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『海のそこの電話局』はまさしく「童話」で着想がよく、コミカルな筆致でおもしろく読ませるが、エピソードを盛り込みすぎ、まとまりの点で推しきれなかった。『ぼくらの海』はドラマ性こそ弱いものの、漁村の子どもの生活感が生き生きと描かれている佳編。

『満月の浜』は筆力ゆたかで少年像に魅力はあるのだが、浜にあらわれた男をとおして、作者が何を伝えようとしたかが不鮮明だった。

来年は低学年の子どもたちがストーリーも文章も楽しめる「童話」が、もっと最終候補に残ってほしく思う。

 

遠藤寛子委員

『白いサメ』には狂暴なサメとの戦いと共に帆走の魅力が描かれています。作者は沖縄・首里に住み、ヨット歴も長い由。ふと沖縄海洋博の時、星をたよりに人工動力なしで太平洋を越えて来たミクロネシアの若者達を思いだしました。今度は帆船を中心にした物語も書いて下さい。なおこの作品の対象年齢の問題が討議されましたが(同様の間題は一昨年も出ました)、結局作品の迫力と子ども達の読書力への期待で、めでたく大賞に輝きました。

正統的な幼年童話というなら『海のそこの電話局』でしょうが、内容が盛り沢山すぎて残念。『ぼくらの海』は年齢を感じさせぬみずみずしい文章で、やや古風ながら素朴な内海の島の子たちを描いています。

 

 

 

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