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(3)試験結果の解析
[1]吐出圧と全散布幅
 表IV-7abに示すように吐出圧と全散布幅は、分散剤及び水とも吐出圧が高くなる程分散幅が広がるが、吐出圧0.2Mpaと0.4Mpaとでは約3%広がる程度である。
 また、分散剤と水とでは当然粘度が1cStの水の方が散布幅が広いが分散剤(30cSt)との比は約3%で粘度による散布幅の差は小さい。
 今後、同種のテストでは、水を使用してデーターを収集することで物理的なおよその数値を把握することが分った。
 なお、分散剤の吐出圧0.4Mpaの散布状況は空気中に一部の分散剤粒子が漂った。この為、粘度30cSt以上の液体の場合、粒径が500μm以上となるノズルの選択が必要となる。また、本試験時(0.4Mpa)の全散布幅の計測では、計測水面の分散剤粒子の着水位置の境界線が不鮮明であった。
 分散剤による吐出圧0.4Mpaの散布状況を写真IV-2に示す。
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写真IV-2 散布状況(0.4Mpa)
[2]吐出圧と吐出流量
 図IV-12に示すように、吐出圧が高くなる程吐出流量が多くなる。分散剤の場合吐出圧0.2Mpaの吐出流量を1とすると0.3Mpa及び0.4Mpaの吐出流量はそれぞれ1.30倍及び1.5倍程度に増加する。また、水の場合は、それぞれ1.23倍及び1.42倍となる。
 分散剤と水の吐出流量は吐出圧が高くなる程、分散剤の流量が水の流量より多くなる傾向を示した。
 このことは、全吐出圧力の各項目による摩擦抵抗増加分等を分散剤と水とで比較すると次の通りである。
「全吐出圧=液の粘度+ホース+散布管+揚程+各ノズル吐出圧」
  分散剤  
全吐出圧        (ポンプ吐出口で設定)
液の粘度 30cSt 1cSt
ホース長さ 4.4m 24.7m
散布管長さ 4.04m 4.04m
全散布幅(0.4Mpa) 4857mm 4997mm
吐出流量(0.4Mpa) 8.61l/min 8.07l/min
 
 吐出流量に影響する要因として上述のパラメーターで見ると液の粘度とホース長さの2項目を挙げられる。この両項目の抵抗増加分を推量すると液の粘度による抵抗増加より、ホース長さの違い(分散剤4.4m、水24.7m)による抵抗増加が大きいことにより分散剤流量が多くなったものと考えられる。
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図IV-10 粘度の違いによる吐出圧と全散布幅
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図IV-11 吐出圧と全散布幅(ノズル4個)
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図IV-12 叶出圧と吐出量(ノズル1個)
3 自己攪拌型油分散剤散布装置の試作要件
 前述したIV-2の1及び2項の試作結果から知見を取入れて船舶用自己攪拌型油分散剤散布装置の試作要件を纏めると次のとおりである。
(1)作業船等の設置要件
[1]作業船の舷側高さ 2m(上限3m)
[2]作業船による散布速力 5ノット〜8ノット程度
(2)散布装置の試作要件
[1]ノズル間隔1500mm
[2]吐出圧範囲0.2Mpa〜0.4Mpa
[3]圧力調整 リリーフバルブの開度により調節(電力ポンプの場合) 又はエンジンスロットルの開閉により調節(エンジンポンプの場合)
[4]揚程 2m程度(散布管の取付高さ等による)
[5]散布管長さ約4.0m(3分割)
[6]散布管内径約20A(JIS規格による適合の管径を選択)
[7]散布管材質sus (軽量化を図る)
[8]ノズル 1/4MVEP4078S303
[9]噴射角 40度(噴射角許容範囲±5度)
[10]ノズル個数3個
[11]ホース長さ10m
[12]ホース内径20A(流量22〜38l/min)
[13]ホース材質耐油性(フレキシブル)
[14]ポンプ流量1m3/h〜3m3/h程度
[15]ポンプ揚程約5m
[16]エンジンポンプ又は電動型ポンプ
[17]その他 散布管は組立式、伸縮式、折りたため式を検討する。
 以上、得られた知見から自己攪拌型油分散剤散布装置を試作することとした。








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