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報告2

福祉の仕事をする人びとのケア

杉浦光子 SUGIURA MITSUKO

 

自宅を開放しての「わらべの家」の活動をはじめ、福祉活動と呼ばれることを肩肘張らず、好きにやってきた私。思えば遠くへ来たもんだ…と、ようやく立ちどまって振り返っている。そしていま私の生活をしめるのがホームヘルパーとしてお年寄りや障害のある人のもとへ顔を出すこと。ヘルパーになった動機は、地元で長年続けている「老いを考える会」のお年寄りから、「あんたみたいな人がヘルパーに来てくれるなら利用したいけど」と、よく言われていたからかもしれないが、実際は低額で受けられる2級研修の抽選にとおったから。いつも私のやることは、成り行きまかせ、風まかせの感がある。

私のヘルパー事始めは、81歳のAさん(女性)の家事援助(介護保険前の自費の方)。2時間でやってほしい業務をメモ帳に箇条書きにして待っている。無駄な動きをしないように私の仕事ぶりを見張っている。2階を掃除するときは目覚まし時計を持たされ、時間を見計らってやれと言う。時折、「順調に進んでいますか?」と、階下から怒鳴る。最初は驚いたが、足が不自由で階段の上り下りが困難なこと、息子さんやお嫁さんとの確執、兄弟との折り合いの悪さ…あれこれ聞いていくうちに、Aさんの孤独感、さびしさが伝わってきて、どんな厳しい業務も笑ってこなすことができた。どこの事業所もそうかもしれないが、初心者の私を数年の経験者でとおしていた。しかし、Aさんは見抜いていたのかもしれない。

「あんたは、時々ヘマするし、まだまだ鍛えないといけない。でも、心根のいい人だ。仕事ができるだけじゃヘルパーはダメだ。あんたは、どこへ行っても喜ばれるよ。しっかりやりなさい」と、励ましてくれた。

 

 

 

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