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童話部門選評

 

十川信介委員

今年も定番とも言うべき海の動物・魚類と子供との交流を題材にした類型的作品が多かった。こういう題材を否定するわけではないが、それがややもすれば動物(魚)のかわいらしさに頼ったり、お説教に陥ったりする傾向を生む点には、注意が必要だと思う。

そのなかで『白いサメ』は、童話としては高学年向きだが、サメと戦う親子の情を描き、構成・文章ともに安定していた。『満月の浜』は、二人の少年と都会帰りの娘の姿はいきいきとしているが、肝腎の『ウラタのオジン』の印象が今一つ。『海のそこの電話局』は、内容が盛りだくさんすぎて着想のおもしろさを消している。事件を整理した方がよい。『ぼくらの海』は素直さを評価した。

 

木暮正夫委員

「童話」というより、「児童小説」というべき高学年向きの作品ながら、『白いサメ』の題材のよさと実感ゆたかな手がたい文章力は、他の候補作を圧していた。沖縄の海をよく知っている作者ならではの作品である。

 

 

 

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