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2.7 調速装置
 調速装置とは、エンジンにかかる負荷が変化した場合、回転速度が変わるため、エンジンの回転速度を検出し、要求通りの設定速度になるように自動的に燃料ポンプの燃料噴射量を調節して、エンジンの回転速度を一定に保つ機能を持つ装置である。
1) 調速機の種類
調速機(ガバナ)には一般に次のものが多く使用されている。
[1] 機械式ガバナ
[2] 機械油圧式ガバナ
[3] 空気制御式油圧ガバナ
[4] 電子式ガバナ
小形ディーゼルエンジンは大部分が機械式ガバナ、中形ディーゼルエンジンには機械油圧式ガバナを採用しており、大形および超大形ディーゼルエンジンには空気制御式油圧ガバナが採用されているが、最近では特に超大形では電子式ガバナが採用されることが多くなってきた。
 燃料制御の作動としては[2]と[3]はほぼ同じであるので、ここでは機械式ガバナと機械油圧式ガバナの構造および作動について説明する。
2) 機械式ガバナ
(1) 構造と機能
 重錘が回転する時に生ずる遠心力とバネ力の釣合いによって燃料の噴射量を調整し、回転速度を一定に保持する働きを持たせたオールスピード(低速から高速域まで作用する)タイプのガバナである。
[1] 単筒形燃料ポンプ用機械式ガバナ
 2・116図に示すように、エンジンの回転速度を決める調速ハンドル、エンジンの回転と連動して回転しているガバナウエイト部分、燃料ポンプの噴射量調整桿との連結リンクおよびスプリング等より構成されている。
 ガバナウエイトは、ウエイト支え台にピンで取付けられている。
 ガバナウエイト支え台とガバナ軸およびガバナギヤはキーまたはナットで固定されており、クランク軸が回転するとクランク歯車、中間歯車を介してガバナギヤが駆動され、ガバナ支え台が回転してガバナウエイトに遠心力が生じる。
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2・116図 機械式ガバナ
 エンジンの回転速度が高くなればガバナウエイトに働く遠心力は大きくなり、ガバナウエイトピンを支点としレギュレータスプリングを引張りながらガバナスプリングを圧縮して外側に開く。
 ガバナウエイトが遠心力で開くとガバナスピンドルを左側へ動かし、この頭部がレバーを動かして、燃料噴射ポンプの調整桿(ボッシュ形ポンプ)またはレギュレータスピンドル(デッケル形ポンプ)を作動させ、噴射量を少なくする。
 また反対に回転速度が下がってガバナウエイトにかかる遠心力が小さくなると、ガバナスプリングの圧力とレギュレータスプリングとの引張り力によってガバナウエイトが閉じて、燃料ポンプの調整桿(ボッシュ形)またはレギュレータスピンドル(デッケル形)を作動させ、燃料の噴射量を多くする。
 すなわちガバナウエイトの開きが多くなるほど燃料の噴射量は少なくなり、開きが少なくなる程、噴射量は多くなる。このガバナウエイトの開閉を調整し回転速度を上げ下げさせるために、レギュレータスプリングがある。このスプリングは調整ハンドルを上げるほど力が強くなり、ガバナウエイトは開きにくくなり燃料が多くなって、回転速度は高くなる。反対に調整ハンドルを下げればスプリングの力は弱くなって、ガバナウエイトは開きやすくなり、燃料が少なくなってエンジンの回転速度は低くなる。なお一定回転速度時においてエンジンにかかる負荷の変化による回転速度の変化と調速機の作動には2・117図に示すような関係がある。
 回転速度が高くなると→ガバナウエイト開く→噴射量少なくなる→回転速度下がる→ガバナウエイト閉じる→噴射量多くなる→回転速度上がる→ガバナウエイト開く→噴射量少なくなる→回転速度下がる
 このような働きにより常にエンジンの回転速度は一定に保たれているのである。しかし各部の調整が悪いと回転速度にむらが発生したり回転速度が上がらないとか、下がらないというような不具合を招くことがあるので、調整は十分におこなわないと正常な運転をすることがむずかしい。
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  (注)
   開=ガバナウエイトが開くこと。
   閉=ガバナウエイトが閉じること。
2・117図 回転速度の変化と調速機の作動
[2] 燃料ポンプ付調速機(R.S.V.ガバナ)  集合形燃料噴射ポンプの場合は、2・98図に示すようにポンプの端に付属してポンプと一体で調速機を設けている。原理的には機械式ガバナと同じであるが、燃料噴射量の制限装置、始動時の燃料増量装置およびエンジンのトルク特性を改善するためのトルクスプリング等がコンパクトに組込まれている。
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2・118図 燃料ポンプ付調速機
(2) 点検と整備  ガバナバネの損傷、へたりなどを点検する。ガバナウエイトのピン、ブッシュ、ローラ摺動筒、スラストベアリング、シフタ、ガイドブッシュなどの摩耗やベアリングの損耗程度を点検する。特に大きなガバナウエイトの場合はピンの摩耗が激しいので、注意する。常用回転数で良く使用されるものはその付近での当りが強く局部的な摩耗を生じ不同回転の原因となることがあるので十分点検し、摩耗の激しいものは交換する。
(3) R.S.V.ガバナのアイドリング調整
 ミニマムアジャストネジおよびアイドリング(サブ)スプリングの封印を解除して次の順に調整する。
a 機関を十分暖機し、清水温度を70℃以上にする。
b リモコンケーブルを外し、コントロールレバーをフリーの状態にする。
c アイドリング(サブ)スプリングをフリーの状態にする。
d ミニマムアジャストネジで機関回転数を550〜650min−1(550〜650rpm)に調整する。
e アイドリング(サブ)スプリングを締め込み、50min−1(50rpm)程度回転数を上げる。
f ミニマムアジャストネジを弛めエンジンストップの生じない回転数でセットする。↓ ハンチングを起す時はアイドリング(サブ)スプリングを締め込み、回転上昇分をミニマムアジャストネジで下げ、ハンチングを起す手前で止めセットする。
g 最後にアイドリング状態でクラッチ切換操作をし、エンジンがストップしないことを確認すると共に、約1,000min−1(1,000rpm)で航走中、調速レバーを低速にし、急速に後進へ切換えた時エンジンがストップしないことを確認する。








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