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添付資料4 訪問先別調査結果
訪問先別調査結果
S造船(修繕専業)
 
1. 組織
・現場組織は造船部と造機部。
 
2. 職種別技能者数
[1] 造船部:52人、造機部:40人
[2] スタッフの陣容
・ 船体 部長含んで11名。
・ 造機 9名、パイプ担当3名、電気担当3名。
・ 営業担当は6名。
[3] 業務分掌
・ 修繕は機械が主、船殻の仕事は、改造、海難以外ほとんどない。
・ 塗装とクレーン、船渠等のサービス的な業務は造船部に含む。
・ クレーン、倉庫、機械工作などのサポート業務は本工主体。
・ 基幹要員として新入社員を新卒で採用しているが、現場の直接作業員は機関、甲板の仕上げ、管銅工を除き協力業者主体。
・ 造船部には常駐協力工を抱えているが、造機部に業者の常駐はなく、100%スポット手配。
・ 常駐協力工はそれぞれの班に所属、これ以外は掃除、塗装、足場、産業廃棄物担当は業者だけ。
・ 本工は造船部、造機部の応援やり取りはあるが、協力工は部をまたがるやりとりは少ない。
[4] 協力会社
・ 常駐業者数は約20社、規模は3人から15名。
・ 現在常駐協力工人数は約100名(男87名、女13名)で、5年以上構内にいる人が主体
・ 単価は職種、業者ごとに一律単価。
 
3. 職種別作業内容
 専門職方式ではなく、多能工化を図り、さらに足場職でも暇な時にはドックの掃除もやらせる。専門職をべースに玉掛、ガス切断などを兼ね合わせる。複合職化を推進。
[1] 職種
・ 運搬職:機関、プロペラなどのばらし運搬。
・ 運搬職 5名(3+2船具から移籍)と重量トビ4名。
・ マーキン:ラインおろし、型作成、板マーキングを含む現図。
・ 甲板仕上げ:ウインチ、ウインドラスなどの甲板機械と舵。
・ 第1工作:主機、カーゴポンプの機関仕上げ 2業者。
・ 第2工作:主機以外(軸系含む)。
・ 撓鉄:区分上「マーキン」になるが、実際には改造、海難は少ないので、外注。
 調査時点の例では、いわゆる現図おろしを本工がやり、鋼板マーキングは、別の業者、撓鉄(3人)も別業者。
・ 銅工:溶接を除き、管に関する一切の作業(ベンダ、鋸の操作、現場での管型とり、取り付け)。
・ 倉庫作業(資材保管、入出庫作業):総務部所属で技能職から外れている。
・ ブロック反転:実際に作業していたのは鉄工職+運搬。
・ ブロックの解体:切り取った海難工事のブロックは解体業者が構内でバラシ作業、積み出し作業をやる。
・ ガット:産廃の収集。産廃関係専任の2人が船具から運搬に移動。
・ 機械加工:機械工場に旋盤師を専門職として2名配置。
 
4. 標準作業書
・ 特に用意していない。
・ 造船技能に関するテキスト編纂は役に立つとの意見。
 
5. 雇い入れ基準
・ 修繕船工事ではスポット工を利用する制度は非常に便利。
・ 必要に応じて、他社で働いている人を引っ張るのでお願いべースになる。
・ 造船部は常駐業者主体に声をかける。造機部はlOO%外部からその都度手配する。
・ 採用時に資格を特に問うてはいない。注意するのは玉掛資格くらい。経験年数も業者まかせ。本社側として問う事はない。
・ こちらから要求はしていないが、フラッシング業者から、個人別の職歴書をfaxで通知してくることはあった。どこかの大手向けの書式をそのまま使っているらしい。
・ 雇い入れに際して、他業種から技能者がくることは全くない。造船から他業種にいくことはあるようだが・・・。
・ 大手の本社工は、互いの融通を上がきめても、結局は単価が高くて実現したことはない。
・ 本工の定着率は、修繕の方がややいいのではないか。
・ 以前は担当者以外は全部下請けだったが、班長、作業長は社内で固めたいと思っている。班長は未だ不足しているので、新入社員が育って来たら充当したい。
・ 作業長は大手の退職者を中途採用したので間に合っている。
 
6. 技能レベル判定基準と考課基準
(1) 本工の採用は新卒なので、技能レベルを云々することはない。
(2) 平常の査定に関しては
[1] 現業技能査定:A,B,C,D,Eの5段階で明確に分けていて、工務部長が一手に査定する。
[2] 査定基準は労務士に依頼して作成したもので、年功序列はとっていない。
・ 班長、作業長に手当ては少しつくが、査定結果として降格もある。
・ 技能職人事考課
・ 下記各項目で5段階評価(きわめて優れている、優れている、普通、やや劣る、大変劣っている)。
a. 成績考課:仕事の質、量の計7項目(全体の19%)。
b. 情意考課:規律性、責任感、協調性、積極性、安全性の計22項目(全体の59%)。
c. 能力考課:知識・技能、理解・判断力、表現力、創意工夫、指導育成の計8項目(全体の22%)。
(3) 本工の人事考課表のスポットヘの拡大
 そのデータを蓄積すれば、スポット採用のときにかなり役立つのではないかという問いかけに対し、
・ やらせた仕事範囲のことしか査定できないので、個人別の人格的な評価をする本工の査定とは本質的に異なる。協力工の査定(ランクつけ)を文字だけで表すのは無理。
・ したがって、スポット工個人別の評価はせずに、業者としてのグループ実績評価により業者をA,B,Cなどとランクつけて、スポット工を依頼するときに声をかける順番を決めている。
 
