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第3章 調査研究の実施
 
3.1 小型船舶海難の状況
 
3.1.1 概況
 
 平成11年の要救助海難(台風及び異常気象下のものを除く)の状況は、合計は1,844隻で、そのうちプレジャーボート等(遊漁船を含む)が783隻(42.5%)、漁船が671隻(36.4%)、以下貨物船(8.9%)、その他(8.8%)、タンカー(1.8%)、旅客船(1.6%)となっており、プレジャーボート等と漁船の両者で約8割(79.3%)を占めている。
 また、これら海難に伴った乗船者の死亡・行方不明者の状況は、合計146人で、そのうち漁船が101人(69.2%)と突出して多く、以下プレジャーボート等が21人(14.4%)、貨物船(12.3%)、その他(2.7%)となっており、漁船とプレジャーボート等の2者で83.6%もの多くを占めている。
(注:「その他」は、曳船、台船、作業船など)
 平成11年における海中転落者についてみると、事故者215人、死亡・行方不明者169人である。
 死亡・行方不明者については、そのうち漁船におけるものが107人(63.3%)と突出して多く、プレジャーボート等が23人(13.6%)、旅客船(8.9%)となっており、漁船及びプレジャーボート等の2者で76.9%を占めている。
 なお、漁船、プレジャーボート等の死亡・行方不明者については、海中転落に伴うもの169人に比べ船舶海難に伴うものが122人と、前者が多いことに注目すべきである。
 一方、非GMDSS船の大半を占めるのは小型の漁船及びプレジャーボート等である。
 小型船舶の緊急時における通信連絡手段の検討を行うに当たっては、通信可能距離との関係でこれら小型船舶の海難の状況(特に海難発生の陸からの距離)を把握することが必要であり、以下この2者についての分析を行うこととする。
 分析資料は、船舶海難については要救助海難統計(1990年〜1999年の10年間)、海中転落については船舶海難によらない乗船者の人身事故統計(1993年〜1999年の7年間)による。
 なお、これらの海難資料からは、GMDSS船、非GMDSS船の仕分けはできないが、漁船及びプレジャーボート等ではGMDSS装備対象となる比較的中大型や沖合航行、沖合操業の船舶は極めて少ないので、分析結果は非GMDSS船の海難実態と殆ど同じと思われる。
 
3.1.2 船舶海難の状況
 
(1) 漁船
 
 20トン未満の漁船(以下「小型漁船」という。)について分析を行った。(表3.1.2-1参照)
 小型漁船では、GMDSS対象除外要素の一つである100海里未満が97.8%である。
 20海里未満が93.1%、12海里未満で88.7%、3海里未満でも72.1%の多くを占めており、大多数の小型漁船の海難は比較的沿岸部で発生している。
 
表3.1.2-1 20トン未満の漁船の遭難(不要救助含)における漁業種類別/総トン別/距岸別の事故隻数(1990-1999)
漁業種類 総トン数\距岸 港 内 3海里  未満 3〜12  海里 12〜20  海里 20〜100 海里 100海里 以上 合 計
定置 5トン未満 47 55 2 0 0 0 104
5〜20トン 12 14 3 0 1 0 30
定置 計 59 69 5 0 1 0 134
一本釣 5トン未満 567 1073 296 63 38 2 2039
5〜20トン 138 306 269 122 111 18 964
一本釣 計 705 1379 565 185 149 20 3003
はえなわ 5トン未満 62 188 77 17 6 0 350
5〜20トン 55 114 75 44 130 128 546
はえなわ 計 117 302 152 61 136 128 896
刺網 5トン未満 293 611 95 11 5 2 1017
5〜20トン 42 80 64 13 20 27 246
刺網 計 335 691 159 24 25 29 1263
まき網 5トン未満 6 18 5 1 0 0 30
5〜20トン 35 79 34 5 2 0 155
まき網 計 41 97 39 6 2 0 185
敷網 5トン未満 7 11 2 2 1 0 23
5〜20トン 12 18 9 5 16 0 60
敷網 計 19 29 11 7 17 0 83
機船底びき 5トン未満 106 405 161 11 0 1 684
5〜20トン 50 121 99 30 19 2 321
機船底びき 計 156 526 260 41 19 3 1005
以西底びき 5トン未満 0 0 1 0 0 0 1
5〜20トン 0 0 0 0 2 0 2
以西底びき 計 0 0 1 0 2 0 3
ひき網 5トン未満 29 71 25 3 5 0 133
5〜20トン 23 55 20 5 3 0 106
ひき網 計 52 126 45 8 8 0 239
運搬・母船 5トン未満 11 18 0 0 0 0 29
5〜20トン 19 64 21 2 1 0 107
運搬・母船 計 30 82 21 2 1 0 136
その他 5トン未満 336 623 62 12 9 0 1042
5〜20トン 59 121 49 14 18 3 264
その他 計 395 744 111 26 27 3 1306
総 計 1909 4045 1369 360 387 183 8253
23.1% 49.0% 16.6% 4.4% 4.7% 2.2% 100.0%
 
