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おわりに
 以上、大阪市における都市型産業育成施策について、次代の大阪経済を担う「人と企業の創出」、それを受け入れる「場の提供」、内外の企業を誘致し新たな都市型産業の集積をめざす「企業の誘致」について述べてきた。
 今後さらに、大阪市に都市型新産業の集積を促すためには、これらの施策だけではなく、全体的・総括的な経済産業に基づき、土地利用転換の必要性の高い低・未利用地が発生している大阪駅北地区や在来の臨海部などにおいて、これらを大阪の重要な拠点とし開発整備を進め、魅力ある都市空間の創造と新たな産業集積を図ることが重要となっている。
 さらに、集客がもたらす経済波及効果をビジネスビジターと取引企業やコンベンション、あるいは観光ビジターと観光産業との結び付きにとどめるのではなく、そこから生じるさまざまなニーズや情報を、企業にとってビジネスチャンスとなり、新たな事業活動に結び付けられるよう、各種支援機関においてサポートしていくことで新産業の活性化を図っていかなければならない。
 こういった取り組みを進めるためには、その基盤となるIT革命に対応した人材の育成や研究開発機能の充実、高等教育機関・専門的学術研究機関の立地促進やそのネットワーク化などを図る施策が必要となる。
 国の都市再生に向けた取り組みが具体化してきた今をひとつの機会ととらえ、それを追い風として、戦略的な観点から大阪の産業再生につなげていくことが真に必要であると考える。
 
(図−1)経済成長率(実質)の推移
・大阪市経済は景気後退が長期化する中で、全国に比べても厳しい状況にある.
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  平成3年 平成4年 平成5年 平成6年 平成7年 平成8年 平成9年 平成10年
大阪市 0.6 -0.3 -7.8 1.2 1 3.9 0.2 -2.7
名古屋市 4.7 -2.4 -0.8 0 3.5 4.7 -1.5 -1.2
東京都 -1.1 -2.4 -1.3 -0.9 2.1 2.8 -0.2 -2.1
全国 2.9 0.4 0.5 0.6 3 4.4 -0.1 -1.9
 
(図−2)中枢管理機能の全国シェア
・大阪市の中枢管理機能を卸売業販売額、手形交換額、広告業売上高といった主要な指標の全国シェアの推移で見ると、いずれについても減少傾向となっている。
・その理由の一つに、経済のグローバル化が進むなかで、企業の最高意思決定部門や投資戦略、広報宣伝部門を東京に集約させる動きが加速し、大阪の本社機能の東京移転が進んでいることがあげられる。
中枢管理機能の大阪市の全国シェアの推移
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注:最近時…卸売業販売額、手形交換高、広告業売上高は平成11年、卸売業販売額の平成7年は6年のデータ。
(図−3)大阪市内製造業(全事業所)の工場数・従業員数・製造品出荷額等の推移
・生産機能の低下を示す工場数・従業員数・製造品出荷額等を見ると、工場数については1965年には27,362ヵ所、全国の約5%を占めたがその後低下し、1998年には25,781ヶ所、全国の4%に低下した。同様に従業員数については全国比5.6%から2.5%、約1/2に減少し、製造品出荷額等についても全国比6.3%から2.0%、約1/3に減少している。
工場数・従業員数・製浩品出荷額等の推移
  工場数 従業者数 製品出荷額等
実数
(ヵ所)
全国比
(%)
実数
(人)
全国比
(%)
実数
(百万円)
全国比
(%)
1965年 27,372 4.9 553,312 5.6 1,864,448 6.3
1975年 35,499 4.8 439,342 3.9 4,845,608 3.8
1985年 35,806 4.8 372,375 3.2 7,654,816 2.9
1995年 28,392 4.3 291,145 2.7 6,808,516 2.2
1998年 25,781 4.0 256,793 2.5 6,170,669 2.0
 
(図−4)企業の開廃業率
・中枢管理機能が東京都区部へ流出しているのに加えて、新たにビジネスを起こす動きも弱まっている。大阪市の開廃業率(開業事業所数/廃業事業所数)は低下傾向にあり、平成5年度の0.89から平成11年度には0.60と低下し、他都市と比較しても低い水準にある。
開廃業率の推移
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(図−5)大阪産業創造館事業
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(図−6)工業研究所技術支援施策の体系
(拡大画面: 158 KB)
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