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3 わが国周辺海域におけるHNS輸送船舶の航行実態について
3.1 調査方法
 現在、わが国には、HNS輸送船舶の航行実態に関し、港湾統計等の資料は存在するものの、これらの資料は利用目的が異なるため、わが国周辺海域における通航状況を把握するには十分なものではない。
 そこで、本調査では基礎データをLMIS社*1 (Lloyd's Maritime Information Service Ltd.)から入手し、これらを元に新たなデータベースを作成し解析を行った。
*1) LMIS社は、ロイズ船級協会(Lloyd's Register of Shipping)及びLLP Ltd. を親会社として、1986年に設立された。 LMIS社は、これら親会社の所有するデータベースを、ニーズに応じて提供している。
3.1.1 基礎データの収集
 収集した基礎データは、「動静データ」、「船舶データ」及び「港データ」の3つのデータから構成されている。
 
(1) 動静データ
 動静データは、世界各国にある1,800のロイズエージェント(LLP Ltd.*2に密接な関係を持つ代理店組織)から日々報告されたものの中から、下記の調査対象にあわせ抽出したデータである。
*2) LLP Ltd.社は、ロイズ保険組合の「Lloyd's of London Press」の発行部門がロイズ保険組合と資本を別にして発足した会社で、現在Lloyd's List等の出版物を扱っている。
調査対象港:
[1]ユーラシア大陸のベトナム及びベトナム以北の中国、香港、マカオ、韓国、北朝鮮及びロシアの還太平洋地域の諸港。
[2]日本、台湾及び北緯12度以北のフィリピンの諸港。
[3]北米大陸及び南米大陸の西海岸(米国アラスカからチリ)の諸港。
[4]米国ハワイ諸島の諸港。
調査対象期間:
 1997年1月1日〜同年12月31日に上記諸港に寄港した報告
調査対象船舶:
 500G/T以上の外航船
<データの内容>
 ・ 船名(船舶番号)
 ・ 寄港地/寄港開始日/寄港終了日
 ・ 前寄港地
 ・ 次寄港地
 
(2) 船舶データ
 船舶データは、前記動静データに使用された船舶の諸要目をLMIS社の親会社が所有するデータベースの中から抽出したデータである。
<データの内容>
 ・ 船名
 ・ 船籍国
 ・ 建造年
 ・ 総トン数
 ・ 載貨重量トン数
 ・ 船種
 
(3) 港データ
 港データは、LMIS社の親会社が所有する港のデータベースの中から、前記動静データに使用された港のデータを抽出したものである。
<データの内容>
 ・ 港名
 ・ 位置(緯度、経度)
 ・ 所属国
 
 なお、日本周辺海域とは、日本海(タタール湾を含む。)、黄海、渤海湾、東シナ海、北緯48度以南のオホーツク海、北緯48度、北緯17度、東経120度、東経152度30分の各線と陸岸で囲まれる太平洋、南シナ海、台湾海峡及びルソン海峡とした。
 日本周辺海域の境界線を図 3.1-1に示す。
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図 3.1-1: 日本周辺海域の境界線
3.1.2 統合動静データベースの作成
 前述の基礎データから、解析に使用する統合データベースを作成した。
 図 3.1-2にデータ処理のフローを示す。
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図 3.1-2: データ処理フロー
(1) 全世界を図 3.1-3に、日本を図 3.1-4に示すゾーンに区分し、この区分に従い港データとゾーンデータをリンクさせたうえで、さらに動静データとリンクさせた。
 
(2) (1)で港データ及びゾーンデータとリンクした動静データからODデータを作成した(1つの動静データから「前寄港地→寄港地」及び「寄港地→次寄港地」の2つのODデータが作成された)。
作成ODデータ: 614,980個
 
(3) ODデータが重複することを避けるため、次寄港地が調査対象港であるODデータを除外した。 すなわち、ある船舶がA港からB港に航海した場合、A港で報告される基礎データから抽出された「寄港地→次寄港地」のODデータとB港で報告される「前寄港地→寄港地」のODデータが重複したこととなる。このため次寄港地が調査対象港である場合は、そのODデータを除外した。
除外データ: 256,296個
 
(4) 調査対象期間内の船舶動静データを抽出するため、そのODデータの日付として「前寄港地→寄港地」のデータは寄港地の寄港開始日を、「寄港地→次寄港地」のデータは寄港終了日を使用した。この日付をもとに、1997年1月1日〜同年12月31日に対象港に寄港した船舶のODデータのうち、調査対象期間外の動静となるODデータを除外した。
除外データ: 5,859個
 
(5) 前寄港地・次寄港地が不明・不確定であるODデータを除外した。
除外データ: 27,457個
 
(6) 東京湾、伊勢湾、大阪湾/瀬戸内海等の内水内の港間航行を除外した。
除外データ: 14,501個
 
(7) 日本周辺海域を航行しないと判断されるODデータを除外した。
除外データ: 100,087個
 
(8) 以上の手順により統合動静データベースを作成した。
統合動静データ全個数: 210,780個
 
 なお、1997年の港湾統計年報による500GT以上の外航商船入港隻数は105,404隻(5GT以上〜500GT未満は14,573隻)であり、本調査に使用した500GT以上の外航船の日本諸港への寄港隻数99,410隻のうち、漁船、作業船、調査船及び巡視船等を除く商船の寄港隻数は98,587隻と、前記入港隻数に対して93.5%である。状況を解析するためのデータ数としては、これで十分であるものと思われる。
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図 3.1-3: 港ゾーン区分図[1](全世界)
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図 3.1-4: 港ゾーン区分図[2](日本)








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