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世界の港湾交通のハイライト
 2000年10月にInstitute of Shipping Economics and Logistics(ISL)から発行された年鑑によると、1999年は極東アジア地域の回復の年と位置づけられている。日本の各港を除くこの地域の港の大半は各々1996年の取扱量を回復した。極東の主要20港について調査した結果、日本以外の全ての港が平均9.1%の成長を見せた。これに対して日本の各港が依然として1996年の取扱量よりも約14%減の状態にあるのは特筆に値する。この期間、その他の地域はアフリカで4.9%、オセアニアで2.9%、南北アメリカで2.8%、欧州で2.6%と堅調な伸びを示している。6
 最も変化が大きかった港を図3に示したが、ほとんどがアジアまたは北米に集注している。ISL Port Databaseで最も急成長しているクラン港の貨物取扱量は1995年の4千万トンから1999年の6千100万トンへと、急速に増加している。北米ではロサンジェルスがコンテナの取り扱い能力を350万TEU(1998年)から440万TEU(1999年)に強化した。一方、1995年から1999年の間に石炭輸出量が40%減少したバージニア港を例外とすれば、貨物取り扱いの大幅な減少に苦しんでいるのは日本の港で、同国経済の置かれている厳しい現状を見事に反映している。7
 
図3 : 最も急速に成長または衰退した港(1995〜1999)
港名 平均成長率
(1995〜1999)
港名 平均成長率
(1995〜1999)
クラン港 11.1 大阪 -8.5
ロサンジェルス 9.0 バージニア港 -6.8
高雄 8.2 横浜 -3.4
ヒューストン 6.7 神戸 -2.5
台中 6.6 名古屋 -1.7
        情報提供 : ISL Port Database 2000
 
 1998年のアジア経済危機にも関わらず、コンテナ取扱量のダイナミズムはほとんど影響を受けていない。極東の主要コンテナハブ15港(日本の港を除く)におけるコンテナ取扱量は1996年と比較して32.8%増加し、欧州(30.9%)および北米(30.1%)を再び抜き返した。
 
 図4に示すとおり、コンテナ貨物は今日も重要性を増し続けている。コンテナ化の度合い(コンテナ輸送される一般貨物の割合)は北米および極東の一部の港で100%に到達しようとしており、少なくとも解析の対象となっている巨大ハブ港については、コンテナへの移行がすでに完了しつつあることを示している。8
 
図4 : 一部の港におけるコンテナ化の進行状況(一般貨物に占める割合)
港名 1993 1999
シンガポール 89.1 93.6
香港 80.4 85.7
ロングビーチ 94.2 96.9
ブサンBusan 85.3 97.6
ロッテルダム 67.3 74.1
アントワープ 43.4 65.4
ハンブルグ 81.4 91.7
オークランド 91.7 98.6
ブレーメン各港 67.2 81.0
        情報提供 : ISL Port Database 2000
 地域市場の統合のトレンドは世界的にすでに定着している。NAFTA、ASEAN、EUなど多国間協定に基づいて地域貿易が活性化されている場合には、この傾向はよりいっそう顕著である。市場の統合はその各地域(つまり東南アジア、欧州、北米)がそれぞれ一つの統合市場として機能することを意味しており、船主にとっては領域内共通の流通戦略を構築できる可能性が視野に入ってくる。各地域の主要港はこうした流通ハブへと成長している。したがって、コンテナ貿易の主要な集配センターは取扱量の面だけでなく、流通手段の調達にも重要性を増している。9
 
 グローバル規模の主要港からローカル港への貨物の再分配を考えたとき、領域内貿易はさらに重要になってくる。これはアジアの港について特に言えることである。アジアの全港の取扱量の50%以上がアジア各国間での貿易に向けられているが、横浜、東京、香港の3港で70%以上のシェアを占めている。ちなみに欧州のハブ港ではルアーブル - ロッテルダム間の地域が通常40%〜50%のシェアを握っている。10
 北米の物流は地理的条件に大きく依存している(西海岸では対アジア、東海岸では対欧州)。これに対して欧州北部の各港の分業化は「長年の取引関係および貨物ニッチを巡る各港間の熾烈な競争の結果」としか説明のしようがない。結果としてロッテルダムの大陸間輸送は対アジアに、ハンブルグは対アメリカ、ルアーブルは対アフリカにそれぞれ集注している。一方、地理的利点によりマルセイユ、ジェノバなど地中海各港は対アフリカ貿易に傾倒している。11








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