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講演1

「いのちの旅―人はどこから来て、どう生き、どこに行くか―」

日野原重明

聖路加国際病院理事長

 

司会:ではセミナーを始めさせていただきたいと思います。「いのちの旅――人はどこから来て、どう生き、どこに行くか――」と題しまして聖路加国際病院理事長の日野原重明さんによる講演をお聞きいただきます。日野原さんは欧米のホスピスを視察後、死の臨床研究会を結成され、ターミナルケアつまり末期医療や介護の充実、そして医者に任せきりにしない「患者参加の医療」、老いてなお成長をする「新老人運動」を提唱されて、現代医療の改善に向けて尽力を続けていらっしゃいます。また、民間病院として初めて聖路加国際病院に人間ドックを開設し、全国への普及を進められました。成人病にかわる「生活習慣病」という新語の命名者としても有名です。また、ベストセラー絵本『葉っぱのフレディ』をミュージカルにするなど、多くの分野で活躍されていらっしゃいます。1999年には文化功労者に顕彰されておられます。それでは日野原さん、よろしくお願いいたします。

 

日野原:ご紹介ありがとうございました。本日の会は、日本財団が主催し、私が理事長を務めております笹川医学医療研究財団と(財)ライフ・プランニング・センターの両財団が共催で持つことができました。この会場には看護関係の方々が一番多いようでございますが、多くの市民の方や学生もみえておられます。

じつは私は、本日の会場であります競艇場を見たのは初めてでございます。この会場に入りきれない人は、海を見ながらこの講演がきけるというのはのどかな風景だと思って、「死を想う」という演題についても、少し爽やかに話したほうがいいのではないかと感じております。ただいまは津市の近藤市長からお言葉をいただきましたし、また市議会の中川議長もお見えいただきましたし、三重県看護協会の楠木会長と山口副会長もご参加くださいました。このような方々のご援助によって、多くの聴衆を迎えることができましたことを感謝しております。

 

平均寿命と平均余命

きょうは、すべての人に共通で最も大切なテーマであります「死」についてしばらくの間語ってみたいと思います。

先ほど笹川陽平理事長が私を90歳と紹介されましたが、もう6週間待っていただければ90歳になります。明治44年生まれですから、どこに行ってもこの頃は最高齢だということで、あらゆる会で乾杯をさせられたりいたします。

1週間前の新聞に、最新の日本人の平均寿命が発表されました。日本人の寿命は世界一長く、女性は84.6歳、男性は77.6歳です。男女には7歳の差があります。この平均寿命というのは、きょう生まれた人がその齢まで生きるであろうと予想をした統計学的な計算値であります。男性の平均寿命が77.6歳と言われると、75歳の人はあと2年しか生きられないのかと思うかもしれません。

 

 

 

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