日本財団 図書館


大阪市における都市型新産業の育成方策について
 大阪市計画調整局企画調整部政策調査課 宮地 一弘
はじめに
 大阪市は、近畿圏の中枢都市として高密度の産業集積とその多彩な産業活動により、近畿圏全域に雇用機会を提供するとともに、貿易をはじめ、投資、技術、観光といった幅広い分野の交流で、広く世界の諸国・諸都市と結び付き、国際的な中枢都市としての役割を担ってきた。
 しかし、近年の我が国経済がバブル経済の崩壊とその後の金融不安の長期化、さらには情報通信技術革命への対応や製品・サービスの国際標準規格化への取り組みの遅れなどを背景に、停滞状況にあり、平成3年度から平成10年度の平均経済成長率(図−1)は、1.5%に止まっている。こうした中で、大阪市の経済は、情報通信技術革命の進展などに伴う、それまでの高次な経済・文化機能の東京一極集中(図−2)と生産機能の地方・国外への分散傾向の進展(図−3)に加えて、企業の経営環境の急激な悪化などを背景とした、本社機能・金融機能など中枢管理機能の東京圏への集約化の進展などによって、一層深刻な状況にある。
 また、1980年代の後半以降、廃業事業所数が開業事業所数を上回り(図−4)、開廃業率については低下してきている。そのため、同期間の平均経済成長率は、0.6%に止まっており、市内全産業従業者数は、平成8年では261万人と平成3年に比べわずかながら増加しているが、平成11年には228万人と大幅な減少に転じている。
 大阪市では、「人」の交流による都市の活性化に向けて、国際集客都市づくりを進めてきたが、さらに国際的な交流の活発化が予想される中で、今後とも国際集客都市づくりを一層強力に推進し、集客から生まれるビジネスチャンスを大阪市産業の活性化と経済中枢機能の強化、次代の大阪経済を担う企業や産業の創出に生かしていくことが必用である。
 この調査報告では、これらの視点から、
 i)大阪産業の競争力強化として、大阪経済の中核を担う中小企業・ベンチャー企業を支援し、市場開拓や事業提携、投資促進につながる様々な出会いの場を提供する「大阪産業創造館事業」
 ii)今後の成長分野における産業の多様な需要に対応するため、大阪市の遊休施設も活用しながら、地域産業振興拠点の整備など新しい都市型産業の振興を図るインキュベータ事業の展開
 iii)様々なビジネスチャンスを創造することを目的として、戦略的見地から、その成長性のある国内外企業の誘致を図る推進体制の整備、具体的な誘致活動、進出企業等への支援策など企業誘致の取り組みの強化
 について紹介する。 

1.大阪産業の競争力強化
 情報通信技術(IT)革命やグローバル化の進展による世界市場へのチャレンジ機会の拡大、消費者ニーズの多様化による多品種少量生産化の一層の進展など、さまざまな環境変化により、中小企業のビジネスチャンスが拡大している一方、規制緩和やグローバル化などにより、企業競争も国際的でより厳しいものになっている。
 こうした状況の中で、大阪産業の競争力を強化していくためには、大阪経済を支える中小企業を、ビジネスチャンスをつかみ生かせる競争力のある強い企業へと育成していくことが重要である。
 ここでは、社会の成熟化や少子高齢化などの社会経済環境の変化や集客がもたらすニーズやビジネスチャンスをつかむ機会を提供し、これを事業化や創業につなげるための支援を展開するとともに、産学官の連携による技術開発と移転の促進、情報通信技術の活用、人材育成、経営基盤の強化等、総合的な支援を行う「大阪産業創造館」の取り組みを中心に紹介する。 

(1)これまでの取り組み
 大阪産業創造館(図−5)は、次代の大阪経済を担う人と企業の創出拠点として、平成13年1月に開設した。事業としては、新たなビジネスをつかむことができ、課題を解決できる機会の場の提供を通じて、新事業創出・事業化から経営革新まで一貫して中小企業・ベンチャー企業の経営を支援し、競争力ある強い企業を育成する。
