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III 介護保険導入前後での変化
1. 利用者・家族との関係
 介護保険が導入された後で、福祉職員と利用者やその家族との関係は、「変わらない」と感じている者が76.5%と最も多く、「良くなった」、「悪くなった」はともに1割程度であった。介護保険の導入から1年半が経過したが、従来からの利用者がまだ多いのがこのような結果につながっているのであろうか。〔第21図参照〕
第21図 介護保険導入前後での変化
[1] 利用者・家族との関係
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[2] ケア計画
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[3] 賃金
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[4] 職員数
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[5] 労働時間
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[6]介護の専門性への影響
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影響を感じるところ
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2. ケア計画
 介護保険導入後に施設のケア計画は、「充実した」と感じている者が42.1%と最も多いが、「変わらない」と感じている者も39.1%と均衡していた。
 なお、「充実しない」と感じている者が18.9%と、2割近くいたが、これは、例えばお花見会やクリスマス会などの行事が、利用者本人の負担になったなどの理由で減っている等見聞するが、このような、実際の介護ではないものの、利用者がゆとりをもった豊かな生活を送る機会が削られたという意識が、反映されているのであろうか。〔第21図参照〕
3. 賃金
 介護保険の導入後に賃金が「減った」と感じている者の割合が31.4%と、回答者の約三分の一を占めていた。どのような項目で減ったと感じたのかまでは調査していないので、俄かに判断はつかないものの、本給自体のベースダウンということは考えにくいことから、諸手当の見直しや、人員配置の改善等により、結果的に時間外勤務や夜勤回数などが縮減したことなどにより、実績ベースで減ったと感じているということであろう。「増えた」と感じている者の割合は3.8%と、5%に満たない結果であった。〔第21図参照〕
4. 職員数
 介護保険の導入後も介護職員の数は「変わらない」と回答した者の割合が最も高く、44.7%で、「増えた」と回答した者の割合は33.8%であった。
 なお、「減った」と回答した者の割合が21.5%と、2割を超えていたのが注目される。
 なぜ2割を超える者が「減った」と感じたのかは俄かには判断できないが、現実に職員数が減っているということは考えにくい。例えば、ショートステイの利用者が増えて、そちらに職員が割かれた結果、入所者の介護に当たる人数が減ったということなどが考えられる。〔第21図参照〕
5. 労働時間
 介護保険の導入後、労働時間は「増えた」と感じている者が47.2%、「変わらない」と感じている者が52.6%とほぼ半数に分かれた。所定労働時間が増えるということは考えられないため、介護保険の導入に伴い、書類の作成等の事務作業が増え、その処理のために時間外勤務が増えるなどしたためであろうか。〔第21図参照〕
6. 介護の専門性
 介護保険導入後に介護の専門性に影響があったと感じるか、あったとすればそれはどのようなことなのかを尋ねてみたところ、影響が「あった」と感じた者の割合は、64.5%と過半数に達していた。その内容を複数回答でみると、「経営状態を常に意識して介護するようになった」と回答した者の割合が57.2%で最も高く、以下「事業評価、サービス評価が実施された」が44.4%、「人権や権利擁護について研修や啓蒙活動が行われるようになった」が38.7%と続き、「資格が賃金に反映されるようになった」は7.7%であった。〔第21図参照〕








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