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[1] 事件直後では、精神的ケアが六十五・八%、情報提供が五十六・二%、警察への付添いが四十七・九%、支援者の紹介が四十一・一%、警察・裁判所付添いが三八・四%、家事手伝いが三十五・六%、マスコミへの対応と、同じような体験をした人と話し合える場の設定が共に三〇・一%、病院付添いが二十三・三%、経済的支援が十七・八%でした。
 その他では、葬儀の手配や相談、周囲への理解を求める手助け・支援組織の情報やパンフレットの提供などを揚げています。
 このことからも、被害直後には多くの種類の支援を必要としていることがわかります。
※自由記述では、
・「事件直後は家庭生活が一変し、精神的にも経済的にも多大な負担がかかり、すべての対応に途方にくれました。そのため、事務的なことすべてに対する支援があれば良かった。」
・「テレビ、週刊誌などのむちゃくちゃな報道をやめてもらいたかった。被害者の尊厳をおとしめるような報道に怒りを覚えた。」
・「買い物や食事の支度などの家事をしてほしかった。また、ひとりで家にいることが辛いので、誰かにそばにいてほしかった。」
・「事件に出会った際の対応の仕方を被害者に確実に知らせてほしい。」
 また一方では、「そっとしておいてほしかった。」と書いている人もいました。
 被害者にはたくさんの支援が必要ですが、被害者により必要とする支援が異なるため、個々の被害者の要望に応じた適切な支援の提供が求められます。
[2] 事件から一年経過した時点では、同じような体験をした人と話し合える場の設定を六十四・七%の人が求め、情報提供が六十三・二%、精神的ケアが六〇・二%、検察庁・裁判所の付添いが三十八・二%、支援者の紹介が三十二・四%、家事手伝いとマスコミヘの対応が、ともに十三・二%となっています。
※自由記述では
・「話し相手がほしかった。」
・「事件後、支援をしてくれる機関の情報や冊子が欲しかった。」
・「愛する家族を失った悲しみが大きく、一人になって生きていかなければならないのかと思うと生きる意味を見出せず、死にたいだけでした。」
・「家族を失ったうえ、家庭崩壊にも陥る被害者遺族は、遺された家族すべてに精神的ケアが必要になる。」
・「事件の捜査、裁判の開催等の時期になるため、専門家による支援が必要。」
・「海外での事件であったため、誰に話しても無駄という気持ちで、出口がひとつもない状態だった。」
・一年九か月後に同じ事件に遭った人と話し合う機会ができ、大変心強い気持ちになれた。」
 このように、一年位が経過した頃から遺族となった辛さが増してくるため、同じような被害者の紹介や自助グループの提供が必要になります。また、裁判に伴う情報提供や傍聴付添い等の支援にも重点を置く必要が出てきます。
[3] 事件から三年経過しますと、同じような体験をした人と話し合える場の設定が七十一・一%、精神的ケアが六〇・〇%、情報提供が四〇・〇%、経済的支援・支援者の紹介が二十二・二%、検察庁や裁判所への付添いが十七・八%となっています。
 この頃から病院や警察、マスコミとの関係が減り、現実の生活に即した支援として、同じ仲間との話し合いを求めたり、精神的支援が必要と感じる気持ちが大きくなることを示しています。
 一方、検察庁・裁判所への付添いを希望する被害者も十七・八%いることは、一人では心細く、不安を抱えながらも刑事裁判に関わりたいと希望する現状を示しています。
[4] 事件から五年経過している人では、同じような体験をした人と話し合える場の設定を求める人が六六・七%、精神的ケアが六〇・〇%、情報提供が四〇・〇%、経済的な支援が二〇・〇%となっています。
[5] 事件から七年以上経過した人では、同じような体験をした人と話し合える場の設定が五十八・八%、情報提供が五十二・九%、精神的ケアが三十五・三%、経済的支援が二十三・五%、支援者の紹介や家事手伝いが十一・八%となっています。
 年数が経過しても、被害者遺族の心の傷は元には戻れないことや、家事支援は継続的に必要なことが伺われます。また経済的支援は、被害直後の当座の支援だけではなく、加齢と共に生活をしていく困難も伺われるため、長期的な支援体制が望まれます。
※自由記述では
・「被害者の将来的なことを相談にのってくれる所がほしい。」
・「生活の不安とともに生きていかなけばならないので、何でも具体的に答えてくれる人がいてくれたらと思う。」
等と書かれています。
 また、「社会に向けての発信活動をしたいが、ひとりでは荷が重過ぎるので同じような被害者との交流がほしい。」等の記述もあることから、支援者を求めるのではなく、同じような体験者からの情報や仲間を求めていることがわかります。
 次に、被害直後のニーズに対する自覚は、年数が経過すると共に変化してくると思われるので、事件から一年未満、一年から三年、三年以上に分けて、被害直後にはどのような支援があれば良かったと思うか、ということについて聞いてみました。【表−3−1】
【表3−1】事件後(事件直後)にどんな支援があったら良かったと思うか(経過別)
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 事件から一年未満の人は、情報提供と支援者の紹介が八十%、精神的ケアや検察庁裁判所への付添いが六十%、同じような体験をした人と話し合える場の設定が四十%、警察への付添い、マスコミヘの対応、経済的支援が二十%必要と答えています。
 一方で、家事手伝いや病院付添いを揚げた人はいませんでした。これは、日常生活のことのため、自分たちの家族だけで何とかしなければならないと思い込み、支援を受けるという発想すら浮かんでこないことが推察されます。
 事件後一年から三年未満の人では、精神的ケアが六〇・九%、情報提供が五十二・二%、警察への付添いとマスコミヘの対応が三十四・八%となっています。
 三年以上経過した人では、精神的ケアが六十八・九%、警察への付添いが五十七・八%、情報提供が五十五・六%、支援者の紹介と家事手伝いが四十四・四%の人があれば良かったと答えています。
 多くの被害者が希望している、「同じような体験をした人と話し合える場の設定」を希望する回答が少ないのは、事件直後は目の前の問題に対処するのが精一杯で、仲間を求める気持ちにもなれない現状を示していると思います。
(3) 事件後知りたかったことについて【表4】
【表4】事件後知りたかったこと
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警察の捜査状況についてが六十八人、刑事手続きについてが四十九人、どこでどんな支援が受けられるかを知りたいが四十七人、民事裁判についてが四十六人、加害者への賠償等の請求方法についてが三十二人、マスコミとのコンタクトの取り方が十八人と回答しています。
 男女別でみると、情報を求める率に差はありませんが、理不尽なことを社会に訴えたいため、マスコミとのコンタクトの取り方を知りたいと望むのは女性に多く、被害別では殺人遺族の三分の一、交通被害の四分の一の人が望んでいました。
 被害者にも落ち度があったのではないかと思われがちな事件の場合には、社会に訴えにくいという現状もあると思われます。
 その一方で、自由記述として、テレビや週刊誌に報道をやめさせるにはどうしたらよいのかを知りたかった、と書いている人もいることから、被害者の許可もなく、個人情報をマスコミが自由に使っている現状を改善し、被害者のプライバシーをどう守るかが検討されなければならないと思います。
 また、ほとんどの被害者が、警察の捜査状況を知りたかったと答えています。警察も努力していると聞いてはいますが、被害者の要望に沿えるまでには、まだまだ課題が多いと思います。
 経過別では、一年未満の遺族の中で、加害者への賠償等の請求方法やマスコミとのコンタクトの取り方を知りたいと答えた人は一人しかいませんが、三年以上経過すると多くなってきます。
 事件から三年以上経った時、社会に訴えたいという気持が出てくるものと思われます、
※自由記述では
・「今何をしなければならないか、今後のために何が必要なのかを知りたい。」と記述していることから、事件の真実を知り、裁判に関与しながら、出来得ることを必死に模索していることが伺われます。
(以下次号)
図書の紹介
犯罪被害者支援の軌跡 〜犯罪被害者心のケア〜
(社)被害者支援都民センター 相談支援室長代理
大久保 恵美子著
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・少年写真新聞社・98ページ・1,260円(税込み)
● 本書は、被害者に接する人が知っておくべき基本的なことがらがわかりやすい文章で書かれており、著者自身の体験に裏付けられた説得力のある内容で、被害者支援の入門書としても優れています。
● 申込先
・少年写真新聞社
〒102−8232 東京都千代田区九段北1−9−12
TEL.03−3264−2624 FAX.03−5276−8989
・被害者支援都民センター事務局
〒169−0052 東京都新宿区戸山3−18−1
TEL.03−5287−3338 FAX.03−5287−3339
※送料は別途、又は着払いとなります。








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