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世界貿易の発展
 海上貿易および世界の港湾交通は、常に世界貿易の発展を反映してきた。したがって、海上貿易の発展について解析を進める前に、グローバルな発展のパターンにまず目を向けてみることが大切であろう。世界貿易機構(WTO)発行のInernational Trade Statistics 2000によれば、2000年の最初の6ヶ月間のデータとして、全世界の商品取引は金額で14%の伸びを示した。これは1999年の4倍である。また、商品取引量は12%成長した。2000年の全世界の商品輸出の実質成長率は10%を超過すると予測されている。
 
 発展の鍵になる点を以下に示す。
 
貿易ハイライト(地域別)
 
・ 1999年〜2000年にかけて全世界の貿易総額(商品および商業サービスサービス)の半分以上に関与してきた北米は、今後もグローバル経済の原動力であり続ける。さらに全世界の輸入の1/5以上が北米で発生している。なお、北米の輸出の約40%は北米大陸内での取引によるものである。
 
・ 西欧に関する専門家の見方は分かれているが、全体の基調として成長が鈍化しているという一点では一致を見ている。欧州内での貿易が活性化していないことが主な要因として挙げられている。1999年には北米向けの船舶輸送は11.5%増加した。トランジット貿易は10%下落し、中南米、アフリカ、および中近東向けは6〜7%同様に落ち込みを示した。また西欧発アジア向けの輸出は2%と、緩やかな上昇を示した。発展途上国向けの輸出が引き続き縮小したことにより、日本および中国向けの2桁の伸びが帳消しになった形である。
 
・ 1998年はドル建て取引が大幅縮小したのに対し、アジアの商品および商業サービス貿易は1999〜2000年にかけて飛躍的に拡大し、再び世界平均を上回るところまで回復した。域内貿易および為替レートの改善、必需品価格の上昇、情報製品への世界的な需要が堅調であったことなどが1999年および2000年のアジアの貿易拡大の主な要因である。
 
・ アフリカの商品輸出の約半分は西欧向けである。また、アフリカの輸出先としてアジアがその重要性を増している(アフリカの総輸出の15%を占める)。アフリカの鉱物製品に対するアジアの発展途上各国のニーズ -- 特に燃料需要 -- が高まっている。なお北米向けは、アフリカの総輸出の約15%である。アフリカ大陸内での国際貿易は、アフリカの総輸出の10%にしか達していない。
 
・ 中南米の商品取引には大きな偏りが見られる。中南米の商品取引総額の45%はメキシコ一国に依っている。ブラジルと合わせた値は60%に達し、チリ、アルゼンチン、コロンビアを含めた上位5ヶ国で商品の輸出入総額の75%以上を取り扱っている。2
 
貿易ハイライト(製品別)
 
・ 全世界の衣料品の輸入の4/5は西欧、北米、および日本で占められている。
 
・ 自動車関連製品では、北米が世界最大のネット輸入地域であり、アジアが世界最大のネット輸出地域である。一方、西欧は最大の輸出入領域としての地位を維持している。西欧の自動車関連製品輸出の4/5は欧州域内貿易である。
 
・ オフィス用品および電話通信機器の世界輸出の半分近くはアジア発である。アジアの発展途上国は世界の輸出の1/3を担っているばかりでなく、加工貿易による取引が大幅に加速された結果、輸入の面でも全世界の1/4を担うに至っている。
・ 輸出による利益の1/2以上を燃料の輸出に頼っている25ヶ国のうち、10ヶ国が中近東に位置している。中近東からの輸出は全世界の燃料輸出の30%近くに達している。3
海上貿易の発展
 世界貿易の発展を反映して、1999年に絶対額で14年連続の増加を記録した世界の海上貿易は、最高記録を更新して52億3千万トンに達した。国連貿易開発会議(UNCTAD : United Nations Conference on Trade and Development)の Maritime Transport 2000レポートにより明らかになった数値である。UNCTADは、米国の安定した需要およびアジア地域の回復が1999年〜2000年のグローバル貿易拡大の原動力であり、世界の海上貿易の持続的成長を下支えしたと解説している。同レポートではさらに、以下のようなハイライト項目について指摘している。
 
貿易ハイライト(地域別)
 
・ アジア各国(中近東を含む)は積込量で最大シェアを維持した。原油の45%、石油製品の40%、ドライカーゴの15%が域内で生産され、積み出されている。
 
・ 過去30年間、中南米の発展途上国における製品の荷積み量は15%前後で比較的安定している。荷降ろし量も比較的安定しており、全世界の総量の約5%前後で推移している。唯一顕著な構造的変化は、全世界の原油積み込み量における同領域のシェアが10年前の10%の値から20%近くまで上昇したことである。
 
