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(3)秋葉原地区の土地利用方針
 秋葉原地区の土地利用方針は、神田市場や貨物駅等の大規模跡地等の適切な土地利用を推進し、新たな交通結節点の形成、東西市街地の一体的利用、商業・業務の機能向上、情報発信拠点となる施設等の導入による情報技術産業等の拠点形成、住宅供給の推進等により、賑わいのある安全で快適な複合市街地の形成を図ることである。(図15)
図15 土地利用ゾーニング及びオープンスペースの整備方針
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 ここで注目される特徴として、業務・商業の集積とともに、北側ゾーンで良好な住環境の形成を目指していることである。都心の空洞化が進むなかで、現在地区内の人口は0であるが、今後地区計画の変更を進めることで、約300戸、1000人程度の居住が見込まれることになる。 
 
(4)民間活力を生かしたITセンターの整備
 ガイドラインでは、地区内の中心にある都有地1.6ha(1及び3−1街区 図13)の売却にあたり、開発コンセプトで示された諸機能を可能な限り実現するため、民間事業者の活力を生かし、IT関連産業の拠点となる「秋葉原ITセンター(仮称)」整備を目指した。 

ア 秋葉原ITセンターの機能の概要
機能 内容
<集客等機能>
最先端のIT機器の展示等を行い、秋葉原に一層の集客を図っていく
・ショールーム
・コンベンションホール
・多機能イベントホール等
・デジタルワークショップ
<産学連携機能>
企業と大学の出会いのプラットホームを作り、新産業の創出や人材育成の拠点としていく。
・サテライト連合大学院
研究分野(参考):電子・通信分野、福祉・ロボット分野、国際メディア分野、環境情報分野等
・プロフェッショナル教育センター
対象科目(参考):ネットワーク技術、電子回路設計技術、ソフトウェア開発技術等
総学生数:1万人/年(最終目標)
・起業センター(インキュベーションセンター)
・総合情報センター
・プレゼンテーションセンター
・産学連携のプラットホーム
<情報ネットワーク機能>
地域企業等に対し、最新の技術や商品の情報発信を行い、また都民が気軽にITを体験できる場を創っていく。
・秋葉原IT拠点情報センター
・学びと創造の場(ネットカフェ等、都民が最新情報通信サービスを体験できる集いの場)
・データセンター(「ITセンター」の業務を支援)
 
イ 民間事業者の公募
 売却に当たっては、秋葉原ITセンターの設置・管理運営能力が最も高いと認められる事業者を選定するため、公募により買受事業者を選定することとした。
これは信用力のある優れた民間事業者から、IT関連産業の集積を高め、世界的拠点の形成を目指す事業計画及び買受価格についての提案を募集し、適正な審査を経て選定を図ろうとするものである。
 提案すべき事業計画は、ITセンターの開発コンセプト及びITセンターの諸機能について整備計画を作成し、その業務内容、運営方法、運営母体の考え方、ブロードバンド対応、産学連携のプラットホームの考え方について具体的に提案し、実現可能性を示すものである。その他、ITセンターの管理運営方法、資金収支計画、センター機能の充実強化案や24時間機能するための支援策を提案することとされている。
 事業計画の提出締め切りは平成14年1月31日とされており、3月下旬には契約締結の予定である。

(5)開発コンセプトの実現に向けた公民の役割
 ガイドラインでは、秋葉原地区のまちづくりに関し、民間のアイディア等の積極的な活用を図りながら、次のように公共と民間が互いに協力・協調して進めていくこととしている。
ア民間事業者
(ITセンターの整備)
 開発の中核となる秋葉原ITセンター等の施設整備・運用は、民間の資金やアイディアを積極的に導入する。
(都市基盤整備)
 秋葉原地区の駐車需要に適切に対応するため、開発事業者等の協力を得ながら付置駐車場の休日における一般利用の促進や、中核駐車場の整備を行う。
 地域の回遊性を高めるため、歩行者デッキの整備など歩行者ネットワークの形成を行政と協調して行う。 
イ東京都、地元区
(導入機能)
 開発コンセプトである「生活・産業創造マーケット」の実現に向けて、IT関連機能にふさわしい用途地域の変更等、都市計画諸制度を運用する。
(土地利用)
 都心居住を推進する観点から、住宅と業務・商業等の用途を適正に配置し、それぞれの用途の健全な育成と、良好な市街地の形成が図られるよう、地区計画の変更を行う。
(住民要望のまとめ等)
 地元住民関係者の開発に係る要望をまとめ、開発に反映していく。
(都市基盤整備)
 開発地区の都市計画道路、公園、情報・通信ネットワーク等の都市基盤を土地区画整理事業等で整備する。
ウ 土地処分者(東京都)
 ・開発地域内には大規模な都有地があることから、土地処分者として、開発コンセプトの実現に向け、主要な機能や地区の施設の導入が図られるように誘導する。
 ・計画・事業についての広報・PR活動等を行い、企業等の進出意欲の醸成を図る。

(6)まちづくりに対する地元からの意見
 秋葉原地区のまちづくりは、地元区、企業住民、地元電気街等と協力、協調して行われている。平成13年5月から6月にかけて5回にわたり、地権者、町会等の延べ300人を対象にガイドラインの説明会が開催された。
 ここでは、ガイドラインに対し次のような意見が出されている。
 ・地元電気街の業務用や顧客のための駐車場の整備
 ・良好な居住環境の回復
 ・公園、オープンスペース、消防署及び交番など公共施設の整備
 ・鉄道で東西に分断されている地域の回遊性の向上
 このような地元の意見は、新しいまちづくりと連携した、地元電気街の活性化につながるものである。これらは既にガイドラインに反映されたものもあるが、今後は地区計画の策定をはじめ都市開発制度の弾力的運用により、まちづくりに積極的に取り入れていくことが予定されている。








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