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2.5 まとめ
 政府の造船政策については、つぎのようにまとめることができる。
 
◆ 1991年以前、ユーゴスラビア政府の政策は、造船業を強く支援するものであったが、1980年代の経済問題及び国内造船所への投資の欠如から、後々大きな問題を残すこととなった。
 
◆ 内戦は、外国船主からの発注を激減させ、クロアチア造船業に重大な損害をもたらした。
 
◆ 内戦から必然的に生じた問題とその余波はさておいても、1992〜99年にかけて、政府は困難に直面する造船業支援のための政策を含め大胆さを欠くものであった。独立から5年の間、クロアチア造船業は国際市場で失った地位を回復することができなかった。遅々とした経済改革の進行が非効率を招き、造船業が市況の回復に乗ることを妨げた。注30 赤字が続き、1998年にはクロアチアの5大造船所は一つに合併すべきとの提案がなされたが、実現されるには至らなかった。1990年代を通じたクロアチアの脆弱な経済状態が民営化の遅延に与えた影響は大きい。政府は、経済の回復支援のため、国有企業売却の収入に一部依存していたが、これが実現することはなかった。売却された企業の多くは、流動資本の流入をもたらすであろう海外資本による取得ではなく、経営陣と労働者による買取であった。
 
◆ 2000年1月以降、政府の政策は再び活況を呈し、構造改革や民営化計画に新たな弾みをもたらすと見られる。現在のところ、大きな進捗があるように見うけられる。経済省によれば、2001年3月、クロアチアの新造造船所の民営化を図る特定企業再建法が準備されており、4、5月までに外国コンサルタントに委託して再建計画の策定の準備が行われ、6月には経済省が外国銀行と協力して再建計画を策定の予定となっている。








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