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解剖学実習を終えて
 岩島 とも
 四月から始まった解剖実習が終わった。毎回実習を進める中で最も感じたことは、人間の体の複雑さと素晴らしさだった。本当に上手くできていると改めて感心する日々だった。これからまだまだ学習を積み医者を目指すわけだが、今回の実習で実感したこの想いを忘れてしまわないようにしたいと思う。
 経済的に豊かになったと言われる今日、生き方について様々な議論がなされている。そして生を考える時、当然のことながら死について考えざるを得ない。生き方について、一つの明確な答えを出すことなどできるとは思っていないが、人一人一人がその人なりにその時その時の答えを見付けることは大切だと思う。自分の生きがいを見付け、日常の生活の中で充実感を味わいながら生きることで、本当に自分らしい人生を歩んでいると言えるのではないだろうか。
 そんな中、最近ホスピスが注目されている。病気といかに向き合って人生を生きていくかが問われている。不治の病を宣告されても前向きに日々生きていることを楽しめるなら、どんなに救われるだろう。そんな生き方をサポートするのがホスピスだと思う。人は、自分に将来があると思えばこそ希望を持ち易いが、目の前に死があると知った上で残りの日々を心穏やかに過ごすことは想像しただけで至難の技だと思う。
 私は人間が好きだ。人間の強さ、弱さ、一言ではとても表わせない様々な面を持ち合わせている人間はとてもおもしろいと思う。そして体の仕組みもまたおもしろい。一見複雑そうな中で、意外に単純な点もあったりする。これから学んでいく中で、自分の好奇心をいつまでも失わず謙虚な気持ちで人間と向き合っていきたいと思う。








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