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3) 機械油圧式ガバナ
(1) 構造と機能
 舶用ディーゼル機関に用いられている油圧式ガバナはウッドワード社が生産しているウッドワードガバナ(SG形、PSG形)とゼクセル社が生産しているゼクセルガバナ(RHD6形)が用いられている。
 例として、ウッドワード社製について説明する。SG形はシンプルガバナでPSG形は緩衝式補正装置により恒速運転ができドループ機構を設けている。作動油のトルク容量は全作動範囲36度に亘り、12又は24ポンドインチの2種があり、これらは内蔵安全弁のバネを除けば全く同じである。両者とも出力取出軸には燃料減方向へ引戻すための戻しバネを必要とし、前者は20ポンドインチ、後者は40ポンドインチ程度のトルクを出力軸に設けなければならない。殆んどの場合、作動油はシステム油を用いガバナ入口で最低0.05MPa(0.5kgf/cm2)の圧力が必要でフィルタメッシュは40ミクロン、容量は8l/min以上を必要とする。
 これらのガバナは2・119図に示すように直立又は水平で機関へ取付けられ駆動軸はスプライン又は歯車によりカム軸などから駆動され、出力軸はガバナの片側からでも両側からでも取出せる。また速度調整軸をアイドルスピード位置より更に廻すことで機関は停止する。
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2・119図 ウッドワードガバナ構造図
 システム油は給油口からガバナに入り、ギヤポンプにより吐出され圧力が高まるとリリーフ弁が開き、油を循環させると共にリリーフ弁バネ力が強くなり給油口からの流入を制限する。
 作動油圧が低下するとリリーフ弁が戻り循環油を制限すると共に給油口より油を流入させる。余分な油はドレーン穴から機関内部へ排出する。
 機関が一定の回転速度で運転中はコントロールランドがボールヘッドのパワーピストンヘ通じる孔を閉塞し、ウエイトの遠心力と調速スプリング(スピーダスプリング)のバネ力が釣合っている。負荷が増加すると回転速度が下がり、ウエイトの遠心力が弱まりバランスが崩れ、バネ力でコントロールランドを押し下げボールヘッドの孔から作動油が流れパワーピストンを押し上げ、出力レバーを押して出力軸を燃料増方向へ廻し、噴射量を増して回転速度が上昇する。出力レバーが押し上げられると速度ドループレバーピンは上方へ押し上がり、フローティングレバーを持ち上げて調速バネを引き上げるためバネ力は弱まり、ウエイトの遠心力が強まり、コントロールランドを引き上げて孔を閉塞し、パワーピストン部への作動油流入を止めてパワーピストンの動きを止める。このようにパイロットプランジャを元の位置へ戻す特性を速度ドループという。
 負荷が軽くなると機関の回転速度は上昇し、ウエイトの遠心力は大きくなり、コントロールランドを引き上げ、出力ピストン下部に働く油は逃げ、圧力が低下する。戻しバネ力により出力軸と出力レバーは燃料減方向へ廻され、速度ドループピン位置も下がり、フローテイングレバーが下降し、調速バネ力が増し、ウエイトの遠心力と釣合い、コントロールランドを押し下げ、ボールヘッド孔を閉塞する。
 出力軸の回転角に対する速度の変化量は速度ドループピンの位置によって定まり、ウエイト方向に動かせば小さくなり、パワーピストン方向へ動かせば変化は大きくなる。
(2) 機械油圧式ガバナの特徴
[1] 小さなフライウエイト
[2] 小さな調速スプリング
[3] 小さなスラストベアリング
[4] 全体的に小形である。
[5] デッドバンドが小さく感度がよい。
[6] 作動油による潤滑作動があり耐摩耗性がある。
[7] 作動油の中にあるため耐食性がある。
(3) 点検と整備
 特にパイロットバルブプランジャ先端部分のコントロールランドの角が摩耗し丸味のあるものは交換する。リリーフ弁の摩耗、パワーピストンとシリンダの摩耗、ウエイトの作動不良、調速スプリングの損傷、ドループピンとフローティングレバーの摩耗、ポンプギヤの摩耗などを点検し損傷の激しいものは交換する。
4) オートマチックタイマ(自動進角装置)
(1) 構造と機能
 このオートマチックタイマは遠心力を利用して噴射時期を自動的に調整する仕組みになっている。
 オートマチックタイマの自動進角調整は次のようにして行われる。すなわち、回転数の上昇とともに遠心力によって、フライウェイトはフライウェイトホルダピンを中心に外方へ動きフライウェイトにつけられた曲面は、タイマスプリングを圧縮しながらフランジの足にそって外方へ動く。一方フランジはカムシャフトに直結されているので、タイマスプリングの圧縮分だけカムシャフトは回転し噴射時期を早める。
(2) 点検と整備
 定期点検時にはオイルを全量抜き出して汚れを点検し、金属粉が混入して居れば分解し摩耗している部品を交換整備する。なお、一年に一度は必ず油量を点検し減少して居れば補給する。
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2・120図 オートマチックタイマの構造と作動
2・121図 オートマチックタイマの構成部品
2・10表 オートマチックタイマ進角度(例)
  ポンプ回転数 エンジン回転数 進角度 噴射時期
タイマ進角度 550±50mim-1(rpm) 1,100min-1(rpm) 0゜ 21゜
800min-1(rpm) 1,600min-1(rpm) 1.9゜±0.5 24.8゜±1
1,050min-1(rpm) 2,100min-1(rpm) 4.5゜±0.5 30゜±1








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