日本財団 図書館


3 中国における漁船検査
3.1 中国漁船の検査と管理について
 「中華人民共和国漁業法」第三章第二十六条では、次のように規定している。「製造、更新改造、購入、輸入された漁をする船舶に対し、漁業船舶検査部門の検査に合格してから初めて本作業に入ることができる。・・・」
 「中華人民共和国漁港水域交通安全管理条例」第十三条では、次のように規定している。「漁業船舶では、船舶検査部門の検査に合格し、船舶技術証書を取得し、漁政漁港監督管理機関が発行する漁業船舶査証簿を取得してから、初めて漁業生産を従事できる。」
 管理作業の手順の際、漁船の法定検査は第一歩であり、漁船主、経営者は、漁船の全ての活動を始める前に、先ず漁船検査機関の法定検査を受けなければ、その他の管理機関の許可を得られない。
 現在の中国では、主に漁船検査、港湾監督、漁業政策、国防部門が漁船の管理に当たっている。一番重要なのは、漁船検査機構である。
 1979年、交通部と旧国家水産総局は、漁業船舶の安全管理を強化するために、農業部漁船検査局の各レベルの漁船検査機構に中国の漁船に対する検査を監督することを命じた。対外的には、「中華人民共和国船舶検査局漁船支局」の名義を使い、下に若干の執行機構と出張機構を設けた。国家、省、地方が統一的に管理し、各レベルごとに管理する漁船検査体制が既に確立されており、比較的完全な漁船検査機構体系が形成されている。
 「行政処罰法」、「漁業行政処罰手順」では、行政処罰を実施する機関が行政処罰主体資格を持たなければならないと規定している。職責区分と機構の設置から見れば、漁船検査、漁業政策、漁業監督部門は、行政法律を執行する資格を有する。漁船と漁民は、処罰の対象となる。
 法規作成は、漁船検査を展開する前提であり、中国全国の統一的な漁船検査機構が成立した後、一番最初に確立した作業方針も「法規の健全化」であった。その後20年以来、漁船検査関連法規は徐々に完全にされ、政府は、「漁業法」、「海上交通安全法」、「船舶と海上施設検査条例」、「中華人民共和国漁業船舶監督検査管理規定」などの法律法規を相次いで公表した。農業部漁業船舶検査局も一連の技術法規を制定すると共に国際条約における漁船安全研究を強化し、段階的に国内法規を「国際漁船安全条約」の基準に一致させることとし、「鋼製漁船建造規範」(1998年)と「漁業船舶法定検査規則」(2000年6月1日)を公表・実施した。
 強化プラスチック船の基準は漁船検査局が1995年に「ガラス繊維で補強するプラスチック漁船の建造規範」(1989年)を改訂している。この他、1996〜2000年の間に、16項目のFRP漁船の建造技術基準が公表されている。
3.2 行政管理部門、業界団体
 中国の漁船は、中華人民共和国農業部に管理され、漁業船舶検査局と農業部漁業局が具体的な管理業務責任をもっている。
3.2.1 中華人民共和国農業部漁業船舶検査局
設立: 1990年6月11日
機能: 漁業船舶の検査実施を管理する機関。中国籍漁業船舶の法定監督、検査作業を実施し、対外的には証書を交付する。
沿革:
☆ 1958年以前: 沿海の漁業発達地方(省)に交通部の中華人民共和国船舶検査局が管理する地方漁船管理所が設立される。
☆ 1958〜1965年: 漁船管理所の整備が進むと共に、漁船検査作業は漁業行政管理部門に引き渡される。
☆ 1979〜1990年: 「中華人民共和国船舶検査局漁業船舶分局」と改名し、全国漁船検査機構を管理。沿海各省、自治区、直轄市は、漁船管理所を漁業船舶分局検査処に改組し、漁業船舶分局の執行機構とする。同時に、漁船が比較的に集中している漁港に漁船検査所を設立し、各検査処の出張機構とする。
☆ 1990年〜現在: 「中華人民共和国漁業船舶検査局」と改名。
現在の機構分布:
省レベルの漁船検査局(処)  沿海11ヵ所、内陸8ヵ所
市・地方漁船検査局(処)   49ヵ所
漁船検査人員 900名以上
図10: 中華人民共和国漁業船舶検査局の組織一覧
z0001_22.jpg
図11: 中国漁船検査機関の組織構造
z0001_23.jpg
参考: 各地の代表的な機構:
  中華人民共和国漁業船舶検査局は、遼寧、河北、天津、山東、江蘇、上海、浙江、福建、広東、広西、海南、吉林、内モンゴル自治区、安徽、湖北、湖南、四川、江西等19ヵ所に省レベルの検査機構を設けている。
 
