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4.2 地上システム
 地上システムの構成概要を図17に示す。地上システムは、衛星飛行管制並びに搭載センサ機器制御のための衛星管制局、観測データを受信する地上受信局、通常は受信局に隣接し、受信データを処理し画像化するとともに、船舶を探知・識別・追尾し時々刻々の当該船舶位置を計測・予測する衛星画像受信解析センターから構成される。衛星管制局は衛星の軌道保持等、極めて重要な任務であり、衛星を喪失しないためにも衛星の緻密な管理が可能な国内に設置する必要がある。衛星軌道傾斜角が10度〜20度と通常の観測衛星に比べて低いことから、衛星が見通し得る可視時間が多くとれる沖縄など、できるだけ南方に設置するのが望ましい。
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図17 地上システム構成概要
 同様の理由から受信局も赤道に近い場所が望ましく、当該任務が東南アジア諸国との協力のもとに実施されるべきことを考えると、衛星画像実利用で実績をあげつつあるタイ、シンガポールなどでの設置が可能となれば、南・北緯20度の端まで衛星を可視することが可能となり、観測頻度を極大化する上で大変望ましい。
 
 解析センターで得られた船舶情報は通常の地上回線によるインターネットでユーザである沿岸国のコーストガード、海賊センター、船舶運航会社等に提供され、当該船舶の追跡と衛星画像による積荷状況確認が可能となる。衛星画像受信解析センター及び関連施設のイメージを図18に示す。
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図18 衛星画像受信解析センター等イメージ図
  図18において、衛星画像解析センターは汎用のワークステーション、操作者端末となるパーソナルコンピュータなどからなり、使用するソフトウェアは衛星画像処理用パーケージソフトをベースに船舶探知・識別ソフトウェア機能を付与、カスタマイズしたもの、またデータベース管理ソフトウェアなどにより構成される。撮像画像や解析結果画像などは大画面表示装置にも表示することができ、関係者による総合的な監視・判断・指示が可能である。
 衛星管制局は口径約10mの追尾アンテナ、衛星管制プログラミング装置、衛星運行状態監視装置、送受信装置など専用装置から構成される。地上受信局は近年の受信装置の高感度化により口径5〜6mの小型追尾アンテナ、受信装置、プログラマブル同期復調装置、受信画像データのハードディスクダイレクト記録装置、磁気テープ記録保存装置など、カタログ化された製品をベースに構成することが可能である。
 
 これらの構成の中においては、特に船舶判別のためのデータベース構築が今後重要となる。これは顧客船舶が観測した衛星画像中のどの船舶に相当するかを判別する必要があり、広範囲の監視海域中の多くの船舶画像を短時間に処理する必要から、半自動的に識別することが要求される。
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図19 船舶識別における見本画像データベースの作成
 図19は現在行われている方法の一例を示す。顧客船舶は登録時に図面など諸元がわかっているので、これを元に一般の設計などで行われているCADツールを用いて図に示すようなワイヤフレーム図(構造を3次元的に線画で示したもの)を作成する。こうして表現された3次元構造を合成開口レーダシミュレータと称する特殊なシミュレータに入力することにより、レーダの結像過程をマイクロ波工学的に模擬計算し、実際の合成開口レーダ画像に相当する見本画像を生成することができる。図はタンカーのワイヤフレームをもとに作成したシミュレーション見本画像(図中左下)を示している。このシミュレーションは3次元的に行われるので、船舶画像を回転し、種々の方向からの見え方を確かめることができる。これと実際に撮像された衛星画像(図中右上)とを比較し、構造上の特徴が見本画像でほぼ正しく表現されていれば、これを識別のためのデータベースに登録する。現実には構造細部における特殊な反射現象などのために、若干部分的に相違する場合がある。このようなケースにおいてはワイヤフレーム上の構造を、例えば凹面状の構造をより現実に近い形に修正することにより、シミュレーション画像をより実画像に近いものとし、十分な近似が得られたところでデータベースに登録する。これらデータベース中の画像は、船長、船幅、明暗部の位置など画像上の特徴量を数値化して同時に登録し、観測画像中の船舶について得られる同様な特徴量と比較することにより、類似度の高い見本画像を自動的に呼び出すことが可能となる。少数に絞りこまれた複数候補船舶の見本画像が自動的に画面に表示されるので、航行中の船舶の運航期間、運行海域などログデータを呼び出し、マッチングをとることにより、観測画像中の船舶ともっとも類似度が高い船舶を半自動的に判別・選定することが可能となる。








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