7. スポット工採用有無と職種
・ 遠隔地からスポット工を呼ぶ場合、アゴアシを持つこともある。宿は船員寮もかねて、個室用の宿舎を用意する事も考える。
・ 現状では、人集めに困ることはないので、「ネット上で人集め」という話にはあまり必要性を感じない。
・ 橋ができて、愛媛が資材調達の範囲に入って有利になったが、人のやり取りは通行料が高いせいかそれほど圏内に入ったという意識はない。
 
8. 技能維持・向上と教育訓練
(1) 新入社員教育のための技術センタ
[1] 経緯
・ IMEXの社長と技能伝承、後継者育成について議論したのが始まりで、市の補助(5百万円)をうけて、新入社員向けの初期教育を行う因島造船技術センタを作った。日立の教育訓練施設を利用して、技術センタを開設。講師はIMEXの17人。当初日当5000円。
・ 3年過ぎたら、県も助成に乗り出して職業訓練認定として、講師の給料に補助が出るようになった。市は学校にしようという申し入れはある。
・ 実際に生産に携わっていたIMEXの講師陣は迫力が違う。新入社員に良い影響を与えてくれた。
・ 費用は参加企業が本人の給料と一人あたり月20,000円の経費を負担した。
・ 受講生が下請けに引き抜かれることがあっても、地域の技術レベル向上に寄与できればいいとの考えでスタートしている。競合する会社が集積していることは、総合力にとって重要であるという考え。
[2] 研修内容、効果
・ センタでは3ケ月で7種の資格取得をめざす。
・ 平成13年4月は43人受講した。
・ 生活習慣指導が大事と考えている。
・ 対象受講生は近辺各造船所の新入社員。技能よりも生活習慣をつけるのが大変だった。
・ 毎日の反省文を書かせることを義務付け、白紙提出者に対しては個別指導をするなどして、最後には全員が書けるようになった。歩き方までちがってきて、3ヶ月の研修を終わって帰ってきた段階では現場でも自信ありげに振舞っている。躾に大きな効果があった。
・ 個別の造船所ではここまでの教育は出来ないと痛感している。
(2) 技能のレベルアップの教育について
・ これからの時代をにらんだ高度技術(例、油圧、制御など)をプラスできれば幸いと考えているが、各造船所の必要性を一致させるのはむつかしいだろう。
・ 修繕船を専門にしているので、機関仕上げの技術レベルを上げて、顧客の満足を得ることを重点に考えてきた。
・ 修繕船のSS(サービス・ステーション制度)資格をとるために
→ (社)日本舶用機関整備協会編纂の「1級機関整備士指導書(300ぺージカラー。他に2級、3級もあり)で勉強させている。
→ この資格者がいるとJGの検査官の立会いがなくても工事が進められ、書類で記録を残すことにより許可される。
→ 休日とか夜間の検査に有利。
→ 1級合格率は50%くらいでむつかしい。
・ 塗装については、日本ペイント研修所 初級、中級 1日、2日コースを利用する事も考えている。
・ 造船部のスタッフには小船工編纂のテキストで通信教育を受けさせている。
→ 小船工「通信教育造船科講座 艤装」(H12年版。宝田委員長521ぺ一ジ)
→ 同「船体工作法(124頁)」「船舶関係法規(111頁)」「船舶計算(217頁)」
・ 新入社員教育のあとの現場での教育について造機部作業長との面談。
→ 素人工が1人前になる期間:約3年(ただし、やる気のある人の場合)
→ 研修するとした時の内容:
* 道具の名称と扱い方 (最低でも2週間必要)
* 安全衛生
* 図面の見方
* (荷役)装置の構造・原理
* 開放、復旧手順
* ボーシンにつけてOJT
 
9. 外国人労働者に対する考え
・ 外国人労働者採用は修繕船ではお客の信頼感が大事なので、作業は日本人だけとしているが、今後採用する可能性はある。
 
10. 請負条件等に対する考え
・ 協力業者との請負形態:職種、業者で一律単価。個々の人間によって単価を変えることはない。
・ 工器具は会社もちマスク等身に付けるものは業者もち。フィルタは会社もち。
・ 混在作業が多いので時数請負が主体、造機は馬力単価、ボア単価で見積もり請負がある。
・ 見積請負は、検査合格するまでを保証させる。
・ 時数は日報で集計(スポットも含めて)。
以上








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