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これが岩の表面にすんでいて、遺体がどんどん蓄積すると石灰化して下にたまるわけです。それで、このような枕状の形ができます。

実は、これと同じような生物の化石が35億年ぐらい前から見つかっています。ちょうどそのころから、地球上では光合成が始まったと考えられています。それから35億年間、植物は延々と酸素をつくってきたわけです。

それでは、生物が上陸したのはいつごろだろうかというのが次の話題です。まず化石の証拠からは、最初に陸に上がったのは植物だろうと考えられています。もちろん、バクテリアや地衣類のようなものが、植物に先立って上がってきた可能性はありますが、証拠はありません。

陸に植物が上がってきた経緯ですが、実は、植物は海からではなくて、淡水、真水の縁から上がってきたと考えられています。最初に陸に上がってきた植物は「クックソニア」(図5)と呼ばれ、今から4億2000万年前、地質年代でいうとシルル紀という時代の化石です。世界各地で見つかっていますが、植物は、このクックソニアが見つかるシルル紀、あるいはその少し前のオルドビス紀という時代、大体4億5000万年から4億7000万年前、あるいは5億年前ぐらいに上陸を始めたと考えられています。

シルル紀の後、デボン紀という時代になりますが、デボン紀には、やはり同じようなタイプの植物がまだありました。ただ、種類はどんどん増えてきて、体制は簡単ですが、いろいろなものがあらわれてきました。要するに、多様化が起きたのがデボン紀という時代です。そのころの植物、図6は「リニア」というイギリスで見つかっている植物の復元図ですが、高さが20センチから30センチぐらいの小さなもので、クックソニアと同じように、葉も根もないという非常に単純な体制の植物です。

リニアは軸のような体を持っていて、断面を見ると、直径数ミリの非常に小さなものですが、軸の真ん中に黒いところがあります。これが「維管束」と呼ばれる水と養分の通り道です。この通道組織ができたことで、植物は大型化が可能になったわけです。この管を縦に切ってみると、中央にある細い管が維管束で、細長い細胞がありますが、壁に丸い穴があります。この丸い穴を通して、水が細胞の管と管の間を通っていくわけです。これは物を通す管というだけではなく、植物を支えることもできるので、大型の植物がどんどん出てくることになります。

 

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図4:オーストラリアに現存するストロマトライト(撮影:鈴木洋平)

 

生物を育む土壌

さて、植物が上陸することで土壌がつくられてきたわけですが、土壌というのは、風化した岩石、砂や土に生物の遺体、有機物が混ざったものですから、もちろん生物がいなければ、士壌はできないわけです。

土の中を調べますと、いろいろな生き物がいます。学校で、土の中にどういう生き物がいるかを見るのも非常に面白いと思います。土をとってきて、上から強い電球の光を当てておくだけで、下に動物が落ちてきます。下にじょうごのようなものを置いて一晩そのままにしておけば、その中を伝って動物が落ちてきますから、それを下で水で受けます。あるいは、ちょっとアルコールを入れておいて、たまったものを顕微鏡か虫眼鏡で見ると、ダニやら何やら非常にたくさんいろいろなものが見つかります。それだけで土の中が生きているんだということがわかりますし、生き物自体とても変わったものが出てきます。ダニというと嫌がられる方がいらっしゃるかもしれませんが、人間に害を与えるダニはごく一部で、ダニ全体は本当に無害な、かえっていい生き物ですので、そういう変わった生き物たちを実際に目にするのもいいことだろうと思います。

 

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図5:外見が復元されている最古の陸上植物クックソニアCooksonia

 

 

 

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