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近年の交通運輸インフラ整備予算全体のうち、70%をしめる道路整備には、今後とも多大な財源が必要である。優先度をしっかり吟味したプロジェクト選定が不可欠であるとともに、現状において、90%をODAに頼っていると言われる交通インフラ整備において今後自己財源を確保することも喫緊の課題である。自動車燃料税の創設など、道路整備自主財源設立の実現が待たれる。

 

4] 空港ターミナルエリアの合理的整備

定期便の飛んでいる空港の数は18空港、そのうち国際空港は3空港ある。年間の航空旅客数は、国内線が約300万人、国際線が約100万人の規模である。

この国の空港においても他国の例に違わず、国軍との共用飛行場が多い。これはそもそもの空港の成り立ちからして当然のことであるものの、弊害が大きい。主要な空港のターミナルエリアの最も使い勝手の良い部分は軍の施設が占有しており、民間航空の用に供する事の出来る部分はごく限られている。このことがそれぞれの空港の将来の寿命を縮めてしまっていると危倶される。将来の需要増に対し、滑走路などの基本施設はまだ充分に容量に余裕があるのに、ターミナル容量が不足してしまうという不合理なことが起こりつつある。

ホーチミン、ダナンをはじめとして、将来の空港容量の不足が心配される空港において、ターミナルエリアの面積不足という大きな問題を解決することが重要である。軍の占有を排除するか、新空港に大きな投資をするのかについて政府として冷静な判断が必要な局面を迎えることとなる。

 

5] 都市公共交通の展開

現状において、ハノイ並びにホーチミン両市においてはすでに公共交通の機能不全により都市交通が危機的様相を呈しつつある。いずれの都市においてもモーターバイクが、市民の主要な足としての役割を果たす一方、その氾濫が既に都市内での移動を困難にしてしまっている。公共交通が貧弱な故にバイクが増えるのか、バイクが多すぎてバスが走れないのか。おそらくは、両方の現象で悪循環に陥っているのだろう。

いずれこの規模の都市においては都市鉄道の整備が必要なことは明らかであるが、現在のこの国の財政規模からして、今俄に都市鉄道敷設という大規模な投資をすることは不可能と考えられる。今後10年から15年と見積もられる都市鉄道整備までの準備期間において、手を拱いていれば、状況は悪化することとなろう。この間にやるべき事は、コストをかけず有効な手だてを打つことであり、それは都市バスの効率的運行システムに他ならない。

今望まれるのは、早急に両都市の都市鉄道計画を含む都市交通マスタープランを確立した上で、鉄道システムが供用されるまでの間に必要な公共交通の活用策(都市バスの機能強化)を図ることである。

 

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