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4.判決と各判事の意見
(1)判決
 両当事国が求めた洋上補給についての沿岸国およびその他の国の権利関係について、裁判所は、国連海洋法条約にはその件に関する明示的な規定はない、とした。そうして、判断しなければならない問題は、ギニアの行動が適用可能な条約規定に適つたものであったかどうかについてであるとして、排他的経済水域における洋上補給について、沿岸国およびその他の国の権利関係というより広い問題に立ち入ることなく、本件固有の状況に適用可能な法にもとづいて判決をおこなった、として、洋上補給の問題については判断を行わないとした。(11)
 裁判所は、国連海洋法条約のもとで、ギニアが海岸から250kmの距離まで拡がる関税圏内の排他的経済水域でその関税法を適用することが正当化されるかどうかについての検討を行った。
 判決は、沿岸国は、条約第2条および第21条および第33条1項によって、領海および接続水域においてはその関税法令を適用することができ、また、第60条2項によって、排他的経済水域の人工島施設及び構築物に関しては関税法令を適用する管轄権を有するとした。しかし、それ以外の部分の排他的経済水域で、沿岸国は関税法を適用する権限を与えられていないとして、漁船に対する軽油の販売からの税収の増大がギニアの利益にとっていかに本質的であれ、排他的経済水域の一部に対して関税法を拡大することがギニアの利益を保護するための唯一の手段であることを示すことができなかった、と述べて、ギニアは排他的経済水域の一部を含む関税圏に関税法を適用したことで、国連海洋法条約に違反したとした。そのため、サイガ号の拿捕及び抑留、船長の訴追及び有罪判決、積み荷の没収ならびに船体の押収は条約違反であったと認定した。(12)
 このように、裁判所は、ギニアが排他的経済水域においてその関税法令を適用したことの是非についての判断を行うというかたちの立論を行っており、洋上補給そのものについての判断は行わなかった。このような裁判所の態度に対しては、何人かの判事が、分離意見または反対意見を述べている。








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