3.3 検査の現状
3.3.1 証書が揃っていない漁船が大量に存在
2000年の全国漁船調査で、漁業許可証、漁船登記証、漁船検査証(いわゆる「三証」)を全く持たない漁船(「三無」漁船)6.72万隻が発見された。これは、漁船総数の27.5%にあたり、合計すると総トン数で48万トン、出力は138.7万kWである。
更に「三証」が揃っていない漁船も漁船総数の20.8%にあたる5.09万隻発見された。これは、総トン数合計で105.8万、出力で247.7万kWである。
これらのいわゆる「三無」漁船と「三証が揃っていない」漁船の大部分は、船の長さが12メートル以下の小型船が8. 52万隻と証書に問題のあった漁船の総数の72.2%を占めている。このうちボート、いかだも1.56万隻あり、問題のあった小型漁船の総数の18.3%を占めている。
行政部門は各レベルで、「三無」漁船の取り締まりを強化しているが、「砂浜造船所」(後述)に対し、処罰の法律根拠がないため実施には困難である。
3.3.2 船名と証書の管理の混乱
漁船名と証書番号の重複問題は深刻である。複数の漁船が同名で同一証書または同一の証書番号を持っていることは珍しくない。
同名の漁船が14,222隻、船舶検査証書または証書番号が重複するものが21,332隻、漁船船舶登記証書または証書番号が重複するものが24,929隻、漁船作業許可証または証書番号が重複するものが23,236隻、漁船の「三証」が全てが重複するものが5,520隻、船名と「三証」が全て重複するものが3,186隻あると見られている。
3.3.3 海洋汚染設備の不備
1993年に公表された「漁船(河川用を除く)安全規則」は、漁船に対し明確に汚染防止規則を制定したが、多くの新たに建造された小型漁船(100トン以上の船を含む)は規定されている汚染防止設備を装備していない。
3.3.4 砂浜造船所の存在
国家品質技術監督局は、1988年工業製品生産許可証制度を実施する際には漁船を生産許可証リストにいれた。
農業部漁業船舶検査局は、1990年に国家品質技術監督局と農業部から漁船生産許可証管理機構として指定されて以来、多くの漁船製造許可証に関連する作業をこなし、約500社の漁船製造企業に許可証の審査と交付を実施した。
しかし、政府は、1993年103種類の生産許可証管理を撤廃する際に、漁船製造許可証も撤廃した。そのことが多くの「砂浜造船所」(でたらめな造船所)注)が登場する根本的な原因となった。
「三無」漁船の殆どは、「砂浜造船所」の製造したものである。
注)「砂浜造船所」とは、造船業者が利益を獲得するために、工場、組織、品質保証体系、完全な設備、設計図等資料のないままで、砂浜または道路の傍らで漁船をでたらめに建造する現象である。このような「砂浜造船所」が大量に存在しており、基本的には、工商営業許可証、漁船の建造と修理工場の認可、漁政部門に批准された製造許可証を持たず法定検査も受けない。海難事故の原因となり、資源・環境に対しても、深刻な破壊をもたらしている。
農業部によって実施する中国全国における漁船の建造・修理工場の認可制度も必要な法整備が欠けており、工場認可証書を申請しない造船所に対し、法律的対応ができないのが現状である。
出所: 「状況を把握したうえで業務を展開――農業部漁業局漁港監督処処長李彦亮は、初の漁船調査結果についてインタビュー」(中国船舶新聞、2001年3月23日)
3.4 今後の対応
3.4.1 「三無」漁船と「三証が揃っていない」漁船を徹底的に整理
農業部では、「新漁業法」の関連規定で、2001年中に「三無」漁船と「三証が揃っていない」漁船を徹底的に整理し、漁船の管理を強化し、海洋での漁を制限し、海洋漁業の持続的発展を促進することを決定した。期間は、2001年1月から10月31日までである。
同時に、農業部は、数回にわたり、全国で統一行動をとり、管理されていない「三無」漁船と「三証が揃っていない」漁船を厳しく取り締まる。各省、地区は、2001年12月末までに中華人民共和国漁政漁港監督管理局に整理の状況を報告しなければならない。
「砂浜造船所」も徹底的に取り締まられる。漁船の製造を国家生産許可証制度で管理し、規定に違反するものは、条例に従い処罰する。
漁船の製造・修理企業を投資・設立しようとする者は国家品質技術監督部門またはその権限を授けられた漁船検査部門に漁船の製造、修理の資格認可を申請しなければならない。工商行政管理部門は、資格認可を確認のうえ企業の登記を受け入れる。各レベルの漁政、船舶検査、漁港監督機構も厳しく法律を執行しなければならず、漁船を法律に従い管理する。
3.4.2 漁船廃棄義務化制度の検討
国家漁業局など政府関連部門は、漁船廃棄義務化に関する制度に対する研究を急ピッチで進めている。技術的監督管理を実施し、強制廃棄船齢に達した老朽漁船は、強制的に廃棄し、航行、漁業を永遠に禁止する。
中国では、1970〜80年代に国有漁船に対し減価償却率は制定され、鋼製漁船は、年に5%ずつ、木製漁船は、年に10%ずつ減価償却された。しかし、明確な漁船廃棄制度は規定されなかった。
海外では、船舶の強制廃棄の制度は既に長い歴史があり、漁業先進国では、漁業をコントロールするために、漁業と海洋漁業資源のバランスが崩れた時に漁船を買い取る方法をとっている。中国の漁業専門家は、先進国の事例を参考にして、中国自らの漁船買取制度を早期に実施し、漁業を本格的にコントロールし、漁業資源を保護することを呼びかけている。
中国漁船漁機業界第三回経済貿易商談会でも、生態系の環境と資源の保護、技術進歩の視点から、古い木製、鋼線網コンクリート漁船を廃棄、淘汰し、木製、鋼線網コンクリート漁船の建造を中止することは必然的な流れとされた。