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イソブネ前面
 
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オモテの部分(穴は帆柱を立てる穴)
 
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オトヒメ様(フナダマサマ)のシルシ
 
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トモのケショウイタ
 
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イソブネをトモの側面から
 
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イソブネ後面(ムダマの底面がカーブしているのがわかる)
 
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オモテのイタゴをはずしてムダマを見る
 
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ドノマのイタゴをはずした状態
 
3)船体の特徴
 イソブネの大きさはムダマの大きさで表現する。ここで造船するイソブネの標準的な大きさは、16尺2,3寸から5寸、クチハバ(ムダマの最大幅)で2尺9寸である。コンブトリ用の船はこれより大型でムダマの長さ18尺から18尺5寸、クチハバ3尺2,3寸である。今回造船したイソブネのムダマは16尺5寸、ムダマの幅2尺8寸とした。
 北海道渡島半島の津軽海峡沿岸のイソブネの外見上の特徴として、ミヨシの形の違いがある。渡島半島の東部にある恵山から函館市西部にある木古内町までは、イソブネのミヨシが少しカーブを描いているのに対し、福島町、江差町方面のイソブネはミヨシが直線になっている。また、ムダマの形も、松前方面では張りを持たせず真っ直ぐにする傾向にある。
 トモの幅の基準はドウナカ(ムダマの中間で一番幅の広い部分)の6掛け(6割の幅)であったが、船外機を付けるようになってからトモの幅が広くなった。船外機の重さでトモが沈むのを防止するため、8掛けとか8掛け半になってきた。
4)用材
 船底部材(ムダマ)は古くはカツラが最適とされたが、函館周辺ではスギを用いることが多い。舷側板のタナイタ(カイゴ)はスギが用いられる。昔は用材の準備は、漁師自身が行うことが多かった。特にムダマ材は漁師自身が山取したものを里に下ろし、船大工が仕上げるのが一般的であった。
 今回、ムダマは製材所から杉材を調達し、機械製材を行った。ムダマ材を機械製材するには特別の技術が必要で、今回それを担当した三沢製材所はこれを行うことの出来る数少ない製材所の一つである。ちなみに同製材所の先代は、ドンブネと呼ばれる大型の網船の建造で有名な船大工であった。
 カイゴは平石さんが造船所内に保管していたものを使用した。また船首のミヨシや船尾のトダテはヒバを使用している。平石氏によると、ヒバまたはヒノキを使用することで船を美しく見せ、値打ちを上げる意味もあるという。また船体の補強材(アバラ)、舵、舵の付く所(トコ)は、乾燥すると堅いクリを使用している。本来トコは赤松が最適である。舵を動かした時に、適度にアブラがあって滑りがよく、摩擦で擦り減りにくい木が向くそうである。舵はナラやカシを使うことが多かったという。またアバラは、本来ヒバの曲がり木が最適という。山の斜面に生えるような根曲がりをそのまま利用したものが、強度が強く特によいが入手し難く、枝曲がりは比較的入手しやすいものの節がありあまり良くないという。
 昔は木材の伐採を専門に行う、ヤマゴと呼ばれる人がいて、ちょうど使い良い木を見つけたものだが、現在はヤマゴもいないので、調達が困難だと平石氏は言う。また釘は、和船専用の船釘を使用するが、現在船釘を作る鍛冶屋も廃業し、入手困難となっている。今回は平石さん自身が所有していたものを使用したが、足りない分については、廃船から抜いたものを磨き、新たに亜鉛をかけたものを使用した。漆も現在入手し難く、平石氏も近年は接着剤を使用しているという。








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