遼寧漁船検査局
沿革:
1965〜1972年: 船舶検査局大連事務室から独立、遼寧省漁業船舶管理所となる。
1972〜1978年: 遼寧省海洋漁業指揮部と合併、遼寧省漁業船舶管理所となる。
1978〜1980年: 遼寧省海洋漁業指揮部から分離。名称は変わらず。
1980〜1998年: 「中華人民共和国船舶検査局漁船分局大連検査処」が成立。
1998年9月: 「中華人民共和国遼寧漁船検査局」と改名。
2000年11月: 遼寧省人大が全国初の漁船検査地方法規である「遼寧省漁船監督検査条例」を公表。
 
定員と機構: 人員29名と建造処、運営処、製品処、綜合処、事務室などの部門。
所属機構: 大連漁船検査局、丹東、営口、盤錦、錦州、葫芦島漁船検査処と荘河、普店、瓦房店、長海、金州、旅順、甘井子、中山、開発区等9の漁船検査所。
機能: エンジン出力58.8kW以上の漁船の製造検査、147.1kW以上の漁船の検査。遠洋漁船、船用製品の検査、技術者の訓練、造船所・船修理所、設計業者の認可。
 
河北漁船検査局
1982年以前: 「河北省漁船検査管理所」と称す。
1982〜1996年: 「中華人民共和国船舶検査局漁船分局秦皇島検査処」を設立。下に北港、南排河という二つの検査所。
1996.2〜現在: 「中華人民共和国河北漁船検査局」と改名。
定員と機構: 船検査員89名、うち中級と高級船検査師1名、船検査師27名、助理船検査師30名等
所属機構: 唐山、南排河の2つの市レベルの処と沿海11ヵ所の県レベルの所。
 
天津漁船検査局
1974〜1979年: 「天津市漁船管理所」と称す。
1979年: 「中華人民共和国船舶検査局漁船分局天津検査処」と改名。
現在: 「天津漁船検査局」
定員と機構: 専門技術者13名。
所属機構: 塘沽、漢沽漁船検査処。
 
漁船検査局
機能: 漁業船舶・船用製品の法定監督・検査。44.1kW以上の漁業船舶の設計審査及び新規製造漁業船舶の製造検査等
省内各県(市、区)の漁船検査所による44.lkW以下の漁業船舶の監督検査業務の指導。
定員と機構: 100名、うち船舶技術者63名、高級技師25名、技師45名。県(市、区)の漁船検査所の専門人員合計600名以上
所属機構: 石島、青島、竜口、羊口の直轄支局、沿海各県(市、区)38ヵ所の漁船検査所。
 
江蘇漁船検査局
1972年: 南京に「江蘇省機関漁船管理所」を設立。
1979年: 南通に移転、「中華人民共和国船舶検査局漁船分局南通検査処」と改名。
1995年: 「中華人民共和国江蘇漁船検査局」と改名。
機能: 44.1kW以上の漁業船舶・船用製品の法定検査。関連機関に依頼された公証検査。設計審査。漁船修理・造船所に対する認可の審査。漁船検査人員と造船所の関連技術者の業務訓練。溶接工に対する訓練、試験、証書の交付。
44.1kW以下の漁業船舶の監督検査を実施する市県漁船検査機構の業務指導。
所属機構: 河、四、塩城、連雲港の支局。13ヵ所の市レベルの漁船検査処と48ヵ所の県レベル漁船検査所。
 
上海漁船検査局
設立: 1977年11月、上海業船検査所として設立。
部門: 局長室、事務室、総工程師室、規範課、船検査課
所属機構: 堡鎮分局と芦潮港分局。
定員と機構: 21人
1983年以来、「1993年鋼質漁船海洋安全規則」、「ガラス繊維補強プラスチック漁船製造規範」、「1998年鋼質漁船製造規範」と外国漁船規範の翻訳などを実施。
 
浙江漁船検査局
設立: 1973年、浙江省漁船管理処として設立。
定員と機構: 漁船検査人員331人、うち中高級船検査師7人、船検査師50人、助理船検査師60人、船検査員30人、その他の各種の専門技術者50人余り。
所属機構: 市漁船検査処(局)4、港県漁船検査所5、沿海県漁船検査所20、内陸県漁船検査所26。
「浙江省漁船修理、製造品質の監督管理方法」、「浙江省漁業補助船舶安全管理方法」と「浙江省小型木造漁船監督検査規定」など一連の規範性文書有り。
 
