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海賊事件の動向
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日本海難防止協会シンガポール連絡事務所
所長代理 中村 博通
 
 先日、国際海事局海賊情報センター(以下、「IMB」という。)から「海賊年次レポート二○○○年版」が発行されましたので、その概要についてお知らせします。
 なお、IMBレポートについては以下の点に留意しておく必要があります。
海賊行為とは?
 IMBでは、「海賊行為とは、盗難やその他の犯罪行為あるいは暴力を振るう目的で、船舶に乗り組む全ての行為」としています。
既遂?未遂?
 IMBでは、既遂、未遂事件も含めて海賊件数として計上されています。ちなみに二〇〇〇年の海賊件数は四六九件とされていますが、そのうち三二六件が既遂、一四三件が未遂事件となっています。
統計
(1)全体数
 昨年一年間に発生した海賊事件は四六九件とされ、一九九一年以降最高の数値となっています。対前年比でみると一六九件、五六%もの増加となっています。(図1)
図1 海賊発生件数の推移
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(2)海域別件数
 昨年一年間に発生した海賊事件を海域別にみると、インドネシアが一一九件(二五%)と最も多く、次いでマラッカ海峡七五件(一六%)、バングラディシュ五五件(一二%)、インド三五件(七%)、マレーシア二一件(四%)と続いています。(図2)
図2 海賊事件発生件数
(2000年・海域別)
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 また、近年の推移をみると、インドネシア、マラッカ海峡、バングラディシュ、インドの増加傾向が顕著です。特に、マラッカ海峡については昨年の急激な増加が顕著です。一方、マラッカ海峡に接するシンガポール海峡は減少に転じています。(図3)
図3 海賊発生件数の推移(海域別)
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(3)地域別件数
 昨年一年間に発生した海賊事件を地域別にみると、東南アジアが二六二件(五六%)と過半数を占めています。以下、インド洋九三件(二〇%)、アフリカ六八件(一四%)、アメリカ三九件(七件)の順に続いています。(図4)
図4 海賊事件発生件数
(地域別・2000年)
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 また、近年の推移をみると、一九九八年以降の東南アジアの増加傾向が顕著です。(図5)
図5 海賊発生件数の推移(地域別)
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(4)人的被害
 昨年一年間に海賊事件による人的被害は四八○人となっており、対前年比七人(○・一%)の増加となっています。海賊事件数の増加傾向とは対照的に横ばい状況となっています。(図6)
図6 海賊事件による人的被害数(人)
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(5)ハイジャック事件
 昨年一年間に発生したハイジャック事件は6件となっており、一九九七年、一九九八年の一七件をピークに減少傾向となっています。(図7)
図7 ハイジャック発生件数の推移
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