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コミュニティをつくっていく

私は障害のある娘をとおして、多くの人との深い関わりを得ることができました。今の社会は全部自分のところだけで解決できてしまいますが、何か困り事があるときは、人と結びつかざるをえません。弱さを抱えることは、強い結びつきができることではないでしょうか。困っているから発信する、そこからアイデアが生まれてくるのです。

人間は生まれながらにして、支え合うようにできています。それなのに、今は他人に頼る必要がないから、孤独を感じてしまうのではないでしょうか。だからこそ、支えを必要としている人がコミュニティを組織しなおすことができるはずです。

障害のある人たちの施設も、障害のある人をひき受けるだけでなく、情報を発信しながら、地域のなかで何が担えるのかを考える必要があります。多くの人と関わることが、一人の障害のある人の人生を豊かにするならば、親が抱え込んでいたことを、施設が同じように抱え込んではいけないのです。

 

この先の豊かさにつながる

障害のある子どもの親たちが中心になって、福祉制度や福祉サービスを充実させるための運動をしてきました。運動をするなかで、辛いこともたくさんありましたが、そんなときは、今の自分の辛さから離れ、3年先、5年先の豊かさにつながることを考えて乗りこえてきました。しかし、それができるためには、親が義務感から解放される必要があります。

障害のある人が成人したとき、親離れが重要な課題だといわれます。それは親子の問題ではありますが、そこまで親に押しつけてきたのは誰でしょうか。たくさんの経験や実感を積みかさね、山のように涙も流しました。その泣いた分だけは自分でとりかえしていきたいと思っています。福祉はまだまだ充分ではありません。つくらなければいけないものがたくさんあります。私たちの運動が、30年先、50年先の日本を豊かにしていると思って続けていきます。

 

 

 

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