(2) プレジャーボート
 
 長さが12m未満のプレジャーボートについて分析を行った。(表3.1.2-2参照)
 全体では、20海里未満が99.6%と大半を占めており、12海里未満で99.1%、3海里未満でも91.6%であり、漁船よりも沿岸寄りでの海難が多い。
 (注:プレジャーボートのGMDSS対象除外要素の一つである沿海区域は、陸岸から20海里としている海域が多い。)
 
表3.1.2-2 長さ12m未満のプレジャーボートの遭難(不要救助含)における全長別/距岸別の事故隻数(1990-1999)
船型 総トン数\距岸 港 内 3海里  未満 3〜12 海里 12〜20 海里 20〜100 海里 100海里 以上 合 計
エアクッション船 7〜12m 0 1 0 0 0 0 1
エアクッション船 計 0 1 0 0 0 0 1
モーターボート 7m未満 634 845 109 6 1 0 1595
7〜12m 485 643 170 12 3 0 1313
モーターボート 計 1119 1488 279 18 4 0 2908
ヨット 7m未満 140 296 5 0 1 1 443
7〜12m 180 202 43 5 6 9 445
ヨット 計 320 498 48 5 7 10 888
手漕ぎボート 7m未満 98 191 20 0 1 1 311
7〜12m 5 2 0 0 0 0 7
手漕ぎボート 計 103 193 20 0 1 1 318
和船型ボート 7m未満 378 595 49 1 1 0 1024
7〜12m 192 367 65 6 1 1 632
和船型ボート 計 570 962 114 7 2 1 1656
水上オートバイ 7m未満 201 318 10 0 0 0 529
7〜12m 0 1 0 0 0 0 1
水上オートバイ 計 201 319 10 0 0 0 530
総 計 2313 3461 471 30 14 12 6301
36.7% 54.9% 7.5% 0.5% 0.2% 0.2% 100.0%
3.1.3 海中転落の状況
 
(1) 漁船(表3.1.3-1参照)
 
 海中転落に伴う死亡・行方不明者についてみると、小型漁船については、100海里未満が98.5%、20海里未満が95.7%で、12海里未満で91.7%、3海里未満でも74.9%を占めている。
 
表3.1.3-1 20トン未満の漁船の海中転落(船舶海難によらない人身事故)における総トン数別/距岸別の死亡・行方不明者数(1993〜1999)
総トン数\距岸 港 内 3海里未満 3〜12海里
未満
12〜20海里
未満
20〜50海里
未満
50〜100海里
未満
100海里以上 全海域合計
5トン未満 86 294 64 12 6 0 0 462
5〜20トン未満 17 39 34 11 5 5 9 120
総 計 103 333 98 23 11 5 9 582
17.7% 57.2% 16.8% 4.0% 1.9% 0.9% 1.5% 100.0%
 
(2) プレジャーボート(表3.1.3-2参照)
 
 同死亡・行方不明者については、12m未満のプレジャーボートでは、20海里未満100%で12海里未満が97.0%、3海里未満が92.1%となっている。
 
表3.1.3-2 長さ12m未満のプレジャーボートの海中転落(船舶海難によらない人身事故)における船型別/全長別/距岸別の死亡・行方不明者数(1993〜1999)
船型 全長(m)\距岸 港 内 3海里未満 3〜12海里
未満
12〜20海里
未満
全海域合計
モーターボート 7未満 27 37 3 1 68
7〜12 5 13 1 1 20
モーターボート 計 32 50 4 2 88
ヨット 7未満 0 1 1 0 2
7〜12 1 1 0 1 3
ヨット 計 1 2 1 1 5
手漕ぎボート 7未満 0 5 0 0 5
手漕ぎボート 計 0 5 0 0 5
総 計 33 57 5 3 98
33.7% 58.2% 5.1% 3.1% 100.0%








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