・ アフリカの発展途上国で積み込まれる製品は1970年代に大幅に減少し、1980年以来低調な状態が続いていた。荷降ろし量は全世界の海上貿易の7%と、依然低迷を続けている。
 
・ 全世界の荷積みおよび荷下ろしの総量に占める先進諸国(米国、カナダ、西ヨーロッパ、日本)の割合は、それぞれ45%および65%である。この値は1970〜1980年代に大幅な伸びを示したのに比べ、1990年代に入って比較的安定している。4
 
貿易ハイライト(製品別)
 
・ 世界最大の原油市場である米国は、中南米産の原油の最大の市場として、中南米の荷積みの約90%を将来に渡って引き受けると予測されている。日本が消費する原油の80%は中近東湾岸地域から供給されている。南北ヨーロッパの原油輸入における欧州域外の産油国のシェアは減少を続けている。また、中国およびインドは今後、原油調達先を中近東湾岸地域に移行させて行くものと予測される。
 
・ 石油製品の最大の海上輸出地域は極東アジアである。極東NIEs(新興工業経済地域)は石油製品の主要サプライヤーであると同時に、主要消費国でもある。そしてこれらの国の石油製品の輸入の約半量はNIEs内での相互間の船積みである。米国内における需要の増加分は、中南米および欧州からの輸入でほぼまかなうことが可能である。
 
・ 鉄鉱石の船積みについては、グローバルレベルでは3/4以上が2大輸出国であるオーストラリアおよびブラジルから発生している。オーストラリアの輸出の80%以上はアジア市場向けであるのに対し、ブラジルの輸出は45%がヨーロッパ、40%がアジア向けである。
 
・ 石炭の海上輸出の1/3はオーストラリアで発生している。オーストラリア産の石炭輸出の1/2は日本向けである。海上輸出の第2位は南アフリカで、全世界の総量の10〜12%を占めている。石炭の輸入では、世界全体の50%が日本向けである。
 
・ 米国は世界の穀物の海上輸出の50%を取り扱っており、第2位カナダ(15%)、第3位オーストラリア(8〜10%)となっている。輸入部門では日本が35%で首位、極東NIEs(25%)、中近東(20%)がこれに続く。
 
・ コンテナ貨物の分野では、欧州の輸入の40%は北米および中南米発である。一方、極東NIEsおよび日本は欧州の輸入総量の35%を構成している。米国は欧州の輸出の約40%を引き受けている一方、欧州の輸出の約30%はアジア向けとなっている。日本の総輸出の45%は日本からアジア各国への輸出で占められている。5
 海上貿易の総量は、トン数ベースでは依然として撒荷(バルク)貿易が主体である。バルク貿易が専門の有力コンサルティング会社Fearnleysの調査によれば、バルク貿易のほぼ60%は主要5種類の物資に占められている。すなわち原油、石油製品、石炭、鉄鉱石、および穀物がそれらである(図1参照)。
 
図1 : 全世界の海上貿易の内訳(トン数)
物資品目 世界の総トン数におけるシェア (1999)
原油 30
石油製品 8
鉄鉱石 8
石炭 9
穀物 4
その他の貨物 * 41
合計 100
* その他の貨物には車両、液化ガス、化学薬品、コンテナ、およびその他一般貨物が含まれる。
情報提供 : Feanleys Review、各号より抜粋
 
 積荷の金額ベースでは、コンテナ貨物が全世界の貿易額の約60%を占めており、一般貨物の市場への浸透が進むに連れ、この割合は今後より一層大きくなるものと予測されている(図2参照)。
 
図2 : 世界貿易(一般貨物)のコンテナ化(単位 : 100万トン)
  1980 1985 1990 1995 2000 (予測)
一般貨物 527 552 720 800  
コンテナ貨物 120 172 269 360 440
コンテナ化比率 23% 31% 40% 50% 55%
         情報提供 : Drewry Shipping consultants
 
 この発展の興味深い点を以下に述べる。すなわち原油は戦略的物資であり、したがって金額的にも大きなシェアを占めていると一般的に信じられていた。しかし、海上貿易の構造を調査すると、原油、石炭、穀物といった低価値の物資はトン数で第1位のシェアを占めているものの、通信機器、コンピュータ部品、自動車部品等、高価値の物品を取り扱うコンテナ輸送が金額的には海上貿易のシェア第1位を占めていることが分かる。








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