福建漁船検査局
設立: 1964年4月1日。
定員と機構: 船検査人員75人、うち主任船検査師2人、高級船検査師4人、船検査師、助理船検査師、船検査員51人。
所属機構: アモイ、しょう州、泉州、ふ田、平潭、囲頭、三沙の漁船検査処(局)と34ヵ所の漁船検査所
 
広東漁船検査局
設立: 1980年、漁船分局広州検査処として設立。
沿革: 1991年: 香港海事処と業務交流。1997年〜現在: 香港が大陸で製造した漁船を共同で検査。
部門: 船検査師事務室、人事秘書課、船体検査課と機械電気検査課。
機能: 漁業船舶に対する監督検査。漁船用の重要な製品、部品に対する監督検査。漁業船舶と船用製品の技術鑑定、公証、技術コンサル。「中華人民共和国漁業船舶監督検査管理規定」に従い、外国籍、香港、マカオ、台湾漁船の検査業務を実施。漁船設計資格の認証、漁船修理・製造所の認可。
定員と機構: 高級船検査師、主任船検査師、船検査師等65人。
所属機構: 汕頭、汕尾、惠州、珠海、江門、陽江、茂名、湛江等八つの検査支局。
 
広西漁船検査局
設立: 1978年、広西漁船管理所として設立。
部門: 製造・製品課、運営検査課、海務課、港口管理課、事務室。
定員と機構: 船検査人員22名、うち高級1名、中級13名、初級8名。
所属機構: 合浦、州、防城港漁船検査処と梧州、桂林、柳州、南寧、百色、貴港、桂平、河池等の内陸漁船検査機構。
 
海南漁船検査局
沿革:
1961〜1981年: 広東省水産庁白馬井漁輪監督所。
1982〜1989年: 中華人民共和国船舶検査局漁船分局白馬井検査所。
1989〜1997年: 中華人民共和国船舶検査局漁船分局海南検査処。
1997年〜現在: 中華人民共和国海南漁船検査局。
昨日: 沿海14の市(県)の13,000余りの漁業船舶と船用製品の検査、漁業船舶修理・製造所の監督管理作業を担当。
定員と機構: 船検査員30名以上。
所属機構: 漁船検査機構7、うち省局1、支局2、検査処2、検査所2。
他に分局1と検査所7の設立を準備中。
 
吉林漁船検査処
1991〜1994年: 吉林省漁政漁港監督管理所。
1994年〜現在: 吉林省漁船検査処。
定員と機構: 船検査師2名、助理船検査師13名、船検査員41名。
48の市、州、県(市)に機構を設立。
 
内モンゴル自治区漁船検査処
設立: 1997年1月。
処レベルの機構であり、検査課、事務室を設けている。
定員と機構: 13名、うち高級工程師2名、工程師2名。
6の盟(市)に漁船検査所を設立し、48名の専門、兼務船検査人員を有する。
 
安徽漁船検査処
設立: 1991年5月。
所属機構: 11の漁船検査所。
定員と機構: 全省に船検査128名、うち高級工程師7名、工程師16名。
 「安徽省漁業船舶管理暫定方法」(省政府公表)、「安徽省漁船検査費徴収方法」、「安徽省漁船用製品検査費徴収方法」などを制定・公表。
 
湖北漁船検査局
設立: 1989年。
1992年9月: 江西省水産局が検査港管理処を設立。
1992年9月: 農業部漁業船舶検査局が漁船(河川用を除く)検査資格を授与。
1996年: 省水産局に編入。
1998年5月: 農業部漁業船舶検査局の「中華人民共和国湖北漁船検査局」が正式に設立。定員と機構: 船検査人員は201名。船検査、港監督機構83。
 
湖南漁船検査処
設立: 1991年2月。
定員と機構: 検査人員50名。
所属機構: 岳陽、益陽、常?、衡陽、長沙、懐化、邵陽の直轄所。
 
四川漁船検査処
所属機構: 市(地、州)に18の漁船検査所を設立。
沿革:
1996年: 農業部漁船検査局の要求に従い、達川地区、内江市で船検査の試験業務を展開。
1997年: 州市、遂寧市、広元市、宜市等六つの市地に業務を拡大。
1998年: 綿陽市、眉山地区、資陽地区、巴中地区、広安市、凉山州合計12市(地、州)を追加。
「四川省郷鎮船舶と港の安全管理方法」、「四川省漁業船舶検査暫定規定」を公表。
 
