラインをはさんだ韓国、米国との軍事的緊張を緩和し、平和な環境を築くことが必要条件となるだろう。
 核開発疑惑をテコに展開している現在の北朝鮮の対米外交は、危険な駆け引きそのものだが、平壌独特の論理で南北関係の硬直状況の打破を目指していることに変わりはない。
 この意味で、金日成主席が先頭に立って進めてきた対米接近策は、いずれ南北統一問題と連動するものであり、その号砲となるのが今月二十五日に予定されていた南北首脳会談だった。
 金正日書記が、父・金日成主席の実質的なブレーン群の頂点にあったことを考えれば、新政権は、対米、対南外交のテンポをいっそう速める公算はきわめて大きい。
 しかし、「金正日政権」が描く北朝鮮の「改革・開放」は、どの国にも見られない閉鎖的な体制を温存しながら「中国型」と「東欧型」を同時に追う困難な作業となるだろう。周辺諸国の対応を含め、この連立方程式の処理を誤る時、「金正日時代」の北朝鮮は、ソ連型改革・開放という名の崩壊の危機に直面することになるだろう。
 
 
 
 
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