 また、こうした支援サービスをはじめとする大阪のビジネス環境やここから生まれる新しいビジネスに役立つ情報を発信していくことにより、ビジネスチャンスを求めて国内外から大阪に企業が集まり、新しいビジネス潮流を巻き起こす好循環の形成をめざす施策を推進している。
1)ビジネス創造マーケット事業
 市場開拓・事業提携・投資促進をめざす中小企業・ベンチャー企業が、ビジネスパートナーや投資家と出会える機会を提供。「ベンチャー」「ものづくり」「情報技術」「環境」など、毎回テーマを絞り込み双方の参加意識を明確にし、商談成立確度の高い効果的なマッチングを図る。
[1]「プロキュア2001」資材調達マーケット
 中小製造業と大手・中堅企業の資材調達部門が事前に調達品リストを提示し、ブースを出展、中小製造業のサプライヤー側は、直接商談ができるうえ、大手・中堅企業の求める世界的な技術水準に触れることにより、販路拡大のみならず技術革新にもつなげる。(年4回開催予定)
[2]アジアベンチャーマーケット
 大阪を拠点にして日本市場進出を検討している、アジアのベンチャー企業を招いて、大阪の商社、大手企業の新規事業部、ベンチャーキャピタル、提携企業との接点や商談を実現する商談会。
 平成13年度開催のアジアベンチャーマーケットは地理的にも歴史的にも身近な韓国のITベンチャー企業が来阪し、提携企業を求めた商談会を開催。韓国企業については、ソウルにて、経済界・研究機関・公的機関で構成する「アジアベンチャーマーケット大阪 韓国委員会」を発足させ、優秀な韓国ベンチャー企業を発掘・評価・選考。また、同委員会は大阪のベンチャー企業の韓国進出支援も担う。
 今後は、韓国のほかにも協力関係を広げ、大阪産業創造館がアジア諸国のベンチャー企業と大阪の企業の共同事業化の拠点としていく。(年4回開催予定)
2)産学連携推進事業
 中小企業・ベンチャー企業の技術革新、企業競争力の強化を図るため、大学などの研究機関のもつ知的資源を中小企業へ移転する。
 具体的には、技術のビジネス化を追求するwebサイト「e-liaison(イー・リエゾン)」を開設し、わかりやすい表現で研究情報を提供するとともに国内外の大学・研究機関の研究者と中小企業・ベンチャー企業が時間と距離を越えて意見交換や研究できるweb上の研究交流を展開する。
 また、大阪TLOを活用し、産学連携推進事業を強化する。
[1]e-liaison
 10種類のラボ(バーチャル研究所)をweb上に設置。
 環境・情報通信・新素材といった成長性の高い分野について、研究者・専門家が「e-liaison」各ラボで、各テーマに沿った研究内容を紹介。産学連携による事業化・ビジネス化をめざし、企業メンバーの参加を募り、メーリングリストでラボ長・ラボ研究員・企業メンバー間の意見交換・質疑応答を行っている。最終的には企業と1対1、または複数で産学連携共同開発につなげることを目的としている。
 バーチャルのみではなく、ラボごとに産業創造館でミーティングを開き、リアルの交流も行い産学連携を促す。
[2]e-solution(イー・ソリューション)
 「e-liaison」内で、技術や共同研究に関する相談にオンラインで大阪市立大学及び大阪市立工業研究所などの専門家が答える。
3)交流促進事業
 産業創造館17階の「b-platz」クラブにおいて、「マイクラブ」に登録している交流団体を中心に出会いや交流の機会の提供を行うとともに、ビジネスサロンとしてミーティングやイベントが開催できる場の提供を行うことによって、新たな事業創出・事業展開に向けた異業種交流などの交流活動をサポートしている。
 ※ビジネス交流を目的とする団体で一定の条件を満たせば登録でき、登録団体の活動内容、イベント予定をb-platzクラブのweb上で紹介するとともに、各団体にアクセスできる機会を提供している。イベントについては、産業創造館において施設提供を行うことができ、b-platzクラブのスタッフが企画運営をサポートしている。
4)ビジネス人材育成事業
