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3-3 関連施策・制度の整理
3-3-1 舟艇保管施設整備等関連主要施策
(1)主要施策の経緯
 
 舟艇保管施設整備等に関する各省庁の主要施策の経緯は下表のとおりである。昭和60年代ではリゾート法の推進にもとづく形での施策の展開がはかられているが、その後、放置艇の問題に対応する形で国土交通省(旧運輸省、旧建設省)および水産庁が連携し施策の展開がはかられている。
 また、国土交通省河川局(旧建設省)では「不法係留船に関する簡易代執行に関する新制度(平成7年度)」や「不法係留船の売却、廃棄、売却代金の保管等に関する新制度(平成9年度)」の創設がおこなわれ、さらに国土交通省港湾局(旧運輸省)および水産庁ではそれぞれ、「船舶等の放置の禁止、監督処分規定の整備に関する法改正(港湾法)」、「不法係留船の売却、廃棄、売却代金の保管等に関する法改正(漁港法)」がおこなわれ、放置艇に対してより積極的な対策がおしすすめられている。
表 主要施策の経緯
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(資料)「プレジャーボート係留・保管の総合的な推進方策に関する調査報告書(平成10年度)」
表 主要施策の概要
施策名(事業名) 施策(事業)の概要
小型船拠点総合整備事業 ■プレジャーボート需要への対応とともに、港湾などの公共用水域における放置艇を収容し、臨海部の環境改善をはかるため、日本政策投資銀行からの低利融資により、民間事業者による小型船拠点(マリーナ)の整備を支援。
【対象事業】
[1]事業主体:民間事業者(第3セクターを含む)
[2]対象施設:桟橋、上下架施設、ボートヤード、艇庫、クラブハウス、駐車場、用地造成、その他基盤となる施設
【融資金利】
・5年据置25年償還
・このうち、港湾管理者、地方公共団体などにより放置艇対策に関する方針(条例・要綱等)が定められている地域において整備され、放置艇の収容に寄与するものについては、優遇措置あり
放置艇小型収容緊急整備(ボートパーク整備)事業 ■運河、水路等の既存の静穏水域などを活用した小型船舶の簡易な収容施設と、その近隣に駐車場、トイレ等の必要最低限の施設を備えた「ボートパーク」を整備することによって放置艇の収容促進及び周辺環境の改善をおこなう。
【対象事業】
・係留施設(桟橋、係留杭、係留浮標等)の他、駐車場、トイレ等の必要最低限の施設
【補助率】
・補助率1/3(局部改良事業(改修)で実施)
河川利用推進事業(河川マリーナの整備) ■河川水面利用の適用化をはかるため、船舶の収容空間となる河川マリーナの整備を支援。
【対象事業】
・河川利用の推進をはかるため必要な水門、護岸、係留施設、船溜まり、河川利用案内標識等の整備事業
【補助率等】
・直轄事業:負担率1/2
・補助事業:補助率1/3
不法係留対策に関する制度の創設 平成7年河川法改正:
■河川管理者が不法係留船舶等に対する監督処分をおこなうにあたり、過失がなく相手方を確知できない場合において、相当の期限を定めて公示したうえで、河川管理者等が当該監督処分をおこなうことができる簡易代執行に関する制度を創設。
平成9年河川法改正:
■不法係留船舶等の排除に伴う河川管理者の負担軽減のため、不法係留船舶等の除去後、一定の期間経過後の当該船舶等の売却、廃棄、売却代金の保管等についての制度を創設。
フィッシャリーナの整備 ■漁船と遊漁船等とのトラブルを解消するとともに、遊漁船等を分離収容する施設として、フィッシャリーナの整備を展開。
【採択方針】
・港内に遊漁船等が多いため、漁業生産活動に支障が生じている漁港
・周辺漁港の遊漁船等を集中させることにより、周辺漁港の利用調整が可能となる漁港
・リゾート法に定める承認基本構想に基づき、遊漁船等利用施設を整備する漁港
【補助対象】
・外郭施設
・水域施設
・ビジターズバースと主要道路からそれに連絡する道路
漁港高度利用活性化対策事業 ■漁船以外の船舶や一般外来者の漁港利用の増大に対応するため放置艇の収容促進及び周辺環境の改善をはかることを目的として創設
【事業内容】
・放置艇収容施設(桟橋等の簡易な係留・保管施設及びその附帯施設)
・漁港美化促進施設(ゴミ処理等の環境施設及びその付帯施設)
【補助率】
・1/2
(資料)「プレジャーボート係留・保管の総合的な推進方策に関する調査報告書(平成10年度)」
(2)平成12年港湾法の改正内容
 
