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3.5 外国製衛星イパーブ等の性能比較
 平成12年度の小型船用衛星イパーブの検討では、国内、海外製の衛星イパーブと小型船用衛星イパーブ並びに海外製のPLBの例について、外形寸法の比較を実施した。また合わせて比較を行なった海外製の衛星イパーブとPLBを入手出来たので、今年度はこれらの製品についての性能確認を行なった。なお、各機器の性能試験はシールドルーム内での試験のみとした。
3.5.1 各製品の比較
 表3.5.1に各々の比較を示す。
表3.5.1外国製衛星イパーブ等の性能比較
  製品A 製品B 製品C
機器分類 PLB EPIRB EPIRB
外形寸法 (mm) 70W×34D×156H 115W×105D×210H 115W×105D×210H
重  量 (g) 320 770 770
使用電池 塩化チオニール・リチウム
単2×3本
二酸化マンガン・リチウム
単2×3本
二酸化マンガン・リチウム
単2×3本
動作時間 (H) 24 48 48
自動離脱装置 なし あり あり
水センサー なし あり あり
ホーミング信号 なし 121.5MHz 121.5MHz
表 示 灯 なし あり あり
位置情報 なし あり(GPS内臓) あり(GPS内臓)
406MHz 発振器 OCXO
(ユーロウェーブ製)
10.150625MHz 源振
OCXO
(ユーロウェーブ製)
12.688375MHz 源振
OCXO
(ユーロウェーブ製)
12.688375MHz 源振
中期安定度
(国内試験法で測定)
(規格1×10-9以下)
2.04×10-9 0.81×10-9 0.86×10-9
中期安定度
(コスパス試験法で測定)
(規格1×10-9以下)
1.33×10-9


(常温でのデータ)
0.30×10-9


(常温でのデータ)
0.43×10-9


(常温でのデータ)
MMSI サンプル購入のため、各機ともシリアル番号を書込み
3.5.2 考 察
 衛星イパーブの小型化、低価格化についてのキーポイントは、位置精度の性能を左右する周波数安定度を確保する発振器の性能であることから、今回の性能確認では、中期周波数安定度についての試験を中心に実施した。
 なお、各機とも、その他の機能・電気的性能とも各社の仕様を満たしている事の確認はされた。以下に各機の性能について考察する。
 
(1) 製品A
 本製品は、昨年の報告で、現在の性能基準で設計した場合に国内メーカでも製品化が可能な外形寸法であるとした機器で、海外においても小型の部類に属し、主にPLBとしての使用を目的としている。
 構造は、筐体をシリコン接着剤で接着することで、水密性を保つ方法を取り入れているため、電池交換や内部の修理点検は極めて困難であり、使い捨てを想定した製品の可能性がある。また、水密性はあるが浮揚性はなく、浮揚させるためには、別売りの収容袋が必要である。
 性能比較で判るように、周波数安定度の試験において、国内の試験法及びコスパスサーサットで規定の測定法でも規格を満足していなかった。これは、入手した機器の問題かも知れないが、これだけ規格から逸脱していると、測位精度に影響が生じると考えられる。なお、海外の検定では、多少周波数安定度が外れていても実際の動作(遭難通報動作)確認で救助への支障がなければ問題なし、とされる場合があるとのコメントがあった。
 
(2) 製品B
 本製品は、コスパスサーサットの技術基準並びにIMOの性能要件に完全に合致し、条約船に装備される設備で、同性能機器の中でも小型の製品である。
 EPIRB本体はコンテナ内の自動離脱装置に取り付けてあり、水圧を検出するとコンテナから自動的に離脱し浮上する構造となっている。しかし、構造的にコンテナへのEPIRB本体の収納に安定感がなく、コンテナ内部で本体が外れ易い。このため、自動離脱装置は水圧を感知することにより、バネで離脱させる方法となっているが、本体が正しく収納されていない場合に離脱するかの心配が残る。
 電池交換は、上蓋を取外した後、プリント基板や水検知センサーなど全てのユニットを分解・取外し行う構造であり、作業は簡単であるが手間がかかる。
 なお、電気的性能については、周波数安定度を含め問題が無い事は確認した。
 本製品はGPSの内蔵が特徴であるが、今回フィールドでの試験が出来なかったので、GPSによる位置とEPIRBによる位置の相関に関するデータの検証は行なえなかった。
 
(3) 製品C
 本製品の本体は(2)と同じ製品であるが、自動離脱装置が無く、架台による取付けであり、性能的には十分すぎるが、国内での小型船用衛星EPIRBとしての装備に適した機器と考えられる。従って本製品の考察は(2)と同じであるが、本製品は架台への取付けであるため、取付け・動作設定後の誤発射防止は水センサーの動作のみに依存することとなるため、海水を被ったり、雨などによる誤発射の心配が考えられる。








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