 企業の経営者・事業主から管理者・プロジェクトリーダー・実務者まで幅広い人材を対象として、新事業創出・起業家育成などをテーマに、実際のビジネスに直結する課題解決型のカリキュラムを導入した人材育成事業を実施している。
 大人数制・短期のセミナー、中・長期にわたるカレッジスクールや少人数制のワークショップなど、テーマや対象者のニーズ・レベルに応じた多様なコースを設定し、知識を踏まえた上での行動力、決断力、洞察力、創造力などの総合的なビジネスパワーを育成する。
[1]b-platzカレッジ
 「中小企業のビジネス現場で役に立つ」ことをコンセプトに、生きた知識と技術を身につけるための「実践・実学」を重視した、即戦力を身につけるためのスクール。受講生同士、講師と受講生が出会う「出会いの場」であるだけではなく学んだ結果を生かすプロジェクトを実際に立ち上げることができる。
 ナレッジセミナー、ビジネススクール、ワークショップ、なにわあきんど塾がある。
 ※明日の中小企業を担う若手経営者、後継者の経営資質の向上をめざして、中小企業経営者に関する基礎的、現実的な能力の修得と、新しい時代の経営者としての実践哲学の修得と異業種交流を行う。
[2]「IT@BRIDGE」中小企業IT化総合支援プログラム事業
 中小企業・ベンチャー企業におけるIT導入・活用を支援・促進する。特にインターネットを活用した営業支援に力を入れ、中小企業者がITを新しい「ビジネスツール」として据えて経営革新・事業拡大を実現できるよう、3段階の構成としている。
I.IT戦略セミナー・イベント
 中小企業経営者、情報担当者に向け、ITの導入から活用事例まで、講演会を通してその必要性を訴求。導入のきっかけづくりを行う。
II.IT専門教育
 IT全般の基礎知識や導入ノウハウが習得できる実践的なビジネススクールを開設。経営者や情報担当者がIT導入の判断ができるよう教育。
III.ITソリューション
 ITのビジネス活用をテーマに各業界の第一人者とともに、実際のビジネスに活かせるソリューション事業の企画・提案を行う。
(i)オンラインショップ開店サポートプログラム「うりうり教習所」
 評価が高い店舗を教材にし、オンラインショップ作成を実践する実習コースと、決済方法・物流・セキュリティーなどのバックヤード体制やアウトソーシングの有効活用を学ぶ学科コースからなるカリキュラム。Web製作には補講を開き、フォローアップを実施。
(ii)ITビジネスカレッジ
 中小企業のITリーダー育成のための実践講座。中小企業経営者や情報化リーダーを対象とした18時間のITコース。
(iii)ITコーディネータープロフェッショナル
 中小企業のIT化を進めるうえで必要となるIT化推進人材を創出するため、ITコーディネーター協会と提携して、開講。
 ※平成11年6月通商産業省(現、経済産業省)産業構造審議会情報産業部会情報化人材対策小委員会の中間報告において提唱された「戦略的情報化投資活性化のための環境整備の試み」の趣旨を踏まえ設立され、カリキュラムの提案、資格認定等を通じてITコーディネーターの育成、普及を図っている。
[3]ビジネスインターンシップ
 ベンチャー企業・中小企業における有望な人材の確保と、学生に対して、職業適性・能力を把握・検討する機会の提供。コーディネーターが仲介し、ベンチャー企業・中小企業の視点に立ったインターンシップを実現させ、双方の接点を創出。企業と人材の流通化を促進する。
5)コンサルティング事業
 中小企業・創業予定者にかかるコンサルティング事業を「あきない・えーど」として実施。中小企業診断士が常駐。
 ※創業準備をはじめ、マーケティング、経理・税務、人事、労務、知的所有権、法律、下請け取引、IT導入・活用など経営全般の諸問題に関して中小企業・個人事業者を支援できるように、各種の相談員を配置し、個別に対応している。
[1]「コンサル出前一丁」
 業績向上に取り組む中小企業者・個人事業者(大阪市内の事業所限定)などからの要請に応じて、民間の専門家を派遣(派遣回数2〜10回)し問題の解決を図る。
 専門家を募集し、メニューを設定の上、パック化して実施。メニューは事業戦略・プラン、人事・労務、販売・営業、IT、その他にわたる約50種類。
[2]創業準備オフィス
 創業希望者などが開業準備に利用できる共同オフィススペース(36ブース)で、事業化への最終段階となる産業創造館に設置したインキュベータ施設。(契約期間最長6ヶ月)[利用対象条件]
 I.事業を営んでおらず、大阪市内で6ヶ月以内に創業予定があり、且つ具体的事業計画を有していること。
 II.大阪市内に営業拠点を持つための準備をしている中小企業の法人または個人で、6ヶ月以内に拠点の開設予定があり、且つ具体的事業計画を有していること。
 III.SOHOで、大阪市内に事務所を持つための準備をしており、6ヶ月以内に拠点の開設予定があり、且つ具体的事業計画を有していること。
[5]カウントダウン・ラボ
 ネットビジネスの起業家を対象に創業準備オフィス(カウントダウン・ラボ枠:約5ブース)を無料提供。
[カウントダウン・ラボの流れ]
エントリー:ビジネスプラン及び戦略実行計画による書面審査
「step1 挑戦者審査会」 カウントダウン・ラボ審査委員会が、ビジネスプランのプレゼンテーションと面談による審査を行う。
入居60日で実行計画に基づきシステム構築など事業準備。
「step2 挑戦者審査会」 戦略実行計画に基づく進捗状況により、継続の可否を審査。
 ・落選後の再エントリー可能
 ・「創業準備オフィス」通常契約への移行可能
ビジネスプランを120日間でテストマーケティング。 
「カウントダウン・ラボ修了審査会」
 最終目標(ビジネスプランの自主運用)をクリアすると認定書授与。 

 
(2)課題及び今後の取り組み
 以上のような取り組みを踏まえ、今後とも大阪市が新しいビジネスや元気のある企業が生まれ、国際的にもビジネス活動が活発に行われる「ビジネス創生都市」をめざしていくためには、さらに、ビジネスの輪が広がり、新しいビジネスの潮流を巻き起こし、大阪経済の活性化をリードする中小企業・ベンチャー企業を総合的に支援し、元気な大阪を取り戻せるようさまざまな出会いの場を提供する事業を新たに展開していくことが求められている。
1)ビジネスチャンス倍増プロジェクト事業
 ビジネス創造マーケット事業において、企業情報などに精通した専門知識をもつ人材(マッチングナビゲーター)を活用し、新規・有望技術や製品を保有する中小企業を掘り起こすとともに、内外の企業などが持つ潜在需要の発掘からマッチングまでコーディネートすることにより市内中小企業の活発な企業取引促進を図る。
2)「e-liaison」ラボコーディネーターの導入
 ネット上の研究交流(「e-liaison」ラボ)を通じて生まれたビジネスシーズを市場に精通したコーディネーターを導入することにより、共同研究の製品化・事業化につなげていく。 

2.新産業や成長産業の創出・育成
 大阪市の安定した都市発展を図るためには、地域を取り巻く環境や時代の変化に柔軟に対応して、新たな産業や企業が生まれる経済のダイナミズムを常に保持していくことが重要である。
 大阪産業の新陳代謝を促進するためには、インキュベーション施設の整備やそれを中核とした都市型産業の育成・集積促進を図るほか、これまで整備してきた各種マートの活用などにより、今後の成長が期待される産業の創出・育成を図っていくことが重要である。 

(1)これまでの取り組み
 市内の産業集積を見ると、新大阪駅前周辺、心斎橋・南森町などの都心部においては、IT関連産業などソフト系産業、淀川沿い、臨海部、市域東南部など周辺部においてはものづくり系産業の高密度の集積がみられる。
 こうした産業の集積メリットを活かし、今後の成長分野における多様な大都市への立地需要に対応するため、本市遊休施設も活用しながら、地域産業振興拠点の整備など新しい都市型産業の振興を図る施策を推進している。
1)ものづくり系インキュベータ事業の展開
[1]島屋ビジネス・インキュベータ
 将来の大阪経済を担う都市型産業、特に研究開発型及び知識集約型産業分野の創業期企業等を育成するビジネス・インキュベータを設置・運営することにより、これら産業の市内での集積を図る。あわせて、市内産業構造の高度化を促進することを目的に、創業期企業の経営基盤の脆弱性(創業期投資の過大な負担、知識・経験の不足による経営管理の未熟さ、人材・販路・資金等経営資源の不足など)の克服や新分野進出をめざす企業の円滑な事業運営を支援し、その成長・発展を促す。(入所期間:原則3年間)
・施設概要
所在 :大阪市此花区島屋4−2−7−200(JR桜島線・安治川口駅前)
構造 :鉄筋コンクリート造4階建、延床面積約3,500m2
内容 :・入所企業スペース…30室、1室あたり約40〜150m2
  ・共同利用スペース…研修・会議室、試作・実験室、OAコーナー、展示コーナー等
対象企業 :原則として市内の研究開発型の中小企業で、創業期にある企業及び新分野開拓を指向する企業(マイクロ・エレクトロニクス、新素材等の先端技術の活用や、既存技術の組み合わせ等により付加価値の高い製品開発をめざす企業)
特色 :全館機械機動警備システムと各室個別冷暖房設備の設置による24時間対応
開業 :平成2年7月
[2]テクノシーズ泉尾(大阪市泉尾賃貸工場)
 産業の根幹である「ものづくり」を支えてきた基盤的技術産業の支援と良好な操業環境を確保するため、「特定産業集積の活性化に関する臨時措置法」を活用して、工業専用地域の大正区泉尾に整備した中小製造業向け賃貸工場。
・施設概要
所在 :大阪市大正区泉尾6−2−29
構造 :鉄筋コンクリート造4階建、延床面積約2,117.25m2
内容 :・室数…31室、1室あたり約57.6〜95.1m2
  ・駐車場…大型車4台、普通車22台
対象企業 :中小製造業であって、地域産業集積活性化法の対象となる基盤的技術産業を営むもの
開業 :平成11年2月
2)ソフト系インキュベータ事業の展開
[1]大阪デザイン振興プラザ事業
 インテリア、ファッションなどの生活関連分野が成長産業として期待されている現在、この分野の成長を促す環境整備の一環として、デザイナーが大阪に集まり、創造的なデザイン活動を展開できるよう拠点を整備する。平成12年度にはデザインに関するあらゆる相談・指導やデザイナー派遣を行い、情報提供、デザイン活用を促進するなどデザインビジネスを総合的にサポートする「デザインビジネスプロモーションセンター」を新たに設置し、デザインビジネス拠点として機能を強化している。
・施設概要
所在 :大阪市住之江区南港北2−1−10 ATC ITM棟10階
床面積 :2,826.27m2
内容 :・デザイン工房…デザイン企業育成を目的にした事務所スペース
  ・交流サロン…各種デザイン団体、デザイナーのためのビジネス交流スペース
  ・ビジネスプロモーションセンター…デザイン相談・指導、デザイン開発支援、ビジネス情報の提供
                                       など
 開業: 平成8年10月
[2]ソフト産業プラザ事業
 21世紀のリーディング産業として注目されるマルチメディアなど映像情報産業は、インターネットの普及、急速な情報技術や情報基盤整備の進展により、急速に拡大している。映像情報産業は、それ自体が都市型の成長産業であり、かつ多様な産業分野への応用や新しいビジネスヘの展開など既存産業の高度化にもつながる産業であると期待されている。しかし、現状では東京に集中し、大阪では「仕事量が少ない」「人材不足」「制作流通環境が未整備」という悪循環となっており、こうした事態の打開が大きな課題となっている。
 このため、映像情報産業分野の研究開発支援から創業・情報化支援機能まで備えた総合的な振興拠点として平成10年度に「ソフト産業プラザ」を設置し、平成12年度には、インキュベータオフィスを拡張した。人・情報・アイデアの活発な交流を促進するなど拠点機能を高め、同産業の一層の集積を図る。
 さらに、「iMedio(イメディオ)」では、マルチメディア企業の課題である、市場開拓を支援するため、市内のマルチメディアベンチャー企業を対象にネットワークを構築し、インターネット上で共同受注を行うイメディオネットワーク事業を実施している。
[創業・情報化支援施設(iMedio)]
・施設概要
所 在 :大阪市住之江区南港北2−1−10 ATC ITM棟5・6階
床面積 :3,035.44m2
内 容 :インキュベータオフィス・制作スタジオ・研修ルーム・展示サロン・ライブラリー・プレゼンテーションルーム
開業 :平成11年3月
・制作環境サポート機能
 常時接続可能な高速インターネット環境を備えたインキュベータオフィスとしての場の提供や映像・情報通信関連ビジネスを行う上で、ベンチャー等が独自に整備することが困難な制作・開発に関わるシステムを導入し、共同利用サービスを提供する。
・ビジネスサポート機能
 財務、税務などの経営相談や契約、著作権等の法律問題及び制作関連技術の専門相談に対応する中小企業のマルチメディア活用をコンサルティングする。あわせて、情報誌、インターネットホームページ・メールマガジンによる情報発信、展示スペースの活用などを通じ、関連業界の企業や人材の情報をはじめマルチメディア関連の専門ビジネス情報を発信する。また、映像情報関連企業等のもつ能力・アイデアと、既存産業・中小企業の映像情報活用ニーズを取り結ぶ窓口として機能することにより、映像情報技術活用への潜在的需要をマーケットとして生み出していくビジネスコーディネートやイベント・交流会を開催する。
[3]都心部遊休施設等を活用したソフト系産業の振興
 産業創造館においては、「操業準備オフィス」を開設し、「あきないえーど」のスタッフによるサポート事業を行うなど、新しいビジネスに取り組む創業者やベンチャー企業を様々な面から支援している。こうした事業を通して輩出される、創業後まもないベンチャー企業等を市内に定着させるためには、その受け皿施設として、インキュベータオフィスが必要である。
 一方、庁舎移転後等により発生した本市遊休施設を有効に活用を図ることが求められている。
 このため、今後の成長産業分野の育成・振興を図っていくため産業創造館の各種支援策とも連携し、本市遊休施設を活用し、24時間利用可能なオフィスを低料金で提供する「創業促進オフィス」を設置。(契約期間:1年ただし、審査により再契約可)
・施設概要
所在 :大阪市北区南扇町6−28 水道局旧扇町庁舎3階部分
構造 :鉄筋コンクリート造、延床面積約600m2
内容 :室数…23室、1室あたり約6〜17m2
  施設内容…専用オフィス、共用会議室、共用ミーティングスペース、電話回線・インターネット回線、24時間利用可能など
対象企業 :創業後まもない中小企業または大阪市内に営業拠点を新たに設立する中小企業
開設 :平成14年1月

(2)課題及び今後の取り組み
 大阪市においては、既存産業の衰退が進むなか、ソフト系産業の集積を促すより一層の施策が必要である。このため、都心部においても、大阪市の遊休施設をインキュベータ施設に有効活用し、これを産業振興拠点とすると同時に、周辺の企業との交流を促すなど、地域のポテンシャルを活かした産業の集積を促進することが課題である。
 また、ものづくり系産業については、生産拠点の流出による空洞化が進み、下請け企業の倒産による失業者の増加や技術力・競争力の低下が深刻な問題となっており、優れた基盤技術をITなどと融合させ、技術改革による高付加価値製品の研究開発を促すなど、技術力・競争力の強化や新産業の振興に向けた施策が必要である。このため、工業研究所において、創業や第二創業を対象とした研究室を整備し、新たな技術開発を促進し、工業集積地域においては、ものづくり関連産業集積のメリットを活かした、生活関連分野の施設の一層の展開を図ることが課題である。
1)都心部遊休施設等を活用したソフト系産業の振興
 水道局旧扇町庁舎において、平成13年度に開設している「創業促進オフィス」に加えて、ソフト系IT産業や映像、広告、デザイン関連産業など庁舎周辺の地域産業の集積を活かし、地域企業や専門学校との連携を図るなど、地域産業の集積を促進するインキュベータ施設として整備する。
また、都心部にある廃校となった小学校においては、競争力向上や上場をめざすベンチャー企業の成長を促すため、大学の知識・技術と民間ベンチャー・キャピタルの資金を活用できるインキュベータ施設として整備を行う。
[水道局旧扇町庁舎]
・施設概要
所在 :大阪市北区南扇町6−28
  水道局旧扇町庁舎東側2階、4階、5階部分
構造 :鉄筋コンクリート造、延床面積約1,800m2
内容 :・専用オフィス等の整備
  ・交流事業(入居者と地域に集積する映像・IT企業の交流を促進)
  ・知的財産権保護や技術セミナーなど対象企業のニーズに合致した各種サービス
対象企業 :・映像コンテンツ制作などソフト系IT産業に関連するベンチャー企業
  ・放送、映像関連専門学校の卒業者、OB企業
開設 :平成15年度(予定)
2)工業集積地域でのものづくり産業の振興
 工業研究所(図−6)において、試験・研究機関として整備されている設備を活用して、創業支援ラボを研究本棟内に開設することにより、ものづくり系産業の創業者や第二創業をめざす中小企業を支援する。企業化については、産業創造館の創業支援サービスや創業支援融資との連携を図る。
 また、少子高齢化の進展等社会経済環境が変化する中で新たなビジネスチャンスが生まれている状況をとらえ、新産業創出のための大学や研究機関との連携を強化し、生活関連分野での新規事業展開をめざす企業を支援する拠点化に向けた展開を図る。
[工業研究所の創業支援ラボ整備](入所期間:原則2年間最長3年)
所在 :大阪市城東区森之宮1−6−50 工業研究所研究本棟
構造 :鉄筋コンクリート造 床面積188.8m2
内容 :室数…6室
  施設内容…実験台、実験用給排水設備、電話・ADSL対応(契約は自由)
入所対象 :・専門知識とシーズをもち、市内で創業をめざしている者
  ・新分野へ第二創業をめざす市内中小企業
  ・工業研究所のシーズを活用して、市内で創業や第ニ創業を目ざす者
開設 :平成14年度(予定)

3.企業誘致に関する取り組みの強化
 企業誘致の都市間競争の激化に対応して、外資系企業ならびに成長性のある国内企業を誘致対象として、プロモーション活動の充実や企業進出促進支援制度の創設に加え、地域開発と一体となった誘致戦略に取り組む。
1)企業誘致プロモーション活動の充実
 民間団体等との推進体制を確立しながら、内外企業向けの情報提供や東京における説明会・セミナーの開催、個別企業訪問を実施する。また、大阪外国企業誘致センター(O−BIC)において、専門アドバイザーの増員や情報データーベースの構築を行う。
2)企業進出を促進するためのインセンティブ
 成長産業分野(福祉、生活文化、IT、環境、人材、バイオ)の域外企業の市内立地促進のための助成制度の創設及び融資制度の拡充を行い、あわせて、外資系企業の本格進出までの活動拠点をATCにおいて整備する。
[従業員5名以上または床面積50m2以上の規模での進出の場合の支援策]
○初期投資の支援
 ・建物を賃貸する事業所については、建物の賃貸借契約を締結した年度における賃借料の3ヵ月分を補助金として交付(補助限度額:300万円)
 ・「ビジネス創造支援融資」制度における年利率を1.5%→1.0%
○継続立地の促進
 ・事業所税課税対象事業所については、事務所税額に相当する額を最初の事業所税が賦課された年度から3年間補助金として交付(1年度の補助限度額:200万円限度)









日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION