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さくらともこ委員

大賞の『白いサメ』は、サメと人間の戦いが、沖縄の海を舞台に、生き生きとした文章で描かれた密度の濃い力作。ただし「童話」にしては、対象年齢が高く、子どもには難解と思われる表現が多かった。惜しくも佳作になった『海のそこの電話局』は、ユーモアあふれるユニークな視点で海をとらえた「童話」と、高く評価されたが、少々、饒舌な場面があり、スピード感を削いでしまった点が悔やまれる。少年の会話に臨場感のある『満月の浜』は、前半の迫力が次第に薄れて終結するのが難点だが、少年の描写は秀逸。

『ぼくらの海』は、筆者の七十七歳と言う年齢を、まったく感じさせない、素朴な文章が胸を打つ、さわやかな作品で、青く輝く海を実感させる物語。ストーリー展開に工夫がほしかった。次回作を期待したい。

 

 

 

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