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横浜関内地区における新産業育成方策について
横浜市企画局プロジェクト推進課長 藤田 譲治
1 はじめに
 産業構造の変化などによって、かっては都市の中心地だったビジネス街が衰退する現象は世界的に見られ、ニューヨークのダウンタウンやサンフランシスコの倉庫街などでも一時期、空洞化が進行しました。しかし、最近では一旦は荒廃したこれらの地域にデザイナーやソフトウエア技術者などが集まり、これに伴ってレストランや店舗が進出し賑わいが戻り、今では都市を代表するクリエイティブなエリアとして甦っています。
 横浜市の関内・山下地区(以下、「関内地区」という。)は、横浜の開港以来、横浜の中心として発展し、ミナト・ヨコハマを代表するビジネス街として市の経済を牽引してきました。だが、このところ、隣接するみなとみらい21地区の発展に引き換え、関内地区では企業の流出が続き、空洞化が進行しています。
 もともと、みなとみらい21事業の目的は、関内地区と横浜駅周辺地区に2分されていた横浜市の都心部を、それらの中間に位置した造船所や操車場等を移転させ、更に埋め立てを加えて、関内地区から横浜駅周辺に至る広大な都心部へと拡大・一体化することでありました。
 
 しかし、最近、都心部の一翼を担うはずの関内地区では、大型店の撤退、映画館の相次ぐ閉館などで、商店街やレストランも様変わりし、街からは賑わいが消え、大都市特有の衰退化のプロセスを歩み始めているように見えます。
 だが一方で、新しい視点から見直すと、大型テナントの転出が一段落した後に、民間事業者によって高速通信インフラを備え、時代のニーズを先取りした施設が地区内に誕生し、インターネットやソフトウエア開発など新しいタイプのテナントの集積が始まっていることに気づきます。
 これらの自然発生的な集積は、ニューヨーク・シリコンアレーやサンフランシスコ・マルチメディアガルチで見られる現象と通じるものがあり、大都市特有の新しい動きとして注目されます。
 本稿は、横浜関内地区のこうした変化をにらみながら、関内地区をヨコハマを代表する創造的な地域へと再生することのできる可能性をもつ2つの事業を紹介するものです。
 1つは、今後の横浜経済の発展を支える新産業の支援のため、戦略的に企業誘致を促進することを狙いとした、企業誘致助成制度であり、
 2つ目は、関内地区に、情報・放送・通信・IT関連企業等の集積拠点とし、特にコンテンツ産業の集積・発展を図ろうとする「横浜メディアセンター」の整備です。
 両事業を紹介する前に、この2つの事業例に関係する都心部における新しい産業集積の動向や、なぜ都心部なのかなどについて、簡単に言及した上で、具体的な本市事業を説明することとします。 








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