江西漁船検査処
設立: 1987年、内陸水域最初の船検査機構。江西省農業庁に所属。
定員と機構: 船検査員121名。所レベル漁船監督検査機構24。
3.2.2 中華人民共和国農業部漁業局
 水産行政の管理部門であり、水産業に対する業界管理、水産管理を実施する政府部門である。所管は、次の通り。
☆ 漁業発展のための技術を研究し、漁業資源を保護し、合理的に開発、利用。
☆ 漁業に関する重大な渉外事項を処理し、国家の海洋と淡水管轄水域に係る漁業権益を守る。
☆ 漁業水域の生態系環境と水生野生動植物の保護を実施する。
☆ 水産製品の加工、流通を指導する。
☆ 漁船、漁労機械の建造規範と技術基準を制定し、その実施を監督する。
☆ 国際漁業条約と二国間、多国間の漁業協定の執行を監督し、国の代表として、漁船検査、漁業政策、漁港の監督管理権を行使する。
 1998年の機構改革後、漁業局の下に事務室、計画処、技術・基準処、漁業監督処、漁港監督処、資源・環境保護処、養殖処、水産製品加工・品質監督処、遠海水域漁業監督処、国際協力処という10の処室が設けられた。中国全国各地の各省、市(地)に対応する水産管理機構がある。
3.2.3 中華人民共和国海事局(交通部海事局)
 中華人民共和国海事局は、中華人民共和国港務監督局(交通部安全監督局)と中華人民共和国船舶検査局(交通部船舶検査局)が1998年に合併して設立されたもの。海事局は、交通部直属の機構で、法律の規定で、海事局は、水上の安全、船舶による汚染の防止、船舶と海上施設の検査、航海の保証・管理と法律の執行を実施。各地に省、市レベルの海事局。
3.2.4 全国漁船標準化技術委員会
 「中華人民共和国標準化法」と「全国専門標準化技術委員会定款」に従い、1990年3月設立、農業部が管理。標準化技術委員会の番号はTC157、対外コードはCSBTS/TC157で全国船舶標準化技術委員会の5作業委員会の1つ。(その他は、中国船舶工業総公司が管理する全国海洋輸送船舶標準化技術委員会、全国船舶設備標準化技術委員会、全国船用機械標準化技術委員会、交通部が管理する全国内陸河川船舶標準化技術委員会)
 委員会の任務は、国家標準化法に従い船舶業界の各標準を実施すると共に、漁船の特徴に配慮した漁船標準化の方針、政策、具体的な技術的措置を検討し、漁船の標準についての長期計画、年度計画と任務に関する建議を制定することである。漁船標準化に関する国家基準と業界基準を制定、改訂、審査し、漁船基準に関する情報交換と技術研修を実施する。
 委員会には、主任委員一人、副主任委員二人をおき、中国水産科学研究院漁船設計室に秘書所を置く。委員会には、船体グループ、舶用機関グループ、舶用電気グループという三つの専門グループがあり、科学技術、生産、教育の分野で、各社の専門技術者が標準化に積極的に取り組むとともに、漁船の標準化に対する審査を実施する。更に、他の船舶専門標準化組織と協力し、船舶標準化に関する方針、政策、計画の調整・連絡などの業務を実施する。
3.2.5 国家漁業機械計器品質監督検査測定センター
 1988年9月設立。中国水産科学院漁業機械計器研究所に置かれている。国家技術監督局に権限を授けられた漁業に関する機械・計器に関し法定的な第三者としての公証的地位をもつ専門的な検査測定機構である。国家技術監督局と農業部が管理している。
3.2.6 農業部漁労用具・漁労用具材料製品品質監督検査測定センター
 1992年1月に設立。中国水産科学研究院東海水産研究所におかれている。農業部に権限を授けられた法定的な第三者としての公証的地位をもつ漁労器具に関する専門的な品質検査機構である。品質標準司と漁業局が管理している。
3.2.7 中国漁船漁機業界協会
 国内の漁船、漁船機械・計器メーカー、研究機関、関連大学、販売会社などが自発的に設立した業界、地域に制限されない非営利団体である。
 中国水産科学研究院漁業機械計器研究所にある。
 農業部の指導の下で、1985年から全国幾つかの主要漁業機械企業と機関が共同で設立を準備、1986年9月27日上海で設立された。1987年3月、農牧漁業部が〔1987〕農(漁)函字第033号文書で協会を批准、1992年5月5日、国家民政部の承認により「中国漁船漁機業界協会」に名称変更された。
3.2.8 中国漁船船主相互保護協会
 1994年9月に設立された。相互扶助により会員の生命財産の損失に対し物的保障を提供することを基本に、会員に作業の安全に関するサービスを提供する。漁船の船主が自発的に設立した非営利団体であり、農業部の業務指導と民政部の監督管理を受けている。








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION