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「よろしければ皆さんもご一緒に一杯、いかがですか?」

タキチロが訳すまでもなく、俺は男の表情から彼の語りかけた言葉を解した。

ハプニングに驚いた警護のサムライたちは顔色を変えて駆け寄ると、怖い表情で男を拒絶しようとしたが、男の背後から進み出た二人の女に(まあ、よかとこれ、今日は年に一度のおくんちですけん……)と笑顔で袖をひかれると虚勢は見る間に崩れた。

「拙者たちも、ちょうど一服しようと思っていたところじゃ。のう……」

年かさのサムライのひと言で、一同はたちどころに方針を変更した。俺とラスは彼らに肩を押されるように茶店ののれんをくぐった。

 

 

茶店は祭のために臨時に建てられたものらしく天井が低い安普請の家だが、簡素で清潔だった。男は二部屋を借り切り、仕切りの襖を開放させた。俺とラスは屏風を背に並んで座らされ、サムライたちは刀を脇にして俺たちの両側に座を占めた。男と二人の女は俺たちと向きあう、いわゆる下座に並んで座った。

茶店といっても、あの渋い日本茶を飲ませる店ではない。一同が座を占めたタイミングをみて、たすき掛けをした三人の若い女が、次々に酒と肴の膳を運び込んできた。

 

 

 

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