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解剖実習の感想
 池田 剛
 石戸谷 恵
 糸井 崇修
 伊藤 香世子
 医師になることを決意し、医学の道に足を踏み入れてはや三年。とは言っても、二年間は教養生として、ほかの学部の大学生と何の変わりもない生活をしてきたわけです。そんな私たちが専門生である三年生となり、月曜・火曜・水曜の週三日の解剖実習に臨んだのです。いよいよ解剖実習だという緊張感、こんな私でもちゃんとできるのかどうかという不安、周りの雰囲気からくる多少の恐怖など、複雑に絡み合った感情を持って臨んだ解剖実習最初の瞬間は、今でも忘れることができません。
 実際の解剖をやる前は、教科書の平面的な図を見ても立体的な位置関係がわからず、理解に苦しむことがほとんどでした。たとえ教科書に詳しく書いてあることであっても、実際に自分の目で見るのと見ないのとでは理解度がだいぶ違っていました。実物を見て初めてわかることの多さといったら……。日々驚きの連続で、医学生として充実した毎日でした。解剖を進めていくにつれ、少しずつ少しずつではありますが、人体のしくみについての知識がついていくのはとても嬉しいものでした。また、ほとんどすべての人間がほぼ同じつくりをしていて、その体のつくりの精密さにうまくできているものだなぁと、ただただ感心させられるばかりでした。そしてその中でも、ご遺体によって微妙につくりが異なっていて、さらに驚かされたことが何度あったかわかりません。人間をはじめとする生物が神秘的であるわけが少しわかったような気がしました。そして、自分たちの体も同じようになっているのかと思うと、なんとも言えない不思議な気持ちになりました。
 今回の解剖実習では、解剖の勉強だけではなく、人間の一生や生き方についてなど、いろいろなことを総合的に深く考えさせられました。そんなこともあり、私にとって医師になることを再び決意しなおした機会でもありました。
 今回得た解剖の知識は、献体してくださった方々のおかげであるということは言うまでもありません。自分が解剖させていただいた方の顔は、今でもすぐに思い浮かべることができますし、もちろんこれからも忘れることができるものではありません。心から感謝しているのですが、語彙が乏しい私には「感謝」の一言でしか言い表せません。医者になるにはまだまだ未熟で、これからもっともっと多くのことを学ばなければなりません。そのたびに、今回のようにたくさんの人々の協力を得なければやっていけないのだと思います。その方々のためにも、ご厚意を決して忘れずに常に感謝の気持ちをもって、人間的にも技術的にも立派な医師になりたいと思っています。








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