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安全情報の提供
田坂 ワンファザムバンクからホースバーグまでTSSが延長されたことに対して、全体的にどのような意見をお持ちでしょうか。この質問は先にしたものと重なっているかもしれませんが、もしご意見があればお願いします。
ラジャ・マリク ワンファザムバンクからホースバーグまでの距離は、約二一七海里あります。この長い距離を船長および乗組員が警戒を怠らず通航できるかということが気掛かりですね。対向船との正面衝突が減っています。しかし、特にコンテナ船の数が増加しており、その大きさや速度も上がる一方、現在も速度の遅い沿岸船や曳船が運航しています。その上漁船が操業しているといった場合には、われわれのいうところの「要衝」、一定の地点に交通が集中するといった状況につながる可能性があります。この問題に取り組み、防止策をとらなければならないと思っています。
 一つの方法として挙げられるのが、事前に船長に情報を伝えるという方法です。これによって、船長は交通集中地点の到着時間を計画することができます。このような情報システムは、マリン・エレクトロニック・ハイウェイ(MEH)計画を通じて開発でき、結果としてよりよい通航プランの作成や船橋での見張りに限られた人材を有効に利用することが可能になります。船長は危険度の高い海域での警戒に集中するため、適切な休息をとるべきです。もし見張りを強化する必要がある場合、限られた人材を有効に使うために船長は事前に情報を入手しておかなければいけません。
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ワンファザム灯台 右が新、左が旧灯台ここからTSSが始まる
海峡利用国の協力
田坂 全く同感です。海峡利用国の負担分担計画案に関する話し合いは進んでいるのでしょうか。次回のTTEGワーキンググループミーティングで、この件について話し合われますか。
ラジャ・マリク 海峡利用者、利用国、沿岸国の負担分担協力および国連海洋法条約第四三条に関する会議がこれまで二回行われました。 一つはIMO、もう一つはシンガポール政策研究所の主催で開催されました。マラッカ海峡のように国際通航に利用されている海峡において、航行安全の向上と海洋汚染防止のために、このような協力が大変重要であると認識されています。また、この条文の下、利用国の一つとして日本が重要な支援を行っていることを私達は理解しています。
 海峡の東西に存在する国家間の貿易が続く限り、ほかにも恩恵を受けている者が多く存在していると思います。負担を公平に分担するための仕組みや手順を構築する必要があります。これは困難な課題です。個人的には、二つの面からの任意負担につき合意に達するべきだと考えています。一つはプロジェクト開発、もう一つは保守整備の経費です。これに関しては、TTEGにワーキンググループが設置されていて、負担分担の方法について案を作成しているところです。
田坂 任意に基づいた方法というのは大変興味深いですね。利用国にも受け入れられやすいでしょう。しかし、もし利用国のいずれもが負担分担に応じなかった場合はどうでしょう。
ラジャ・マリク もし国連海洋法条約第四三条に基づいた負担分担が任意に引き受けられなかった場合、協力の仕組みをより強くする必要が出てくるかもしれません。より強制的な方法を用いなければならないという状況は、個人的には想像したくないことですが。
田坂 この問題には、時間をかけて一歩ずつ取り組んでいかないといけないということでしょうか。
ラジャ・マリク そうですね。最初にも述べたように、利用国は負担分担の重要性を認識しています。公平な制度および費用分担方法について構築していくことが、最初の障害に思えます。
 負担分担の仕組みを展開するにあたり、海峡利用から利益を得ているすべての者について把握しておかなければならない。日本のような国は大きな貿易相手があり、大きな海運社会があり、利益を受けている者に関する統計もとりやすいでしょう。マレーシアの場合は、海峡通航船と寄港船からの報告のみという制限された情報しかありません。より詳しい情報が入手できれば、負担分担の解決方法が見つけられると思います。
田坂 これが最後の質問になります。将来、どのような技術的・財政的支援を当事務所を含めた日本側に対して求めていますか。
ラジャ・マリク 将来的には、電子機器を用いた正確な航行を実現するための援助施設の開発が必要になると思います。
田坂 ケミカルの汚染対策はどうですか。
ラジャ・マリク ケミカル運搬船の航行安全の面では、私はいつも事故防止策に力を入れています。海難防止を優先事項に置いたプロジェクトを開発すべきです。実行に移すためには、船種やすべての利用者が直面しているリスクの種類等正確な統計とデータを入手しなければいけません。しかしながら、当面の必要事項はケミカル汚染に対する総合的防除計画です。
田坂 しかし、シンガポールもまた海峡の安全から恩恵を受けています。沿岸国の間で立場の違いはありますか。立場の違いが気になりませんか。
ラジャ・マリク シンガポールは多数の寄港船を有していますが、航路のもっとも長い部分がマレーシアに隣接しているということを頭に入れておかなければなりません。そしてもっと重要なのは、マレーシアはマラッカ海峡側の西海岸に人口が集中していることです。シンガポールとマレーシアの人々の生活に対する脅威は存在しており、両国は航行安全問題と負担分担の必要性について同様の懸念を共有していると思っています。
田坂 今日はきたんないご意見をいただき、どうもありがとうございました。
Common Datum Charts(CDC) Coverage
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