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サントメ・プリンシペ国、ガボン国訪問記
鈴木 明彦*
*(財)海外造船協力センター 技術協力部副部長
1.はじめに
 本年2月末から3月にかけ、JTCAの補助事業である「専門家派遣事業」として、サントメ・プリンシペ国、ガボン国を訪問する機会に恵まれた。今回の派遣はサントメ・プリンシペ国における運輸関係施設等の技術指導を目的として実施されたものであり、ガボン国には帰路、サントメ・プリンシペ国を兼轄する在ガボン日本大使館に成果報告のため立ち寄ったものである。
 「サントメ・プリンシペ」と聞いてこれがアフリカにある国の名であることを知っている人がどれだけいるだろうか。この様に我々日本人にとってなじみの無い国にわずか1週間足らずではあるが滞在する機会を得たので、その概要をガボン国も併せ紹介したい。
 サントメ・プリンシペ民主共和国はアフリカ大陸西岸、ガボンの沖合い約300kmのギニア湾に位置し、火山成因のサントメ島及びプリンシペ島からなる国である。サントメ島はほぼ赤道上に位置し、同島南端の小島を赤道が通過している。プリンシペ島はサントメ島の北北東約150kmのところに位置する。面積はサントメ島855km2、プリンシペ島110km2で、アフリカ諸国ではセイシェルに次いで2番目に小さく、東京都の約半分である。
 サントメ・プリンシペ国に入る主な経路は二つある。一つは旧宗主国であるポルトガルのリスボンからポルトガル航空のエアバスで旧植民地である大西洋上の島国カーボヴェルデを経由するものであり、もう一つはパリからエールフランスでガボン経由で至るルートである。ポルトガル航空は週1便、エールフランスはガボンに隔日1便、ガボンとサントメ間は現地航空が週6便運航している。
 今回は、入国ビザ取得の関係もあり、リスボン経由サントメ・プリンシペを訪問し、帰路はガボンにて大使館を訪問後パリ経由帰国した。なお、日本にはサントメ・プリンシペ国の大使館は無く、従って入国ビザも日本では取得出来ない。
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図-1 サントメ・プリンシペへの経路
2.サントメ・プリンシペ国
 リスボンから10時間、日本からは合計25時間の飛行後、日本を発って3日後の午後ようやくサントメ空港に到着した。
 入国審査は審査官の前に群がって早いもの勝ちでパスポートを出すもの。アフリカに来た事を先ず実感。形式的な税関検査を経て入国。空港にはバス、タクシーはない模様で予め車の手配が必要。我々は事前に手配していた運転手付きレンタカーでサントメの町にあるホテルに向かった。
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図-2 サントメ・プリンシペ国
(1)一般概況
 気候は基本的には熱帯雨林気候であり、低地では年間を通じ高温・多湿である。サントメ島内には2,000mを越す高い山も存在し、地形の変化、高度によって気温も変化する。雨季は10〜5月で、多量の雨が降り、サントメ島南西部、中央山岳では、年間3,800〜5,00mm、比較的雨量の少ない北東部でも年間1,000mmの降水量がある。
 島の東側をアフリカ大陸に沿ってベンゲラ海流(寒流)が北上しており、この影響を受けてほかの熱帯地域に比べ若干気温も降下してしのぎやすくなっている。
 我々の滞在中は雨季に当るが、雨は降らず、風もなく穏やかな日が続いた。気温は30度程度で湿度が高く丁度日本の夏と同じ感覚であった。
 人口は、約142千人(2000年)でほとんどがバンツ系アフリカ人であるが、ポルトガル系の混血も少数であるが見られる。宗教は、カトリックで、公用語はポルトガル語であり、仏語はかなり通じる様だが、英語はほとんど通じない。
 サントメ・プリンシペ国は1975年にポルトガルから独立し、旧宗主国のポルトガルと緊密な関係にあるほか、フランス等を中心とする先進諸国寄りの現実的外交を推進している。
 同国の経済は、輸出収入の約9割を占めるカカオに全面的に依存している。
 主な貿易相手国は、輸出がオランダ、ドイツ、ポルトガル、輸入がポルトガル、フランス、アンゴラである。
 我が国は、サントメ・プリンシペに食料品等を輸出しており、1998年の輸出額は122万ドルである。
(2)歴史
 1470年ポルトガル人が上陸。バンツ系黒人を強制的に移住させ、農業(カカオ、コーヒー、さとうきび栽培)に従事させ、後奴隷貿易の中継基地となった。1522年以来ポルトガルの植民地であったが、1951年に海外州となり、1975年に独立を達成した。独立とともにポルトガル人プランテーション経営監督者は島を去り、技術労働者であったカーボヴェルデ人も去ったため、政府はプランテーションを接収し、国営化したが、栽培・生産技術の未熟さ、生産設備の老朽化、資本力の脆弱さ等から経営は行き詰まり、プランテーション経営は政府の重荷となっている。








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