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図2 船上で整備中のエアガン

 

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図3 船尾に曳航したエアガンの発破の様子

 

筆者は近年室戸半島から足摺岬にかけての沖合い150kmに横たわる南海トラフで集中的な海底の探査を行なってきた。まず反射式人工地震波探査について説明しよう。船上のエアコンプレッサーから高圧の空気をエアガンというシリンダー様のものに送り込み、ある時間ごとに電気信号を発信してバルブを動かし、空気を水中に放出し、大きな音を出す。80ヘルツから100ヘルツぐらいの周波数の大きな音、すなわち地震波を発信する(図2、3)。地震波は水中を伝わっていくが、海底の表面で反射してくるだけでなく、海底面からさらに深く地層の中に入っていく。地震波は地層中で速度、密度の境界面から反射され、その反射波を曳航したケーブルの中の水中マイクロホンで記録する。多数のマイクロホンで反射波を記録し信号を重ね合わせると、ノイズが消えて本当の信号だけを抽出することができる。反射面からもどった波の往復時間を記録し、これらを並べると海底下の反射面の連続性が見えてくる。

東京大学海洋研究所では研究船白鳳丸を用いてこのような探査を行っている。得られた地質断面記録を反射式人工地震波探査記録と呼ぶ。図4は南海トラフの記録である。

エアガンの発信間隙が約50mなので波を縦に並べると縦軸は時間、横軸は距離に相当する。最初に波が返ってきた所は海底面を表す。海底面は往復時間が6秒であるため、海底面に到達するまでは3秒である。水中の音速が1,500mなので1,500×3で4,500mとなる。従ってこれは海底が4,500mの水深ということを示している。フィリピン海プレートの上に約1kmの堆積物があり、大きく見ると上のよく成層した地層と下のそうでない地層がある。南海トラフの地層を日本列島の陸側の方に追ってみよう。地層面がずれているのが解る。地層のずれ間に斜めに走る反射面があることは断層の存在を示している。断層面があって断層面の上盤の方が上に動いたのを逆断層という。この地層は陸側に追跡してゆくと褶曲と断層で断ち切られ変形している。

これこそ、南海トラフから室戸岬の方にフィリピン海プレートが年間3cm〜4cmぐらいの速さで移動している結果にほかならない。上に降り積った堆積物がベルトコンベアーで運ばれるように日本列島にどんどん押し寄せて来る。

 

 

 

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