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(6)産・学・官連携の研究開発
 研究開発の継続は、人や技術の交流を通じて、地元企業の製品・技術開発力の向上や新産業の創出に大きく寄与するとともに、研究開発とその支援機能の集積につながる。
 本市においては「公共交通機関における多目的ICカードシステム」実験(1998年度〜。札幌総合情報センター(株))、「Webと電子メールが連動したソフトウェアを活用した市民・行政のコミュニケーション」実験(1999年度〜)、「VoIPの活用による音声ガイド」実験(2000年度)など、新技術の実用実験が継続されている。
●北海道産学官協働センターと北海道科学技術総合振興センター
 2000年4月、「北海道産学官協働センター(コラボほっかいどう)」が、北海道内の産学官トップ間の議論を機に、国立大学(北海道大学国有地)内に設置する初の民間施設としてオープンし、本市は施設整備にあたって補助を行っている。この施設には産学官共同研究事業ルームを備えており、産学官による共同の研究であること、実用化・事業化を目指したビジネスに近い観点からの共同研究であることなどを条件として、専門家による委員会での選定を経て利用することができる。
 施設の管理・運営にあたっているのは、財団法人北海道科学技術総合振興センター(NOASTEC財団)で、ここに本市からも職員を派遣している。同財団はビジネスのアイデア段階から、研究開発、テーマ検討、ビジネスプラン推進、事業化まで一貫したプロジェクトマネジメントを行っている。大学等は、共同研究・技術指導を中心とした技術支援をし、行政は、研究開発・事業化の基盤づくりを中心とした支援によって連携していくこととしている。
これまで事業化に至った事例には、オゾンを利用した衛生管理機器の開発、雪を活用した住居用冷房システムの開発などがある。
 同財団は企業・起業家に開かれた姿勢をとっており、持込み企画に対しても以下のような支援を行っている。
 [1]自由な交流と意見交換を通じて、新たな共同研究テーマの発掘や事業分野の拡大につなげるため、産学官が連携・交流する“場”と“機会”の提供
 [2]企業のニーズと大学の技術(研究)が密接に結びついた効果的な共同研究体制を構築するための、的確、迅速なコーディネーション
 [3]共同研究成果に関する特許等知的所有権、経営戦略、事業化計画(市場調査、技術開発、販路開拓)などの事業化についての共同研究の実施

●産学官共同研究事業
 財団法人北海道科学技術総合振興センターは、1998年度から2000年度までの3ヵ年にわたって、大学等が持つ研究成果を企業が取り入れ、事業化するための産学官連携のしくみづくりを推進する「産学官共同研究モデル事業」を実施した。
 これに対して本市は、足で踏むと自然に氷が割れるゴムマットの商品化を目指した「凍結路面の解氷技術の確立等に関する研究」、壁材型太陽光モジュールの商品化を目指した「太陽光発電等環境低負荷型エネルギーの有効利用に関する研究」という公共的課題の解決に必要な技術開発のテーマに対して支援を行い、その結果、実用化レベルに近い試作品が完成している。この事業は、2001年度に「産学官共同研究チャレンジ支援事業」として対象分野が拡大され、2002年障害者インターナショナル世界会議での活用を目指した聴覚障害者向け国際会議等参加支援システムの開発などに対して支援している。
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▲解氷ゴムマット
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▲壁材型太陽光モジュール
 以上の支援策と併せ、札幌の風土・特性を生かした産業を振興するため、意欲ある起業家をはじめとする創業初期の中小企業者等を対象に、新規性、技術性、独創性などを有し、産学官の共同研究成果を応用した事業や情報関連事業、雪対策関連事業などの分野で成長が見込まれる製品の開発・事業化に必要な資金を無担保融資(市が保証協会や金融機関に直接損失補償)する「フロンティア事業支援資金制度」を1999年度に新設している。








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