日本財団 図書館


講演2

「生と死を支えるホスピスケア」

柏木哲夫

大坂大学大学院人間科学科教授・淀川キリスト教病院名誉ホスピス長

 

司会:続きまして「生と死を支えるホスピスケア」と題しまして、大阪大学大学院人間科学科教授・淀川キリスト教病院名誉ホスピス長の柏木哲夫さんによる講演をお聞きいただきます。

柏木さんは、アメリカ精神医学の研鑚を積まれ、帰国後、淀川キリスト教病院精神神経科を開設、医長となられました。ホスピス長を務めながら、約10年間で2,000人近い末期がん入院患者を看取られました。そして死を教育しなければと、母校大阪大学の人間科学科教授に就任されました。1994年日米医学功労賞、1998年朝日社会福祉賞を受賞されていらっしゃいます。それでは柏木さん、よろしくお願いいたします。

 

柏木:ご紹介いただきました柏木でございます。私の非常に尊敬します日野原先生の後で少し話しづらいのですけれども、90歳になられようとしておられる日野原先生が非常にお元気で、いろんな分野で活躍しておられるお姿を見たときに、後輩である私自身は、もっともっと自分もがんばらなければいけないなというふうにいつも教えられております。ちょうど2年前にある学会の会場で日野原先生にお会いして、いろんな雑談の中で日野原先生が「柏木先生、おいくつになられましたか」というふうに尋ねられましたので、「ちょうど私、今年で還暦です」というふうに申し上げたら、「はぁー、お若いですね。これから何でもできますね」と。それは日野原先生であれば何でもおできになるのでしょうが、やはり還暦を2年前に経験しまして今62になりますけれども、これから本当に何でもできるかどうかというのはよくわかりませんが、今までずっとホスピスという場で仕事をしてまいりましたので、これからいつまで私も生きることができるかわかりませんが、そのホスピスの重要性というようなものを皆さまに知っていただく、そういうことに力を注いでいきたいというふうに思っております。

今日は「生と死を支えるホスピスケア」ということで、1時間足らずの短い時間ですけれども、私自身が患者さんやご家族に教えていただいたことを皆さんにお分かちしたいというふうに思っております。

ある医学の講演会に出席しましたときに、講師の先生が非常におもしろい出だしでお話をされました。ちょっとそれをご紹介したいと思うのですが、これは決して私の意見ではなくてこの先生の意見なのですけれども、世の中にだまされやすいものが三つあるそうです。これは先生のこ意見ですので、私の意見ではないということをまずお断りしたいと思うのですが、まず第一は女性の涙だそうです。私も今まで家内の涙に三度ほどだまされたことはあるんですが、やはり女性の涙というのは、特に男性にとっては注意しないといけないというふうにその先生が言われました。それから二番目は新聞の記事です。これは私も経験がありまして、オランダの安楽死について少しコメントを求められて、ある新聞の電話取材に応じましたが、次の朝見てみますと、私が言ったこととまるっきり逆のことが私のコメントとして出ているのですね。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION