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2) 「ネットワークづくり」と「プログラム開発」

この研究の1年目の成果としては、現場への丁寧なヒアリングとアンケート調査を実施することで、ニーズが明らかになったことともに、調査によってケアする人自身が問題に気づき、声をあげるきっかけとなったことが挙げられる。また、研究集会を開催することで「ケアする人のケア」の必要性を広く呼びかけ、社会意識を高めることができた。

このような調査や研究集会をもとに議論をすすめてきた結果、「ケアする人のケア」サポートシステムに期待されるさまざまな役割が浮き彫りになってきたが、その方向性は次の2点にまとめられる。

まず一つ目は、私たちの研究は、研究者の協力を得ながら現場のケアする人が主体となって、情報を共有し議論するための手助けをするものであり、今後も現場のネットワークをすすめながら、「ケアする人のケア」ができる社会づくり、システムづくりをめざしたいということである。そのために、情報を集約したり発信したりする拠点として「ケア・サポートセンター」の設立をめざしていきたいと考えている。

もう一つは、具体的なプログラムの開発である。このプログラムとは、ケアする人が一時的に他者によって癒されたり、その時々に抱える問題に正解を与えて解決していくようなプログラムではない。ケアする人が自分の置かれている状況や自分自身の心や身体の状態にまず気づき、気づくことで、癒されたり、次にすすむための元気を恢復したり、あるいは自分で課題を見つけて取り組んでいくことができるためのプログラムである。

私たちは、今年度の調査結果をもとに、「コーチング」という手法をもとに次年度のプログラム開発をすすめる予定である。「コーチング」は近年経営の分野で注目されはじめている手法で、目標に向かう本人の内発的な力を発揮するために、他者が働きかける技術である。従来の「トレーニング」や「ティーチング」では、知識や技能を習得することに重点がおかれたのに対して、「コーチング」は、本人の気づきや成長を促し、本人の主体性と学習性を高めることが重視されることから、「ケア」においても有効な手法であると考えられる。

今後は、これらの研究成果をもとに、ケアする人が主体的となってネットワークをつくっていくことを促進しながら、ケアする人のケアができるためのプログラム開発をすすめ、サポートシステムの構築をめざしていきたい。

 

 

 

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