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3) 講演「医療とヘルスケア」

ジャニス・パルマー (元デューク大学メディカルセンター・アートディレクター)

米国のデューク大学のメディカルセンターでは、患者が生活者としていかに豊かに人生を過ごすかという視点で、アートを取り入れたヘルスケアの実践を行っている。その医療の現場では、ヘルスケアの対象は患者だけではなく、医療に関わるすべての人に向けられる。デューク大学での具体的な実践を紹介しながら、ヘルスケアのあり方を示した。

特に、ケアする人が本人の健康、心の健全さを維持増長し、個人的にも職業的にも健やかに成長するためには、自己の内にある創造性を表現する場を探し求め、開花・発展させられるように関係者には促し導く必要性があるという指摘は重要な点である。(※講演録は別紙資料)

 

4) 分科会1

「恢復する家族−専門家としての家族・同行者としての家族」と題した分科会を行い、参加者とともに家族のケアについて考えた。

家族は介護を必要とする人のことを誰よりも知っている専門家であると同時に、最後まで共に寄り添って生きていく同行者である。そのことを引き受けていこうとするとき、ケアの哲学とでも言うべき深い信念や、生活のためのあらゆる知恵や工夫が生まれ、介護の必要な親や兄弟、あるいは子どもとともに、人生を深く生きていくことになる。

家族が家族として寄り添いながら豊かになっていくためには、介護の関係が開かれた関係になることが重要で、介護が家族の中だけ、あるいは介護を担う者独りとの関係だけに閉じ込められていては、苦悩を生むことになってしまう。

分科会では、家族と施設、家族と地域を結ぶ中間組織、すなわち、社会福祉施設やサービス関係機関、あるいはNPOなどのボランティア組織が重要な役割を果たすということが示された。

また、参加者一人ひとりの口からは、介護を担うことの悩みや苦悩が語られたが、自らの苦悩を語ることはケアの一つの形でもあり、分科会そのものが「家族のケア」の実践の一つの試みでもあった。

 

5) 分科会2

「生命を慈しむ仕事福祉に携わる人びとのケア」と題した分科会を行い、具体的な現場の事例をもとに議論が展開された。

ここで話し合われたことの一つは、仕事としてケアをする自分を見ている客観的な自分がいることや、誤りを犯す存在であるということを意識するもう一人の自分がいることで、自分をケアしていけるのではないかという点であった。そういう自分をもつことで、ケアをする相手との関係において、相手と同じ目線にたち、相手の言葉や発するものから学ぶことができるということである。

福祉の仕事に就く人は専門性をもっていて然るべき、自分で自分をケアするべきであるという意見もあった。私たちは「福祉職にもケアが必要」というのではなく、ただの労働力として扱われることなく、ケアする人が支持され癒され、自分を支えていく力を身につけていくこと、またそのための環境を自らの手で作りだしていくことが必要なのではないだろうかということが、この分科会で示された視点であった。

 

 

 

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