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あなたの医療は適切ですか
  第7回
水は私たちの命綱
安 冨 トキ子
保健婦として長年高齢者の健康維持に従事する。
 
 京大で老年学の研究をされていた亀山正元教授の研究によると、25歳の人の体重の62%は水分ですが、75歳になるとその割合が53%に減るそうです。
水でからだの新陳代謝
 細胞外を流れる成分中の水分は(血液やリンパ液)体重の20%ですが、これが減ると生命は維持できません。年をとって減るのはそれ以外の水分です。からだの水分を減らすことは、自分の老化をすすめることになり肌がカサカサになって、やせたというよりやつれたと周囲の目にうつるかもしれません。
 トイレが近くなるからと水分を控える高齢者が多いことからもわかるように、水には利尿作用があります。尿をつくっているのは腎臓ですから、水分をとることで腎臓のはたらきは活発になります。
老廃物は早く体外へ
 腎臓は、体内で不用になった老廃物を尿として体外に排出するはたらきをしています。このはたらきが活発になれば、老廃物は体の外へ出ていき、からだの中はきれいな状態が保たれるわけです。ところが「トイレが近くなるから」と水分を控えていると、尿の量が減り体内には老廃物がたまります。これを早く体外に排出しなければ、病気の誘因になるというのもうなずけます。
 通常膀胱には200mlの尿がたまっています。400mlになると尿意を感じ、700mlになると失禁してしまいます。健康な人の場合、1日の排便、尿量は平均1.5Lで1日最低500mlを排泄しなければ老廃物を出しきれないといわれています。水を飲んで洗い出すことができるのは、老廃物だけでなく、アルコール中のアセトアルデヒドや、タバコのニコチンなど、からだにとって毒素といってよいものも含まれています。
上手に水分を補って
 1日に2.5Lの水分が失われています。2.5Lの内訳は、便や尿となって排泄される水分が1.5L「不感蒸泄」といって呼吸(肺皮ふ)によって失われる水分や、体温調節で失われる水分です。これで1Lあわせて2.5Lが毎日失われているのです。
 1日3回の食事の中に(ご飯、みそ汁、おかず)700mlの水分が含まれています。次に「代謝水」といって、体内で栄養素が燃えてエネルギーに変わるときにできる水分が300ml、これで合計1L。残りの1.5Lは毎日吸収することで水分の帳尻があうのです。飲みすぎて健康を害することはありません。あまったその分排泄されてしまいます。入浴や運動の前後、寝る前、夜間排尿後に水分をとることをお忘れなく。ただし、水を飲んではいけない症状をもつ人、人工透析中の人は医師の指示にしたがってください。
健康飲料は補助的な利用を
 食物繊維やビタミン、カロチン入りを強調した野菜や果物のジュース類について、各地の消費生活センターが分析した結果を見ると、含量の低いものがかなりあるようです。かりに十分量が含まれていても、吸収率や生理作用の面で劣る成分もあります。健康飲料は食欲のないとき、食事のとりにくいおとしよりや病人等が補助的に利用するのはよいかもしれません。健康な人には無糖茶類等の利用をおすすめします。








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