日本財団 図書館


こういう生物を育む土壌ができることで、地球上の地上の生態系、食物連鎖、あるいは物質の流れというのがつくられるわけです。地上の変化はどのように進んできたかというと、原生代と呼ばれる時代、6億年よりも前の「先カンブリア紀」と呼ばれる時代には、陸はまったく裸の状態で、そこからは風化した岩石などが流れてくるだけです。海の中は、まだ非常に貧しくて、先ほどのラン藻類や原始的な藻類がいるだけです。動物も、単細胞の非常に原始的な動物がいるだけという時代でした。

それが6億年ぐらい前の先カンブリア紀の最後になると、少し海と陸の様子が変わってきます。陸は、まだこの時代には植物は上陸していませんので、ほとんど何もない状態ですが、水の中では、少し生物相が多様化して、大きな藻類とか多細胞の動物とかが少しずつ生まれてきました。オーストラリアから出てくる6億年前の化石では、柔らかい体を持った動物が見つかっています。この動物の特徴は、丸っこいものが多いことです(図7)。これは運動性が低いということです。それと柔らかい感じがします。これは体を守る必要がないということで、あまり食う食われる関係のない、動きの少ない時代だったと考えられています。

ところが、すぐ後の5億3000万年前ぐらいになると、「バージェス頁岩動物群」というカナダで見つかっている動物群、とげを持った動物とか、よく知られているアノマロカリスという肉食の大型動物が出てきます(次ページの図8)。体が縦に長いのは運動性があるということで、食う食われるの関係が非常に厳しくなると同時に、みんなが忙しく動かなければならない時代になってきたわけです。

 

012-1.jpg

図6:デボン紀のライニーチャートに含まれる植物のひとつ、リニア・ギンボニイRhynia gwynnevaughanii。左が植物体の横断面。矢印は中央の維管束を指す。右は維管束の縦断面。壁に穴の空いた仮道管がある。

 

012-2.jpg

図7:オーストラリア産原生代末期のエディアカラ動物群

 

進む生物の多様化

カンブリア紀の動物が出てくるころには、陸にはまだ生物がいないわけですが、この後、さらに海の中は多様化してきます。カンブリア紀にはいませんでしたが、私たちの祖先になる魚、つまり脊椎動物が多様化してくるのはデボン紀です。実はデボン紀は、陸に植物が上がってすぐの時代です。おそらく、海の中でいろいろな生物が多様化して、大型のものが出てくるためには海の中に栄養がなければならないので、それが陸から供給されることが始まったからだろうと考えられています。

先ほど、デボン紀のリニアという植物についてお話しましたが、リニアの化石と一緒にダニやトビムシ類が見つかります。これは植物が陸に上がったことで土壌ができ、そのような土壌動物が生まれてきたという証拠なわけです。

デボン紀の陸と海の関係を見ますと、陸の上に植物が進出したことで土壌が形成され、有機物と栄養塩類が海に流れ出すようになったことが重要です。海の中の生物というのは、もちろん海の中のプランクトンや藻類が、まず生産をするわけです。植物は炭素化合物でできていますが、植物が生産するときに炭素の体をつくるのは、光があればできます。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION