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IX. 中心市街地における市街地の整備改善及び商業等の活性化の一体的推進に関する法律について
1.背景
 中心市街地は、文化、伝統を育み、各種の機能を培ってきた「街の顔」であるが、近年、空き店舗の発生等産業活動の沈滞、居住人口の減少等による空洞化が生じている。
 このような危機的な状況にある中心市街地の活性化は、地域住民の生活環境の改善、都市のアイデンティティの回復、全国の都市が交流を進め国土全体がバランス良く発展していくために緊急に解決すべき課題である。
 このため、市街地の整備改善と商業等の活性化を一体的に推進する新たな法制度を構築する必要がある。
2.主な内容
(1)法律の特徴
ア、市町村の役割の重視
 それぞれの地域の特色や、地域の住民、商業者などの意向を十分に反映するため、地域にとって身近な市町村の役割を重視している。
イ、市街地の整備改善に関する事業と商業等の活性化に関する事業を車の両輪として、民間活力の活用を図りながら、ハード・ソフトにわたる各種施策を総合的かつ一体的に推進する。
(2)対象となる中心市街地
 これまで都市の中心としての役割を果たしてきたが、現在では土地利用及び商業活動の状況からみて、機能的な都市活動の確保等に支障が生じ、又は生じるおそれがあり、また、当該市街地において市街地の整備改善及び商業等の活性化を一体的に推進することが、当該都市及びその周辺の地域の発展にとって有効かつ適切であると認められる市街地を対象地域とする。
(3)スキーム(国土交通省関係部分)
[1]国による基本方針の策定
 主務大臣は、中心市街地における市街地の整備改善及び商業等の活性化の一体的推進に関する基本的な方針を定めなければならない。
 基本方針には、
・市街地の整備改善に関する基本的な事項
・商業等の活性化に関する基本的な事項(以上、経済産業、国土交通、総務大臣が策定)
・公共交通機関の利用者の利便の増進を図るための事業に関する事項

(国土交通大臣が策定)
・電気通信の高度化を図るための事業に関する事項(総務大臣が策定)
・特定事業の実施について指針となるべき事項(国土交通大臣その他の事業所管大臣が策定)等を記載。
[2]市町村による基本計画の作成
 市町村は基本方針に基づき、
・市街地の整備改善のための事業に関する事項
・商業の活性化のための事業に関する事項
・公共交通機関の利用者の利便の増進を図るための事業に関する事項
・電気通信の高度化を図るための事業に関する事項
・特定事業に関する事項
 等を内容とする基本計画を作成することができる。
 基本計画は、主務大臣及び都道府県に送付しなければならない。主務大臣及び都道府県は、市町村に対し助言ができる。
[3]国による特定事業計画の認定
 中心市街地の再活性化に資するものとして基本計画に定められた特定事業を実施しようとする者は、特定事業計画を作成し、国土交通大臣その他の事業所管大臣へ認定申請をする。事業所管大臣は、基本方針の内容等に照らして適当と認められるときは認定することとする。
 
 〈国土交通省運輸関係の特定事業〉
・中心市街地に係るバス事業の利用者の利便の増進を図るために実施する事業(具体的には、運行回数の増加)
・中心市街地における貨物の運送の効率化を図るために実施される貨物運送効率化事業(具体的には、共同集配事業)
(4)支援措置
 特定事業計画について認定を受けた者に対しては、本法による法律上の特例に加え、税制上の特例等を講ずることとする。
 
 〈国土交通省運輸関係の支援措置〉
○法律上の特例
・道路運送法の特例
 特定事業者が認定特定事業計画に従って一般乗合旅客自動車運送事業を行っている場合において、利用者の利便の増進に資するため、事業計画の変更(運行回数の増加)を行う場合には、認可を届出とするものとすること。
・貨物運送取扱事業法の特例
 認定特定事業計画に従って貨物運送事業の効率化(共同集配事業)を図る特定事業者に対し貨物運送取扱事業法のみなし許可等の特例を適用するものとすること。
○税制上の特例
・貨物運送効率化事業(共同集配事業)の用に供する施設
 (特別償却〔8/100〕、特別土地保有税及び事業所税〔新増設〕の非課税)
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(注)市町村の基本計画は主務大臣の基本方針に即して策定
3.その他
(1)関係府省庁連絡協議会の開催
 中心市街地活性化に向けた市町村の取り組みに対して重点的な支援を行うため、関係8府省庁からなる「中心市街地活性化関係府省庁連絡協議会」を設けている。
 連絡協議会では、市町村等に対する効果的な支援のあり方などについて意見交換を行うとともに、提出された基本計画に定められた事業について、中心市街地の活性化に効果があるか、地域の創意工夫が生かされているか、実現の可能性は高いかなどの観点から判断し、総体として優れた取り組みに対してより重点的な支援が行われるように関係府省庁の連絡を図っている。
(2)統一窓口の開設
 市町村の事務負担の軽減と連絡の円滑化を図るため、基本計画の写しの受理、市町村からの各種問合わせ・相談への対応、その他中心市街地の活性化に関する情報の収集、整理及び提供などを行う関係府省庁の統一的窓口として、幹事省を中心に「中心市街地活性化推進室」を開設している。








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