 平成12年4月に次の点で港湾法の改正がおこなわれた。
 [1]放置艇対策を強化するための禁止規定の新設
 [2]監督処分規定の整備
 それぞれの概要は、下表のとおりである。
表 平成12年港湾法改正の概要
放置艇対策を強化するための禁止規定の新設
(第37条の3、第56条の2関係)
■港湾区域内及び第56条の広告水域内の一定区域内において、何人も、みだりに船舶等を捨て、又は放置してはならないことを規定。
監督処分規定の整備
(第56条の4関係)
■船舶その他の物件も港湾管理者等の監督処分の対象となることを明示。
■港湾管理者等が撤去した所有者不明の工作物又は船舶その他の物件
(以下「工作物等」)について、港湾管理者等は、滅失、破損のおそれがある場合等一定の要件を満たす場合には当該工作物等の売却、廃棄等がおこなえることとする。
■また、6ヶ月間の保管期間を経過した後には当該工作物等の所有権は港湾管理者等に帰属することを追加。
図 第37条の3に規程される放置等禁止区域設定等を通じた放置艇対策のイメージ
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図 所有者不明船に対する処分手続き
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(注)手続の途中で所有者が引き取りにきた際は、その時点で船舶(又はその売却代金)を返還。
(3)平成12年漁港法の改正内容
 
平成12年4月に次の点で漁港法が改正された。
■基本施設である漁港施設を損傷し、破損することを禁止した。
■漁港の保全上とくに必要があると認め、漁港管理者が指定した区域において、船舶、自転車その他の物件で漁港管理者が指定したものをみだりに捨て、または放置することを禁止した(図漁港における放置の定義)。
■船舶、自動車その他の物件をみだりに捨て、または放置した場合、違反者に対し移転もしくは除却を命じることができることとした。
■必要な措置を命ずべきものを確知することができない場合、漁港管理者は、自らが行うかもしくは、その命じた者もしくは委任した者にこれを行わせることができることとした。
■漁港管理者が除却し、又は除却させたときは、工作物を保管し、さらに売却等が行えることとした。
■船舶、自動車その他の物件をみだりに捨て、または放置した場合、30万円以下の罰金に処することができるとした。
図 漁港における放置の定義
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(4)地方自治体の放置艇対策に関する条例等
 
 地方自治体における放置艇対策に関する条例等の制定状況は、下表のとおりである。主な特徴として北九州市を除き放置艇に対する移動規定が設けられている。
表 地方自治体の放置艇対策に関する条例等の例
自治体名 条例、要綱等名称 主な内容
岡山県 「岡山県プレジャーボート対策要綱」
(H3.12施行)
■届出規定あり
■係留・保管重点禁止区域の設定
■移動規定あり(所有者が移動させる)
■罰則規定なし
大阪府 「大阪府プレジャーボート対策要綱」
(H6.4施行)
■届出義務あり
■係留・保管重点禁止区域の設定
■移動規定あり(所有者が移動させる)
■罰則規定なし
北九州市 「北九州市港湾施設管理条例」
「小型船けい留施設運営要綱」
(H6.11施行)
■港湾施設管理条例の改正によるプレジャーボート対策
■小型船係留施設の許可制、有料制導入
■係留禁止施設の設定
■過料規定あり
横浜市 「横浜市船舶の放置防止に関する条例」
(H8.4施行)
■立入調査規定あり
■移動の指導、勧告、命令、強制移動規定あり
■費用徴収規定あり
■罰則等なし
千葉県 「千葉県プレジャーボート係留対策要綱」
(H9.6施行)
■届出義務あり
■暫定係留区域の設定
■係留・保管重点禁止区域の設定
■移動規定あり
■廃棄規定あり(所有者が廃棄する)
■罰則規定なし
広島県 「広島県プレジャーボートの係留保管の適正化に関する条例」
(H10.10施行)
■届出義務あり
■放置規制区域の設定
■放置規制区域の放置に対する移動の指導、勧告、命令、強制移動、売却
■費用徴収規定あり
■罰則等なし
(資料)「プレジャーボート係留・保管の総合的な推進方策に関する調査報告書(平成10年度)」
(5)プレジャーボートの制度的な位置づけの比較
 
 現行の法規制ではプレジャーボートは自動車に比較して、所有時において規制等がすくなくなっている。とくに総トン数5トン未満のものに対する登録が義務づけられていない。しかし平成13年6月の「小型船舶の登録等に関する法律」の成立により、平成14年4月1日から小型船舶の登録が義務づけられることとなっている。
表 プレジャーボートと自動車の制度面での比較(平成14年4月1日予定)
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(資料)「プレジャーボート係留・保管の総合的な推進方策に関する調査報告書(平成10年度)」および(財)日本小型船舶検査機構資料より
(6)ボートトレーラーに関する規制
 
 トレーラーの自動車保管施設に対する指導事項を整理すると、下表のとおりである。
表 トレーラーの保管施設に対する指導事項
対象となる自動車の要件 「自動車検査業務等実施要領について」に指定される「特殊用途自動車」である「ボートトレーラー」に該当
自動車保管施設の要件 以下にあげられる基準のいずれにも適合することが求められている。
■自動車の保有者から委託を受けて業として自動車の保管管理をおこなうものであること。
・契約期間は少なくとも6ヶ月
・契約内容は、契約に係わる自動車の保管管理の委託を内容とする
・契約の内容に自動車の点検・整備の委託が含まれていること
■管理人が指定されており、当該自動車の出入庫の状況が台帳等により記録されていること。
・管理人が指定されていること、また当該管理人が不在の時には、門扉に施錠する等の措置が講じられること
・自動車の出入庫の状況について、個々の自動車ごとに台帳等により記録されていること
・自動車の出入庫の状況の記録は、当該管理人の責任においておこなわれること








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